今回は、クラウドファンディングに必要な「共感」を得やすい3つの社会問題について見ていきます。※本連載は、株式会社パブリックトラストの代表取締役である佐藤公信氏の著書、『クラウドファンディング2.0』(日本文芸社)から一部を抜粋し、新時代のクラウドファンディングについて解説していきます。

教育に対する共感を集め、約2000万円を調達した例も

前回の続きです。

 

①高齢化・少子化

高齢化は、今後さらに進んでいきます。総務省が発表した推計人口(2018年9月15日現在)では、65歳以上の人は3557万人で総人口の28.1%になったとされています。70歳以上で見ても、2600万人以上。総人口の20%強です。

 

およそ5人に1人は70歳以上、4人に1人は65歳以上ですから、高齢の方のお困りごとを解決できれば、ビジネスは広がっていく可能性があります。

 

年齢を重ねると、体の機能が衰えてきて、今までできたことができなくなります。お困りごとはたくさんあると思います。前回でストローの例を紹介しましたが、高齢者の方で、ストローを使っている方はたくさんいます。コップなどから直接飲むよりも、楽なのでしょう。

 

高齢で吸う力が衰えている方のために、コップと一体になったようなものもあります。コップを少し傾けると、自然に水が流れ込んでくるような仕組みになっています。

 

身近な高齢の方を見ていて、不便そうだなと気づいたり、「お困りのことはないですか」と話を聞いてみれば、共感のタネが見つかると思います。バリアフリー関連でも、新たなイノベーションのヒントはたくさんあるはずです。

 

高齢化とともに進んでいる少子化も大きな社会課題です。

 

少子化対策というと、子供を増やすことに意識が向きがちですが、少子化の現状を受け入れて、少ない子供を賢く育てていくことも、少子化対策の一つです。

 

福岡にあるコラボプラネットという学習塾会社は、地方の塾のない町での子供たちの学習支援に力を入れています。

 

都会には進学塾はたくさんありますが、地方には進学塾がない地域もあります。そういう地域の子供は、学校が終わってから繁華街の進学塾に通ったりしています。

 

親が送り迎えをするなど、かなり大変です。地方には進学塾に行けない子もいて、学習機会に地域格差があるのが現実です。

 

塾のない町でも子供たちがきちんとした学習支援を受けられるようにしようというのがコラボプラネットの考え方です。

 

地元の人に協力してもらって、集会所などのスペースを借りて、10人くらいの生徒でも経営が成り立つような形にしているようです。

 

また、九州大学の教授と連携して、AIによって進捗(しんちょく)状況に応じた最適の学習計画をつくれるようにしています。

 

この会社は、共感を呼び、ファンディーノのクラウドファンディングで116人から1940万円を調達しています。

 

教育分野では、サテライト学習も広がっていますし、いろいろな取り組みが行なわれています。少子化時代であるからこそ、子供の教育の質を高めることには、共感が得られるだろうと思います。

 

②女性活躍

高齢化・少子化が進んでくると、働き手が減ってきます。大切とされているのが社会での女性の活躍です。

 

政府は、女性活躍政策を推進していますが、現実には、さまざまな制約や壁があります。政府が女性活躍を推進しても、すぐに女性が活躍できるわけではありません。

 

フルタイムで働きたくても、都心部では保育所が見つからず、子供を預けられずに困っている女性もたくさんいます。

 

「女性活躍」という掛け声の下で、お困りの女性はたくさんいます。そういうお困りを解決するところにも、共感のヒントはあるはずです。

 

子育て支援のための起業をしたり、NPO法人をつくったりする人もいます。多くの人が注目している分野ですからライバルは少なくありませんが、これまでにないアイデアで工夫をすれば、大きな共感を得られるだろうと思います。

 

私の知り合いで、女性ビジネスパーソン向けに日本女子経営大学院というビジネススクールを開いた人がいます。日本の第一線で活躍している女性にメンターになってもらって、女性を支援するというものです。

 

生徒の多くは、大企業の女性中堅幹部の人たちです。授業をするだけではなく、個別にお悩みごとを聞いてあげているそうです。

 

