ASD、ADHD、LD…発達障害と診断される行動の特徴とは?

発達障害をもつ人々は、社会において「生きづらさ」を感じることは少なくありません。その生きづらさを軽減させるためには、周囲の理解が欠かせません。本記事では、発達障害の人々に見られる行動の特徴を紹介していきます。

発達障害の診断基準となる「3つの柱」

近年、発達障害への関心が高まり、数年前と比較すると、「発達障害」という言葉に触れる機会は格段に増えました。ただ、その存在は知っていても、「発達障害とは何か」、きちんと説明ができる人は、そう多くないかもしれません。

 

「発達障害」という言葉は、一体何を指しているのでしょう。2005年に施行された発達障害者支援法では、次のように定義されています。


「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。


つまり法律上の定義では、「発達障害」は個別の疾患を示す言葉ではありません。


「自閉症」、「アスペルガー症候群」、「その他の広汎性発達障害」、「学習障害」、「注意欠陥多動性障害」、「その他これに類する脳機能の障害」の総称ということになります。


「発達障害」について論じられるときに、主な障害とされるのは、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)の三つです。

 

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アメリカの精神医学会によるDSM‒5(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第五版)によると、その診断基準の柱は次のようになっています。


◎自閉症スペクトラム障害(ASD)
●他人との関わりやコミュニケーションの困難さ
●常同行動、こだわり


◎注意欠陥多動性障害(ADHD)
●注意を持続することの困難さ
●多動性、衝動性


◎学習障害(LD)
●文章の読みだけが困難
●文章を書くことだけが困難
●計算だけが困難

手をパタパタさせるといった「反復的な行動」をみせる

それぞれ詳しく見ていきましょう。


(1)自閉症スペクトラム障害(ASD)


自閉症スペクトラムの「スペクトラム」とは「連続体」という意味です。かつて「自閉症」「高機能自閉症」「広汎性発達障害」「アスペルガー症候群」と呼ばれていたものは、すべてこの「自閉症スペクトラム」に含まれるようになりました。2013年に改訂されたDSM‒5から使われるようになった名称です。


「自閉症スペクトラム」は、行動の特徴によって診断されます。その際の核となるのは、次の二つです。


●対人コミュニケーションや対人行動の困難さ
●限局的、反復的な行動や興味のパターン


この両方の特徴が発達の初期からあり、それが今の生活に著しい困難をもたらしているときに、「自閉症スペクトラム」と診断されることになります。


一つめの診断基準にある「対人コミュニケーションや対人行動」は、次の三つの内容を指します。


●社会的なやりとりや気持ちを伝え合うこと
●非言語的コミュニケーションの発達
●年齢に合った社会的な関係を築いたり、維持したりすること


これらに困難さがあるかどうかが診断基準になります。幼児の場合であれば、次のような傾向が見られます。


●会話のやりとりが難しい
●相手に呼びかけたり、呼びかけに答えたりすることがうまくいかない
●自分の気持ちを伝えたり、相手と分かち合ったりすることをあまりしようとしない
●指さし・視線・しぐさなどを使ったコミュニケーションが見られない
●しぐさと言葉が合っていない
●他人を無視する
●唐突で不自然な働きかけをする
●友達をつくることが難しい
●ごっこ遊びに参加することが難しい
●自分の遊び方にこだわり、相手に押しつける

 

二つめの診断基準である「限局的、反復的な行動や興味のパターン」は四つの要素に分けられます。


●常同的な言動をくりかえす
●常に同じであることや、決まった手順を踏むことへの強いこだわり
●ほかの子どもが興味を示さないようなものや、非常に細かい特定の物事に対する強い
こだわりや関心
●特定の感覚に対する敏感さ・鈍感さ、あるいは感覚に対する高い関心


一つめの「常同的な言動」とは、たとえば、おもちゃを一列に並べる、手や手に持ったものをパタパタさせるなどといったことが挙げられます。


四つめの「特定の感覚に対する敏感さ・鈍感さ」とは、普通の人には何ともないような場所でもうるさくて耐えられないような聴覚過敏や、触られるのを極端に嫌がる触覚過敏のことです。逆に、痛みを感じにくい低感覚として現れることもあります。普通の人には何ともないようなスーパーマーケットでも、パチンコ店の中のような騒音の渦の中に飲み込まれたような感覚になるのだとしたら、本人の日常生活はどれほど大変なものか、想像することができるでしょう。


自閉症スペクトラムの人には、具体的に次のような特徴が見られます。


●他者の気持ちを想像することが苦手
●比喩や冗談を理解しにくい
●こだわりが強く、同じパターンにこだわる傾向がある
●急な予定の変更に対応することが苦手
●特定のものしか食べられないなど偏食の傾向がある
●同じ服を着ることに固執するなどのこだわり行動をとる


自分の身近な人を思い浮かべたときに、当てはまる人がいると思ったかもしれません。


実は、誰しも多かれ少なかれ自閉症的な要素を持っているとされています。定型的な発達をしている人と発達障害とされる人との間は、境目のないグラデーションになっています。


自閉症スペクトラム障害とされるかどうかは、要素の有無ではなく程度の問題で、社会的に生きづらいレベルのものを「障害」としているに過ぎません。

 

