年の瀬に大荒れの株式市場 しかし米国経済が底堅いのも確か

12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)にて、FRBは2019年も利上げを継続することを示唆。これを市場は悲観し、株式市場は年末にかけて大荒れとなった。24日には今年9月の高値から20%の下げであったが、26日に反発。27日も続騰となり、やや持ち直して終えた。2018年は市場の不安感と米国実態経済の堅調さのギャップに揺れた一年であったが、これが年の瀬に噴出したようだ。2019年に向け不安要素はあるものの米国経済の堅調は明確であり、一気に失速することは予想し難い。

2019年も利上げ継続の流れ…市場の悲観論は極まった

FRBは12月19日の米連邦公開市場委員会 (FOMC)で、2018年内で4回目となる利上げを実施した。市場は、今回の利上げはほぼ織り込んでいたが、FRBが2019年の金融政策に関して、ハト派的な方向感を打ち出すことを期待していた。9月と11月のFOMC声明文から、変化の兆しをかぎ取っていた市場参加者は、今回のFOMC後には、FRBの利上げ姿勢に関して、より慎重なトーンが聞こえてくると予想したのだ。それに反して、FRBが2019年も利上げは断続的に、数度実施される可能性を示唆したことは、金利の上げすぎや米国経済のピークアウトへの懸念を強めることになった。

 

また、今年10月以降の株価の下落による資産価格の低下や金利水準の上昇など金融状況が逼迫してきたことや、貿易摩擦などによる海外発の景気停滞のリスクについて、より明確な配慮が見て取れなかったことで、肩透かしを喰らった感はあろう。この後、米国株式市場では株価への下落圧力が強まり、為替市場でも円高・ドル安が進んだ。

 

FOMCメンバーによる政策金利見通し(ドットチャート)では、2019年の利上げ予想回数が3回から2回へと減り、パウエルFRB議長の会見でも、金融市場の環境が厳しくなったことへの認識が示されるなど、FRBはタカ派的な姿勢を頑なに維持しているとはいえないと筆者は評価しているが、市場の悲観論は極まった感すらある。

 

クリスマスイブの24日には、S&P500種株価指数が2.7%下落し、今年9月の高値から20%下がった水準で引けた。高値から20%を超えて下げた場合には、弱気相場入りが確認されるという見方が株式市場にはあり、この水準は非常に重要だったが、26日には5営業日ぶりに反発。27日も一時下落が強まる局面もあったが、引けに掛けて大幅に上昇して、2日続騰となり、相場の雰囲気は、ようやく、やや持ち直した。

 

トランプ大統領は「FRBは米国経済がことさら良いと考えており、利上げを急ぎ過ぎている」とFRBとパウエル議長を公然と批判している。政策金利を上げすぎることで、好調な米国経済が成長鈍化に陥るとの懸念が強まっていることも確かだが、冷静に見れば、通商問題の影響から中国経済のみならず世界経済の先行き不安が強まっていることや、米国議会での対立が解けず政府機関が一時閉鎖に追い込まれて、米国経済の足かせになりかねないことへの懸念も、ここ数週間の株価の大幅下落に繋がっているのである。

 

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欧州に不安はあるが、米国経済は相変わらず底堅い

2018年を振り返ってみれば、繰り返し指摘してきたことだが、年初から、市場に漂う先行き不透明感と、米国実態経済の堅調振りにはギャップがあった一年であった。FRBと新たに就任したパウエル議長は、「類まれなほど」腰の強い経済成長と引き締まった雇用市場、そしてジワリとではあるが着実に上昇する物価を見て取ったインフレ抑制のための利上げを敢行してきたが、市場との対話は必ずしも上手くいっていなかった。ギャップとして蓄積された不安感が、この年の瀬に株価の下落という形になって噴出してしまったことは、残念である。

 

さて、2019年だが、年初から、上下院の勢力図が異なる米国議会での対立解消に向けた対話や、EU離脱合意案の承認を巡る英国議会での採決という課題に直面する。政治的な問題ではあるが、経済への影響は計り知れないほど大きい。2月には、米中通商協議の90日の期限も迎えることになる。

 

そして、欧州では、イタリアへの妥協の形で一旦ガス抜きはされたが年末に掛けてのフランスの混乱やドイツでの与党の弱体化は、否定しようのない流れである。欧州経済は、2018年既に停滞感を強めているが、ダウンサイドのリスクは高まっている。中国でも経済の足取りがやや不安視されるような、弱めの経済指標も散見される。アジアは、チャイナプラスワンの動きに、インドやフィリピン、ベトナムなどでは消費の動きが独自の成長路線を感じさせるものの、経済規模ではまだ十分に大きいとはいえず、世界的なショックを吸収できるかといえば難しいだろう。

 

一方で、米国では、2020年の大統領選挙が視野に入ってくる。トランプ大統領は、2期目の続投に意欲満々である。現職が有利の選挙ではあるが、再選の鍵となるのはやはり経済状態である。当選前の選挙戦で、トランプ候補は米国経済を3%成長させると訴えた。2018年の成長率は2.9%に達する可能性が高い。数字の上では、トランプ大統領の評価と米国内での人気は成長率でも裏付けられていると言える。ねじれ議会の状況で、財政政策の余地が小さい中、難易度はあるが、経済成長をドライバーに再選を目指すトランプ大統領の野心は衰えることがないだろう。

 

また、米国経済が、歴史的に見ても低水準の失業率にあり、これほど雇用市場が引き締まった状態から、一気に失速を予想することは難しいのもひとつの事実である。その点では、新年から悲観しすぎるのも禁物ではないだろうか。2019年は、不安感や不透明感からのギャップを埋める2018年の逆の動きもあるのかもしれない。

 

 

長谷川 建一

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO

 

 

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO

京都大学卒、MBA(神戸大学)。
シティバンク日本及びニューヨーク本店にて資金証券部門の要職を歴任後、2000年にシティバンク日本のリテール部門で商品開発や市場営業部門のヘッドに就任。2002年にシティグループ・プライベートバンクのマーケティング部門ヘッドに就任。 2004年末、東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に移り、マーケティング責任者として活躍。2009年からはアジア・リテール戦略を担い、2010年は香港にてBTMUウエルスマネージメント事業の立ち上げに従事。
2013年よりNippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(ニッポン・ウェルス・リミテッド・リストリクティド・ライセンス・バンク/日本ウェルス)を創業し、COOに就任。2017年3月よりCIOを務める。

WEBサイト https://jp.www.nipponwealth.com/

長谷川建一氏登壇のセミナー https://gentosha-go.com/articles/-/13973

著者紹介

連載香港発!グローバル資産防衛のためのマーケットウォッチ

本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

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