「売上至上主義」になってしまいがちな会社の特徴とは?

今回は、売上至上主義に陥ってしまいがちな会社の特徴について見ていきます。※本連載では、粗利「だけ」に目を向けて、経営改善する方法について解説する。

遊ばせておくなら…と薄利の仕事を受けることのリスク

赤字仕事や薄利の仕事を引き受けるデメリットは、実際に働く社員の立場から見てみればよく分かると思います。

 

仮に売上2倍を狙うのであれば、単純に考えて社員も2倍働かなければなりません。従業員数が倍になるなら負担は変わりませんが、たいていの場合は現状の人数で売上2倍を迫られます。

 

「遊ばせていたらもったいない」という社長の感覚だけで、儲からない仕事のために酷使されるわけです。

 

また、現実的に考えると、2倍働いて利益が2倍になる可能性はかなり低いといえます。おそらく利益率が低い仕事が増えることになり、その中には薄利の仕事、赤字になるかもしれない仕事も含まれている可能性もあり、粗利益は伸びず、社員としても残業代が少し付くくらいのプラスにしかなりません。

 

社員の立場から見ると、こんな理不尽なことはありません。売上アップのための労力を機械などで賄えるのであれば、状況によっては薄利であっても受注してもよいかもしれません。

 

しかし、実際にはそうではなく人が働きます。受注したとしても薄利で、場合によっては赤字になるかもしれない仕事のために、社員の負担は肉体的にも精神的にも大きくなり、結果、全員が疲弊します。ミスが出やすくなり、品質低下の原因にもなり、会社にとっても大きなマイナスになりますし、社長自身も苦しくなります。

 

経営改善に取り組むなら、まずはそういった目に見えない部分のリスクまで考えたほうが良いでしょう。製造業、建設業などでは、外注費、材料費などの変動費のみを原価として計算し、その仕事が黒字になり、なおかつ、受注しなければ完全に現場が遊んでしまうのであれば、引き受けたほうが良い場合があります。

 

具体例を挙げると、外注費が1000万円、材料費が1000万円、労務費が500万円の仕事の場合、通常は受注金額が2500万円以下で赤字になります。しかし、現場が完全に遊んでしまうのであれば、2000万円から2500万円までの金額なら受注を検討してもよいということです。当然、2000万円より低い金額で受注すると完全な赤字になりますから、現場を遊ばせておいたほうが良かったということになります。

 

ただし、この条件を満たしていたとしても、現場の繁忙期に引き受けてはいけません。薄利の仕事を受注し、現場がフル稼働に近い状態になることにより、利益率が良い仕事を断らなければならなくなる「機会損失」が必ず生じるからです。

現金での取引が少ない会社が売上げ至上主義に陥りがち

売上至上主義は一種の病です。

 

では、どんな人がこの病気にかかるのでしょうか。

 

社長の性格的には、自分や自分の会社を規模により大きく見せたいという比較的自分を大きく見せたい傾向のある人が挙げられます。また、仕事がなくなったり、減ったりすることを過度に心配する人もかなり注意が必要です。つまり、傲慢でもダメですし、心配性でもダメだということです。

 

業種としては、現金の出入りが見えやすい飲食業や小売などは、売上至上主義に陥る可能性が比較的小さいように感じます。

 

例えば、ラーメン店などでは材料の仕入れが日々ありますし、売上なども毎日現金で受け取ります。お金との距離が近い現金商売である分、利益にもシビアになりやすいと思うのです。同様の理由で、日々現金でやり取りする小売店なども、売上至上主義になりにくい傾向があるように感じます。

 

一方、建設、製造、卸などは手形を切って商売するケースがありますので、お金との距離が比較的遠くなりがちです。帳簿の上だけでお金のやり取りを見ていたり、その額が何千万、何億という身近な単位ではないため、利益管理が逆に軽視されやすく、結果的に売上至上主義という病にかかりやすくなるのだと思います。

 

環境の面では、会社の規模そのものが大きくなっていくほど、売上至上主義になる傾向が見られます。

 

例えば、個人事業主や個人で店を営んでいる人で、売上至上主義になる人はあまり見られません。理由としては、個人事業では利益がなければ生活できなくなってしまうため、売上よりも利益に目が向きやすくなるためだと思われます。