活躍している女性の講演会などに行って話を聞く機会はあるでしょうが、第一線の人に相談できる機会はなかなかありません。「後輩を育てたい」という思いと、「先輩から学びたい」という気持ちが共感の輪を広げています。

仕事を「助ける」程度のAIに共感が集まる可能性も

③働き方改革

働き方も大きな社会課題です。

 

長時間労働やハラスメントなどが、企業社会に蔓延(まんえん)しています。これらの問題を解決することも、共感を生むだろうと思います。

 

働き方を大きく変えうるものとして、AIやロボットなどがあります。日本はロボット大国と言われており、工場にロボットを導入して働く人を重労働から解放しました。

 

ロボット化によって職がなくなってしまった人もいますが、そういう人たちを教育して、別の職に配置転換することも行なわれてきました。

 

実は、日本のロボット技術は世界最先端技術ではなかったそうです。それでも、ファクトリー・オートメーション化が進みました。

 

ドイツにも日本と同じくらいか、それ以上のロボット技術があったそうですが、ドイツでは工場のロボット化があまり進みませんでした。それは、ブルーカラーの人の仕事を奪ってしまう恐れがあったためです

 

ヨーロッパの社会では、ブルーカラーは生涯ブルーカラーであり、ホワイトカラーに移る慣習がないようです。工場にロボットを入れることは、ブルーカラーの人にとって死活問題であったため、ファクトリー・オートメーションが日本ほど進みませんでした。

 

わかりやすく言えば、ブルーカラーの人の利権があったということです。利権を奪われる人が反対してロボットを入れられなかったのです。

 

工場の清掃に関しても、清掃をロボット化してしまうと、清掃員の人たちの仕事がなくなり利権が奪われます。

 

日本の場合は、そういう利権の考え方はなく、清掃作業がロボット化されれば、清掃員は別の仕事に移ろうとします。

 

かつてはブルーカラーの人の職場がロボット化されましたが、今は、ホワイトカラーの人の職場にAIが入ってこようとしています。

 

外国のホワイトカラーの人たちは、AIで仕事が奪われると考えているようですが、日本人は、別の職種に移ろうと考える人もたくさんいるはずです。

 

そういう意味では、日本では、ホワイトカラーの仕事のAI化が進みやすいかもしれません。

 

あまり急激なものだと共感は得られませんが、仕事を奪われない程度にホワイトカラーの仕事を楽にする技術であれば、多くの人の共感を得ると思います。また、仕事の転換を余儀なくされた人の共感を得られるサービスも出てくるでしょう。

 

時代に応じて、働き方はどんどん変わっていきます。働き方の課題を解決する分野には、さまざまな共感の要素が見つかると思います。

 

このほかにも、社会課題はいくつもあります。

 

自然環境、自然災害、エネルギー、食糧問題なども大きな社会課題です。これらの分野で課題解決をするには、解決法の開発のためにかなりの資金がかかるでしょう。

 

未上場の会社が手がけるとしたら、資金調達のために株式投資型クラウドファンディングが必要になるかもしれません。

 

先進国では、物が普及してしまって、物余りという課題もあります。そうした課題に対しては、シェアリングという手法で解決しようという動きが盛んです。

 

シェアリングを実現するには、ニーズとニーズをマッチングさせる必要があり、そのシステムづくりには資金がかかります。課題解決のための資金ニーズを満たす方法の一つが株式投資型クラウドファンディングです。

本連載は、投資を促したり、特定のサービスへの勧誘を目的としたものではございません。また、投資にはリスクがあります。投資はリスクを十分に考慮し、読者の判断で行ってください。なお、執筆者、製作者、日本文芸社、幻冬舎グループは、本連載の情報によって生じた一切の損害の責任を負いません。

クラウドファンディング2.0

クラウドファンディング2.0

佐藤 公信

日本文芸社

クラウドファンディングで日本のビジネスが変わる! インターネットを介し、少額出資を広く募るクラウドファンディング。ベンチャー企業、スタートアップ企業、企業内企業の事業資金の調達のほか、未公開株式への投資にも最適…

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