中小企業の経営者は、日々膨大な業務をこなしていますが、なかでも経理業務の負担は大きく、経営者が本来行うべき「社長の仕事」を圧迫しているケースが少なくありません。本連載では、経理業務を軽減し、社長本来の仕事に時間を取り戻すメリットを見ていきます。

忙しすぎる日常業務のせいで、会社が存亡の危機に!?

日本の社長たちは、目の回るような多忙な日々を送っています。

 

「風邪ぐらいでは休めない」

「時間がなくて死にそうだ」

「土日ももちろん仕事だ・・・」

 

中小企業の経営者であればほとんどの人が、自身の忙しさを訴えるこうした嘆きの声を一度ならず口にしたことがあるはずです。

 

「忙しい=時間が足りない」今の状態のままでは、経営者が本来しなければならない仕事、すなわち「社長の仕事」を行うことはできません。その結果、最悪の場合には、会社が危機的な事態に陥ることになるかもしれないのです。

 

経営者が本来しなければならない「社長の仕事」とは何なのか、また、なぜそれを行わなければ会社が危うくなるのか──その答えに触れる前に、まずは中小企業の経営者たちが時間の足りない状況に追い込まれている背景について詳しく確認していきましょう。

 

初めに「中小企業の社長が忙しくなっているそもそもの理由」から考えてみましょう。

 

中小企業の経営者は、さまざまな日常業務に取り囲まれています。

 

まず、起業したばかりで社員が一人もいないような段階では、営業はもちろん、仕事で使う什器・備品の購入や、郵便物の発送など、大企業であれば、営業部、総務部など各部門のスタッフが行っているような仕事をすべて、社長が一人でこなさなければなりません。

 

社員を雇い入れるような場合でも、「ハローワークで募集するか、それとも採用エージェントに依頼するか」という細かいところまで経営者がいちいち判断しなければならないので、大変な手間と時間を取られることになります。

 

また、ある程度会社が大きくなった段階でも、社員の数が四、五人程度であれば、日常業務の大半をまだまだ社長が行わざるを得ません。例えば営業職として採用した社員に総務の仕事を行わせようとしても「自分はその職種で雇われたわけではない」と拒まれてしまうでしょうし、そもそも複数の職種の仕事を任せられるだけの十分な能力を持ち合わせているような社員などめったにいないはずです。

経理業務を社員に任せられない、中小企業特有の事情も

このように、中小企業の経営者たちは種々雑多な数々の日常業務に取り組むことを余儀なくされています。その中でも、とりわけ大きな負担となっているのは「経理業務」ではないでしょうか。

 

言うまでもなく、経理は数字と向き合う仕事です。そのため「子どもの時から数字と計算が大の苦手」という人にとっては、経理の仕事は苦痛以外の何ものでもないでしょう。

 

そのうえ、経理の仕事は、ほかの日常業務に比べてはるかにボリュームがあります。試しに中小企業で行われている主な経理の仕事を列挙してみると──。

 

仕入管理、買掛金の管理、売上管理、売掛金の管理、請求書の発行、領収書の発行、現金・預金の管理、手形・小切手の管理、経費の精算、伝票の作成、帳簿の記載、月次決算、年次決算、減価償却、給与計算、年末調整、社会保険料の計算と納付、源泉所得税の計算と納付、法人税の計算と納付、法人住民税の計算と納付、消費税の計算と納付・・・。

 

ぱっと思いついただけでも、こんなにもたくさんの作業が挙げられます。

 

しかも、経理業務の中には、ここに挙げた現金・預金の管理、伝票の作成、帳簿の記載のように毎日毎日、繰り返し行わなければならないものもあります。つまり、会社の備品の購入などのように必要に応じて求められる仕事とは違って、経理業務は日々、確実に発生することになるわけです。そのため、経営者は、ほかの日常業務とは比べものにならないほど、経理業務のために多くの時間を割くことを強いられているのです。

 

さらに、経理業務には大企業では見られない中小企業ならではの特殊な事情もあり、そのことが経営者の負担をさらに重いものにしています。

 

まず、中小企業では、請求書の作成や社外への支払い業務に関しては、「売上を社員に知られたくない」「不正が行われたら困る」などの理由から社員には任せづらい現実があるはずです。

 

また、給与計算とその支払いに関しても、個々の従業員の給与に差を設けているために「社員に知られたら面倒なことになる」と思っている経営者が多く、やはり社員に委ねることが難しい状況があります。

 

そのため、経理を担当する社員がいても、これらの業務については経営者自身が行っているケースも多々見られます。

 

特に、給与計算に関しては、複雑で面倒な計算が求められるために、下手をすればそれだけで半日から1日の時間が取られることも珍しくありません。しかも、社員の生活そのものに関わってくることから、絶対にミスの許されない、神経を使う業務です。そのため、「給与計算」の4文字を聞いただけで「ああいやだ、やりたくない・・・」と暗い気持ちになる経営者も少なくないのです。

 

 

李 日生
社長の時間をつくる株式会社 代表取締役
公認会計士、経営コンサルタント

 

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