 

「利益がないと生きていけない」という現実が、売上至上主義に陥るのを防いでいるともいえるでしょう。

 

ただ、会社が大きくなっていくと「規模を大きくしたい」という欲求がどうしても表に出てくるようになります。社員10人なら50人、売上1億なら5億を目指そうという気持ちが強くなっていくものなのです。

 

また、会社が大きくなると融資を受けて事業をするケースも増えていきます。すると、融資を受ける際に売上規模が大きい方が良いだろうと考えてしまいます。

 

融資を受けたら、今度は社員に給料を払わなければいけないというプレッシャーのほかに、借金を返さなければいけないというプレッシャーを抱えることになります。それが原因で「仕事を減らしてはいけない」という過度の思い込みや、断ったら次がなくなるといった恐怖心が生まれます。

 

そうこうしていくうちに売上に目が向くようになり、気づけば売上だけ追いかけて薄利の仕事や赤字の仕事を増やすようになってしまうのです。

 

一方、小さい会社が売上至上主義に走ってしまうケースもあります。

 

小さい会社ほど社長の影響力が強く、ワンマン経営になる傾向があるため、社長が売上至上主義に陥ったが最後、会社全体が売上だけを追いかける集団になるからです。

 

私が支援してきた会社を例にとると、経理などを見ている社員の中に、たまに売上のみを追い掛けていてはダメだと気づいている人がいるケースもあります。

 

ただ、彼らのように経営の問題点が分かっている人がいても、ワンマン経営の社長は耳を貸しません。

 

少人数の会社でも社長と社員の間には見えない壁があり、ワンマン経営の会社ほどその壁が高くなるのです。

 

ちなみに、私が経営支援をスタートする際には全ての社員の方と面談を行います。その時に「この人は経営の本質的な問題点が分かっているな」と思った人には、その後の改善の取り組みの中でも改善チームの主力メンバーとなってもらいます。

 

利益を見る意識が高い人や、経営に関する正しい知識や考えを持っている人を見つけ、彼らの声を経営に反映できる組織にすることが、経営改善の第一歩になるのです。

 

税理士、会計士、コンサルタントなどは経営の専門家ですから、「売上ばかり追い掛けていてはダメ」と分かっている人もいます。

 

彼らが指摘すれば、社長が耳を傾ける可能性も大きくなるでしょう。しかし、彼らが社長に毅然と提言することはあまりありません。せいぜい「利益を増やしましょう」とやんわりアドバイスする程度で終わってしまうことが多いのです。

 

なぜかというと、経営に深く踏み込んだ指摘をすることで、社長の経営方針を批判したと思われ、その結果として、彼ら自身が仕事を失ってしまうことを恐れる心理が働くからです。数年前に起きた大手メーカーの粉飾決算も、大手会計事務所が問題点を「言い切れなかったのでは」と言われていました。

 

社員が言っても社長はいうことを聞かず、外部の専門家もその問題点を指摘することができない。そういう環境が売上至上主義に拍車を掛けているといえます。

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昭和42年石川県金沢市生まれ。法政大学文学部卒業。地元大手商社の営業部長、大手コンサルティングファームで金沢支社長を務めた後、平成20年にk・コンサルティングオフィスを個人開業。平成27年法人化。建設業界の業績改善に大きな強みを持つコンサルタントとして、ゼネコン、工務店、設備会社など多数の顧問先の経営改善に取り組んできた。社員全員と面談を行うなど、顧客に深く入り込むコンサルティングを強みとし、顧問企業の90%以上は2年以内に業績が大幅改善するという圧倒的な実績を残す。2年で利益が80倍になった例もある。

著者紹介

連載「粗利」を増やして企業の経営を劇的に改善する方法

粗利「だけ」見ろ 儲かる会社が決して曲げないシンプルなルール

粗利「だけ」見ろ 儲かる会社が決して曲げないシンプルなルール

中西 宏一

幻冬舎メディアコンサルティング

売上を見てはいけない! 経営改善の真髄をわかりやすく解説。 東京オリンピックに向け、建設業や不動産業などの好景気が報じられています。 また飲食業や運送業も繁盛しており、人手不足が深刻化する程です。 しかし、好…

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