「株式投資型クラウドファンディング」解禁のインパクト

「直接金融」となる株式投資型クラウドファンディングに関して、経済産業省と金融庁で見解の相違がありましたが、安倍政権の判断により、解禁されることになりました。ベンチャー企業、スタートアップ企業を育てていこうという、経産省寄りの政治判断だと言えます。 ※本連載は、株式会社パブリックトラストの代表取締役である佐藤公信氏の著書、『クラウドファンディング2.0』(日本文芸社)から一部を抜粋し、新時代のクラウドファンディングについて解説していきます。

経済産業省と金融庁のミッションの違い

行政機関で言うと、経済産業省のミッションは、経済活動を活性化することです。経済産業省は、産業を育成するための政策の一つとして、金融の規制緩和を求めました。

 

それに対して、金融庁のミッションは、金融事故をなくすことです。「規制を強化すれば経済が停滞してしまう」と指摘されても、金融庁には金融事故を防止するミッションがあります。

 

経産省と金融庁では、ミッションが違っていますから、なかなか折り合いが付きません。そこで、安倍政権が政治判断で、株式投資型のクラウドファンディングを解禁することになりました。経産省寄りの政治判断であり、ベンチャー企業、スタートアップ企業を育てていこうという国策だと思います。

 

ベンチャー企業を取り巻く環境を変えることによって、ベンチャー企業が大きな産業をつくりだす土壌を整備しようというものです。

 

その一方で、金融事故を少しでも減らすために、株式投資型クラウドファンディングのプラットフォーマーに証券免許を与えることについては、かなり慎重な対応がされています。2018年11月現在、3社しか認められていません。

プラットフォーマーと投資家が会うことは違法

株式投資型クラウドファンディングの法律が興味深いのは、「プラットフォーマーが投資家に会ってはいけない」と決められていることです。資金調達をする会社が出資者と会うことは認められていますが、プラットフォーマーが出資者と会うことは、違法行為とされています。

 

これは、詐欺師のようなプラットフォーマーの出現を防ぐためです。プラットフォーマーが出資者に会って熱意を伝えると、詐欺師的に口説いてお金を集めて、事業会社に振り込まずに逃げてしまうところが出てくるかもしれません。

 

それを防ぐために、斡旋するプラットフォーマーは投資家には会ってはいけないことになっています。

 

金融庁が証券免許に対して慎重な姿勢を保っているのは、グリーンシートのときに痛い経験をしているからです。

 

グリーンシート時代に、免許を与えた証券会社の社長が未公開株詐欺で逮捕されるという事件がありました。

 

金融庁にしてみると大失態で面目丸つぶれです。そういう失態を二度と起こさないために、かなり厳しい対応をしていて、なかなか証券免許を与えません。

 

株式投資型クラウドファンディングを募集する会社は、「第一種少額電子募集取扱業者」の証券免許が必要です。第一種免許のうち、少額電子募集に限定された免許です。

 

日本の場合、証券会社は金融庁の監督下にあるだけでなく、日本証券業協会に入らなければいけません。日本証券業協会は同業者組合ですが、金融商品取引法上の認可協会として法律で縛られています。

 

日本証券業協会は、時として、金融庁以上に厳しい規制をしています。プラットフォーマーは、金融庁に認めてもらい、日本証券業協会の許可を得なければ、やってはいけないことがたくさんあります。

アメリカ経済を支えるIT企業は「直接金融」で成長

世界でも投資型のクラウドファンディングは広がっています。2018年6月に、日本証券業協会主催で開かれた「投資型クラウドファンディング・セミナー」では、大阪大学大学院高等司法研究科准教授の松尾健一氏が「米英における投資型クラウドファンディングの法制度と利用実態」という発表をしています。その資料によれば、イギリスでは投資型クラウドファンディングがかなり進んできているようです。

 

2017年は、プラットフォーマー上位4社で約370億円が調達されています。Crowd cubeというプラットフォーマーの2017年の実績では、9000万ポンド(130億円)の調達額となっています。

 

アメリカでも、JOBS Act(Jumpstart Our Business Startups Act)という法律ができ、株式投資型のクラウドファンディング(equity crowdfunding)が認められ、2016年5月から法律が施行されました。松尾氏の資料によれば、2016年5月から年末までの約半年間で、28件、約9億円が調達されています。

 

金額的には少ないように思えますが、アメリカの場合は、もともと直接金融が盛んであり、資金の出し手がたくさんいます。

 

セコイア・キャピタルやクライナー・パーキンスなどの有名ベンチャーキャピタルは、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンなど、GAFA(ガーファ)と呼ばれる企業に投資してきました。

 

ベンチャーキャピタルの支援を受けて成長した事業会社は、今度は資金の出し手になります。グーグルは、売り上げが17億円程度だったユーチューブに、2006年、約1800億円を出資していますし、フェイスブックは、売り上げがほぼゼロだったインスタグラムに、2012年に800億円も出資しています。

 

このように直接金融が盛んで、リスクマネーが次のベンチャーへ、次のベンチャーへと投入されています。

 

GAFAはアメリカのみならず世界を席巻(せっけん)していますし、彼らが出資したユーチューブやインスタグラムも大きな影響力を持っています。現在のアメリカ経済を支えているIT系企業の成長は、直接金融によるものです。この流れが、日本でもようやく始まろうとしており、そのきっかけとなりうるのが、株式投資型のクラウドファンディングです。

 

株式投資型クラウドファンディングは、日本の金融業、新規産業、イノベーションに大きなインパクトをもたらす可能性があります。

 

 

佐藤 公信

株式会社パブリックトラスト代表取締役

 

1960年生まれ。千葉県出身。株式会社パブリックトラスト代表取締役。クラウドファンディング・コンサルタント、および、起業家の夢を企画にする専門コンサルタント。
立教大学社会学部卒業後、12年間、株式会社クレディセゾンで企画業務に携わる。構想を企画にするノウハウと戦略構築の手法を独自に体系化、ストラテジックタワー(戦略四角錐)を考案。
2000年、株式会社パブリックトラストを設立。「誰でもわかりやすく、一流の経営戦略を作れる」をコンセプトとしたオリジナルメソッドで、これまで2000人以上の社長の事業計画書作成を支援。同時に、株式投資型クラウドファンディング(IFO)で投資資金を調達する支援を、前身のグリーンシートの頃から行なっている。コンサルタント会社として支援数は全国一。
クラウドファンディングやベンチャーキャピタルからの資金調達、IPO、戦略構築、イノベーションセミナー等を定期的に行なっている。

著者紹介

連載「共感」が広げるビジネスの可能性…クラウドファンディング2.0

本連載は、投資を促したり、特定のサービスへの勧誘を目的としたものではございません。また、投資にはリスクがあります。投資はリスクを十分に考慮し、読者の判断で行ってください。なお、執筆者、製作者、日本文芸社、幻冬舎グループは、本連載の情報によって生じた一切の損害の責任を負いません。

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