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(2)注意欠陥多動性障害(ADHD)


「注意欠陥多動性障害」とは、注意力に欠け、衝動性や多動性の傾向があることです。
大きく三つのタイプに分けられます。


一つめは、衝動性・多動性が目立つタイプです。刺激に対して興奮しやすく、感情をコントロールすることが苦手で、次のような特徴があります。


●じっとしていられず走り回る
●ソワソワとして落ち着かない
●人の話を聞かずしゃべりすぎる
●順番を待てない
●会話の中で、相手の質問が終わる前に答えてしまう

 

二つめは、注意欠陥が目立つタイプです。注意力が散漫で、外からの刺激で注意がそれやすく、そのために頻繁に忘れ物をしたり、物を失くしたりします。注意力が欠如しているので、幼児の場合はとくにケガをしやすい傾向があります。昔なら、「生傷の絶えないわんぱくな子ども」とされていたような子どもたちです。


三つめは、衝動性・多動性と注意欠陥のいずれの特性も見られるタイプです。


ADHDは生まれつきのもので、乳幼児の頃は、敏感さのために環境の変化によって混乱しやすい傾向を示します。ただ、実際にADHDが顕在化するのは、3〜4歳の頃です。就学後は、ちょっとしたことでも混乱しやすく、感情的に不安定になり、怒りを爆発させるといった衝動性がみられることがあります。忘れ物を頻繁にしてしまったり、大切なものを失くして困ったりすることもよくあります。


ただ、これらの傾向があっても、本人の努力や、周囲のサポートによってカバーできることも多くあります。たとえば、子どもが混乱しないように教師が指示の出し方を工夫したり、忘れ物をしないように親が持ち物の確認を手伝ったりすることで、ある程度トラブルを防ぐことができます。


(3)学習障害(LD)


全般的な知的発達に遅れはないものの、特定の能力の使用と獲得に困難があり、学習に支障が出るものを学習障害といいます。文字の読み書きが難しかったり、計算ができなかったりと、症状は人によってさまざまです。


それぞれ、場合に分けて見てみましょう。


読むことに困難がある場合は、似た文字の識別が困難で、行や文字を飛ばして読んだり、繰り返して読んだりします。文章の内容を理解できないこともあります。


書くことに困難がある場合は、文字が左右上下反転する「鏡文字」を書くことがあり、見たものを書き写すことが苦手です。空間認知の能力と関連があるとされています。


計算することに困難がある場合は、くり上がりの計算を苦手とする特徴があります。くり上がりの計算については、直前のできごとを記憶する能力の低下が関係しているのではないかとされています。


学習障害としてよくあるのは以上の三つですが、これらのほかにも、聞く・話す・推論するといったことが苦手なタイプもあります。


聞くことに困難がある場合は、複数の指示、集団の中での指示が理解しにくい傾向にあります。これは、ワーキングメモリーの発達の遅れと関連しているとされています。


話すことに困難がある場合は、事柄や順序を整理して話すことが苦手で、「いつ」「どこで」「だれが」などを抜かして話すことがあります。会話が一方的で、話題がとびやすい面が見られます。


推論することに困難がある場合は、因果関係の理解や、相手の立場に立つことが苦手です。目的に沿って計画を立てることができない傾向があります。

 

ここまで、自閉症スペクトラム、ADHD、学習障害を分けて説明しましたが、実際には、複数の特性を併せ持っていることも少なくありません。また、幼児期には個別の障害を特定できず、「発達障害の疑いがある」という診断をされることがあります。

 

 

大坪 信之

株式会社コペル 代表取締役

 

 

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株式会社コペル 代表取締役
福岡大学 人間関係論 非常勤講師
一般社団法人徳育学会 会長
日本メンタルヘルス協会公認カウンセラー 

1963年、福岡県生まれ。
日本アイ・ビー・エム株式会社を経て、現在、子どもの瞳を輝かせ続ける徳育教室コペルの代表として心の教育を志し、様々な研究に取り組み続けている。
全国各地で、子育てセミナーや子どもの潜在能力を引き出すための講演活動を通じて、たくさんの親子にアドバイスを行う。
良好な親子関係を構築するファミリーダイアログなど、多様なオリジナルプログラムを開発実施して活躍している。
著書に『偉人を育てた母の言葉』(致知出版社)、『あなたの言葉で子どもは育つ』(プレジデント社)、『きみの可能性は無限大』(少年写真新聞社)がある。

著者紹介

連載AI時代に輝く――突出した才能をもつ子どもたち~書籍『「発達障害」という個性』より

本連載は、2018年12月4日刊行の書籍『「発達障害」という個性 AI時代に輝く――突出した才能をもつ子どもたち』から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

「発達障害」という個性 AI時代に輝く──突出した才能をもつ子どもたち

「発達障害」という個性 AI時代に輝く──突出した才能をもつ子どもたち

大坪 信之

幻冬舎メディアコンサルティング

近年増加している「発達障害」の子どもたち。 2007年から2017年の10年の間に、7.87倍にまで増加しています。 メディアによって身近な言葉になりつつも、まだ深く理解を得られたとは言い難く、彼らを取り巻く環境も改善した…

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