1月の為替市場…株式市場と同様に振れが大きく
1月は株式市場の動きが激しいが、為替も同様に振れが大きい展開となっている。米ドルの金利先高見通しが薄れたために、米ドルの先高感に変化が見えることが主たる理由だろう。
ドル円は、先月12月31日に110円台だったが、1月3日には年初の薄商いの中ではあったが一時104円台までつける荒れた展開となった。ただ、市場が落ち着きを取り戻すと、米ドルはじりじりと上昇し、109円台まで値を戻した。
日銀の金融政策には、変更の可能性は小さい一方、1月始めに2019年内でのFRBの金融緩和さえ織り込むかのような利回りまで下げた米国債券相場が冷静さを取り戻す中では、米ドルを売り続けることも難しいということだろう。
同様に、ユーロドル相場も、1月は振れが出ている。1月始めは1ユーロ=1.13ドル台だったが、10日には1.1569ドルまで上昇する場面があった。2018年はユーロにとって下落圧力が続く試練の年だったが、上述の通り米ドル金利先高感が変化する中、ユーロのトレンドにも変化の兆しかと一部では捉えられたが、ユーロ圏経済見通しへの厳しい見方が強まる中、24日には再び1.13ドルまで売り込まれた。ユーロ圏経済見通しは実際に厳しくなっている。ユーロへの下落圧力は、まだ拭い去れないと見るべきだろう。
ユーロ圏の経済成長率が下方修正、独の製造業PMI後退
15日に発表されたIMFの世界経済予測では、ユーロ圏の経済成長ペースの鈍化を予想している。2019年の成長率は1.6%と予想され、3カ月前の予測からは0.3%ポイントも下方修正された。これは、ECBの予想の1.7%を下回っている。
理由は、これまでユーロ圏経済を引っ張ってきたドイツ経済の変調ぶりが主因だろう。IMFも、ドイツの民間消費が弱まり、自動車燃料排出基準改定後により工業生産も停滞気味、外需も低調と、下方修正の理由を列挙した。加えてフランスでは抗議デモや労働争議による影響から経済に停滞が見られる。イタリアも、内需の弱さに加え、国債の利回りが高止まりしていることで、借入コストの増加が景気の足を引っ張ることが指摘された。
そして実際に、経済活動の鈍化が指標に現れてきた。24日に発表されたドイツの1月製造業購買担当者指数 (PMI)は49.9と、景気拡大・後退の節目とされる50を下回ってドイツの製造業活動が縮小していることを示した。ユーロ圏全体の製造業PMIは50.7で、50を下回りはしなかったが前月の51.1からは低下し2013年7月以来の低水準だった。
ECB、現状維持を表明も景気先行きの見解は下方に修正
1月からは資産買い入れプログラムを終了させたECBだが、打ち切ってから1ヵ月もしないうちに、経済成長鈍化を示唆する指標が出てきたことは、予想外だったのではないか。タカ派と目された理事からも強気の発言は聞かれなくなった。24日の理事会では、金融政策の現状維持を決定したが、政策金利を「少なくとも今年夏ごろまで現状水準にとどめる方針」を確認した上、「必要なら」期間を延長することにまで触れることを声明で明らかにした。
ドラギECB総裁も会見で、経済成長に関するリスクが「下方に傾いた」と述べて、景気の先行きに対するこれまでの見解を修正した。 再び量的な緩和に舵を切る可能性は低いだろうが、ECBに手持ちの政策カードは少ない。ユーロ圏経済の下振れリスクと共に、為替市場ではいま一度、1ユーロ=1.13ドルのサポートラインからユーロの下値トライの圧力が高まることを想定しておきたい。
長谷川 建一
Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO