相続の相談をしてはならない「シャットアウト型税理士」とは

今回は、専門知識のない税理士に相続問題を相談する危険性について見ていきます。※家庭裁判所に申し立てられる遺産分割事件の75%以上は遺産額5000万円以下の案件。相続問題は、お金が少ないほうが深刻化しやすいのです。その原因として、法定相続分を「機械的に・平等に分ける」従来の相続の考え方があります。本連載では、機械的な平等を排し、公平感があるように分ける「不平等相続」を提案するとともに、相続人の誰もが納得する相続のあり方を考察します。

求められるのは、公正中立な立場からのアドバイス

先日こんな光景を目にしました。私がある無料の『相続対策セミナー+相談会』のイベントに参加したときのことです。著名人のセミナーと協賛会社の相談ブースが多数あり、相続対策に興味がある人たちが参加するイベントです。私はある方の講演が聞きたくて参加しました。

 

私が受付をしていると、隣の人がこんな質問をしていました。「私はこれからアパート建築をして相続税対策を兼ねて賃貸経営をしたいと考えているんですが、誰に相談したら良いでしょうか?」と。

 

その受付の人が「あちらにアパート建築をするハウスメーカーの相談ブースがあるので、そちらで相談されたらどうでしょう」と誘導していました。

 

でもその方はこう返したのです。「それだと、アパート建築をすることを前提とした話になりませんか? 私はまず本当にアパート建築をしたほうが良いかどうかを知りたいのです。そして検討の結果、アパート建築が有効であったときに、どこの会社に頼むべきかを私の身になって一緒に考えてくれる方のいる相談ブースはないのでしょうか?」と。

 

受付の人は少し考えた後、「そのような会社は無いですね!」この相談者は不満そうな顔をしてその場を後にしていきました。

 

つまり、このイベントは協賛している会社からの参加費用(協賛金)で運営されているため、無料で開催されているのです。イベント主催者側は、各社協賛会社の商品やサービスの販売協力(場を提供)をすることで成り立っているわけです。

 

この方のように、自分の身になって何が一番良いかを公正中立な立場で判断してくれる人(会社)を望んでいる人が、最近増えてきたと私は感じています。

 

お客様たちも気づき始めてきているのでしょう。

 

私の会社で代表を務める秋山哲男が執筆した『ブラック相続対策』(幻冬舎メディアコンサルティング)に共感し、何件も問い合わせがあったことがそれを物語っています。

税理士は税金のプロだが、相続対策のプロではない

このようなイベントにおいて相続税の無料相談を請け負っている税理士にも注意が必要です。主催者や協賛会社と協力して仕事をしているタイアップ型税理士は、その会社の販売している商品の、メリットに対して大いに同調し、税理士として税務上の課題については問題ない点を強調します。しかし、主催者や協賛会社の提案の詳細まで保証をするわけではありません。なぜなら彼らは税理士(=税金のプロ)であって、相続対策のプロ、ましてや不動産やアパート経営のプロではないからです。

 

そんなことを言うと、税理士は相続対策のプロではないのか? と思われる方も多いと思いますが、税理士であっても相続税に詳しい税理士は意外と少ないのです。

 

2015年に税制改正がされるまでは年間の相続税の申告者は約5万人程度でした。それに対して税理士の人数は約7万5000人。ということは一人1件も申告していないということになります。そして、相続税を専門としている複数の税理士事務所が、年間数百件の申告をしている事実を見ると、相続税の申告をしていない税理士がたくさんいるということがわかります。

 

税制改正により申告者数が増加したといえども、この構図は大きく変わってはいません。相続税の申告を経験していない税理士を、相続のプロと呼べるでしょうか? 医師と違い税理士は専門分野で看板を掲げていません。ほとんどの税理士が、法人税の申告と個人の所得税の申告を中心に業務を行っているにもかかわらず、全部の税目に詳しいという看板を掲げて事業をしている事務所が多いように感じます。皆さん、歯が痛くて眼科に行きませんよね? でも税務の世界ではこのようなことが起きているのです。

 

そしてさらに困るのが、会社の顧問税理士に多い、シャットアウト型税理士です。会社を経営されているお客様は、身近にいる顧問税理士に相続税の相談をすることが多いのですが、前述したように相続の経験を積んだ専門の税理士は非常に少ないのが現状です。

 

このため、多くの顧問税理士は、自分の専門外について「これは詳しくないので、詳しい税理士に聞いてください」とか「詳しい専門家を紹介します」などが言えず、できるフリをして、お客様から相談された相続対策の提案を、自分の無知を知られたくないという迷惑なプライドのためにシャットアウトしてしまうのです。

 

専門外なので自信がありませんから当然的確なアドバイスはできません。いい加減なアドバイスをして後でクレームになったり、最悪の場合、訴訟を起こされたりしたら大変です。もちろん、そのときの責任は取れません。そこでシャットアウト型の税理士はどうすると思いますか?

 

「今は時期ではないですね」とか「もう少し、検討が必要です」「リスクについて再度よく考えたほうが良いですよ」などと言って、相続の専門家の提案を全てシャットアウトしてしまうのです。何もやらなければ問題は起きないので、たとえその提案がお客様にとって、とても有効であったとしてもです。自分の保身のために専門家の有効な提案を断り続けるようアドバイスをするのです。

 

このような人たちに相続の相談をすると、相談者の財産や相続人の事情など全体を俯瞰せず、一部だけを切り取った中途半端な相続対策が横行することになります。実際に私のもとにご相談に来られる方は、すでにどこかで相談に乗ってもらったものの、対策が中途半端で悩みが深刻化してしまった人ばかりです。

 

 

成島 祐一

株式会社財産ブレーンラスト 常務取締役

 

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株式会社財産ブレーンラスト 常務取締役

株式会社財産ブレーンラスト常務取締役。1965年7月生まれ。1988年、積水ハウス株式会社入社。戸建注文住宅および相続対策としてのアパート受注の営業マンとして約12年間従事。『相続対策=アパート建築』のスタンスに疑問を抱き、本当の相続対策を行いたいと考え、1999年株式会社船井財産コンサルタンツ(現:青山財産ネットワークス)に入社。主に個人の土地持ち資産家(都市農家、テニスクラブ、ゴルフ練習場等)の相続対策、相続発生後の遺産分割の取りまとめ、納税等の業務を行う。財産ブレーントラストの設立に賛同し、2013年4月の業務開始より参画。『お客様の期待を超えるサービスの提供』がモットー。主な保有資格は、CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

著者紹介

連載相続人のすべてが満足する"不平等相続"とは何か?

相続財産は"不平等"に分けなさい

相続財産は"不平等"に分けなさい

成島 祐一

幻冬舎メディアコンサルティング

相続争いは分けるお金が少ない人の方が深刻化?家族の誰もが納得できる爽やかな相続―“爽続”に導く1冊 2016年、家庭裁判所に申し立てられた遺産分割事案の8割近くは、遺産額5000万円以下の案件でした。 これは分ける財…

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