今週は、今後の市場の方向感を決める重要な1週間となりそうだ。まず30日から米中通商協議が始まる。2月末の期限までに合意がなければ、貿易摩擦はより厳しい状況に陥るだろう。米国ではFOMCが開催されるが、1月の荒れ相場を受け、FRBは強気の姿勢を維持するのか、注目が集まる。また、2月1日に発表される雇用統計では、堅調な雇用市場に変化が見られるか、重要なポイントとなる。欧州では31日に2018年第4四半期のユーロ圏GDPが発表。その他、英国で29日にEU離脱合意案の修正案が下院で審議・採決、中国の1月景況感PMIが31日発表と、注目のイベントが並ぶ。

米中通商協議、FOMC、米雇用統計の発表

トランプ大統領は、先週末、民主党議会指導部との間で、連邦政府の一部閉鎖を解き、2月半ばまでに米国・メキシコ国境の壁建設資金を含む予算案を協議することを暫定的に合意した。協議期間を設定した妥協という側面もあるが、市場のセンチメントが極端に悪化する前に、暫定合意できたことは朗報だろう。ただ、民主党(下院)が壁建設の予算を含まない歳出法案を可決しても、トランプ大統領は拒否権を行使する構えを崩していない点は気がかりである。

 

さて、今週は、市場の方向感を決めるような材料が目白押しである。

 

政治的には、30日から予定されている米中間の通商協議が注目される。2月末の期限まで残すところひと月となるが、それまでに二国間で何らかの合意ができなければ、追加関税の発動など、両国の通商関係は非常に険しい状況に陥ることになる。

 

また、米FRBは連邦公開市場委員会(FOMC)を予定しており、昨年12月の利上げ後に示した金融政策に関する強気の姿勢を、今月の市場の混乱を踏まえてなお、維持するのか転換するのかが注目される。株式市場が急落する中、市場は利上げの打ち止めや、利下げすら織り込む動きも見せたほどである。今後の金融政策を巡って、何らかのサインを期待しているだろう。なお、米国債券市場にとっては、需給に関連して、四半期定例入札の詳細発表にも注意を払っておきたい。

 

 

また、重要な経済指標としては、1月の米国雇用統計が2月1日金曜日に発表される。雇用市場は、引き締まったままの状態が続いているが、これに何らかの変化がみられるのかも、重要だろう。

ユーロ圏GDP、英EU離脱合意案審議、中国景況感PMI

景気減速が心配されはじめた欧州では、2018年第4四半期のユーロ圏GDPが31日木曜日に発表される。前回第86回を参照いただきたいが(関連記事『ユーロ圏経済に暗雲…牽引してきたドイツにも景気後退の兆し』参照)、こちらにも注目が集まる。

 

また英国議会での、EU離脱合意案の審議も大詰めである。下院で15日に否決されたEU離脱合意案の代案に加え、与野党から提出された複数の修正案の下院での審議・採決が29日に行われる予定である。無秩序な「合意なき離脱」回避のために3月29日の離脱予定日の延期を推進する一般議員らの動きもある。合意案の代替案について短期間で超党派の同意を得るのは難しい見通しだが、各党や議会内の意見は割れている。

 

合意なき離脱は、英国にとって、経済的に最も困難なシナリオだろうが、もう一方の当事者でもあるEUにとっても、英国の混乱が波及することは回避したいだろう。英国が頼みにするのが、EUの譲歩というのも身勝手な感があるが、それほどに、事態は複雑になってきている。

 

また、中国では、1月の景況感PMIが31日発表である。こちらも、12月のPMIが市場の波乱の引き金の一つだっただけに気を付けておきたいところである。

 

材料目白押しの1週間。ひとつひとつをこなしながら、1月の荒れた相場を振り返り、今後の方向感を探る展開となるだろう。

 

 

長谷川 建一

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO

 

 

本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

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