クラウドファンディングには様々な種類があるが、大きく金融商品取引法の対象となるものと、対象外となるものに分かれる。本記事では、対象外である「寄付型」、「購入型」のクラウドファンディングについて取り上げる。 ※本連載は、株式会社パブリックトラストの代表取締役である佐藤公信氏の著書、『クラウドファンディング2.0』(日本文芸社)から一部を抜粋し、新時代のクラウドファンディングについて解説していきます。 

寄付型、購入型は「金融商品取引法」の対象外

クラウドファンディングには、5種類あります。

 

①寄付型

②購入型

③融資型

④ファンド型

⑤株式投資型

 

これらの5つには、いずれも「プラットフォーマー」と呼ばれる仲介者がいます。「資金を募集する人(プロジェクト、会社)」と「支援者」をつないでくれるのがプラットフォーマーです。

 

資金を募集したい人は、プラットフォーマーのサイトで募集を出せば、資金を募ることができます。

 

一方、支援したい人は、プラットフォーマーのサイトを見て、共感できるプロジェクトがあれば資金を出すことができます。

 

寄付型、購入型の場合は、基本的に誰でもプラットフォーマーになれます。

 

寄付型は規制はなく、購入型も消費者契約法、特定商取引法、割賦(かっぷ)販売法等を守っていれば誰がやってもかまいません。自分でサイト上にプラットフォームをつくって資金を募集することができます。

 

しかし、融資型、ファンド型、株式投資型は、金融商品取引法の規制対象です。融資型とファンド型のプラットフォーマーは、「第二種金融商品取引業」という免許が必要です。

 

細かく言うと、融資型とファンド型は、同じ二種免許でも異なる免許です。また、株式投資型プラットフォーマーは「第一種少額電子募集取扱業」の免許が必要です。

 

5つのタイプを大きく分類すると、寄付型、購入型は、金融商品には該当せず、融資型、ファンド型、株式投資型は金融商品に該当します。

 

金融商品に該当するものは、金融商品取引法の規制対象となります。ですから、免許を持った者しかプラットフォーマーになることはできません。

 

寄付型、購入型は、いずれも金融商品取引法の規制対象ではありませんので、購入型のプラットフォーマーが寄付型も取り扱っているケースが多いようです。

寄付型…税制の優遇措置を受けられる場合も

①寄付型

寄付を募(つの)るタイプのものが寄付型です。クラウドファンディングでも一般的な寄付行為と基本的には同じです。寄付ですから、リターンはありません。ちょっとしたグッズ程度のものがもらえる場合もあります。

 

一般的な寄付行為との違いは、プラットフォーマーのサイトを通じて、コミュニティに参加して、寄付した者同士でやりとりすることができたり、寄付後の活動状況などの情報を頻繁(ひんぱん)に受け取ったりできることです。

 

寄付型クラウドファンディングには、国際支援、食糧支援、医療支援、遺跡保護、自然保護など、さまざまなタイプのプロジェクトがあります。「世の中の役に立ちたい」という人がプロジェクトを立ち上げ、多くの人から寄付を集めて、活動資金に使います。善意によって支えられている世界です。

 

金銭的な面で言うと、寄付型の中には、所得税、住民税、法人税などの税制の優遇措置を受けられるプロジェクトもあります。

 

優遇措置によって税の一部が戻ってくる可能性がありますので、プロジェクトを捜すときは、税制の優遇措置があるかどうかも確認したほうがいいでしょう。

購入型…実体としては「予約購入」である

②購入型

クラウドファンディングの中でも一番プラットフォーマーが多いのは、購入型です。買い手の立場から見ると「商品購入」、売り手の立場から見ると「商品販売」を、プラットフォームを通じて行なうものです。

 

購入型のプラットフォーマーとしては、サイバーエージェントグループ会社の「マクアケ(Makuake)」や、「キャンプファイヤー(CAMPFIRE)」「レディフォー(READYFOR)」、朝日新聞の「A-port」など、いくつかのプラットフォーマーがあります。

 

大きな話題になったものとしては、歌手の安室奈美恵(あむろなみえ)さんの引退に際して、感謝の気持ちを伝えるための新聞広告を出すプロジェクトがありました。

 

これは朝日新聞のA-portを使って、同新聞に感謝の広告を出すというもの。クラウドファンディングの支援者の一人ひとりの名前が新聞に掲載されました。1人3000円で、5000人近い人が応募し、1500万円程度を集めています。

 

その1500万円を広告費として、朝日新聞の4面分を使って、安室奈美恵さんへの感謝のメッセージの広告が掲載されました。「感謝の気持ちを伝えたい」ということに多くのファンが共鳴したプロジェクトですが、タイプとしては広告スペースを購入するものですから、購入型といえます。

 

購入型のプラットフォーマーとしては、サイバーエージェントグループのマクアケが大手です。マクアケでは、日本酒、時計、オーディオ製品、IoT製品、衣料品などが取引されています。

 

たとえば、地方の地場の酒造会社が「こういう日本酒を造りたい」と掲載して、それを応援する人が「こんな日本酒なら飲んでみたい。買ってあげよう」と応募して資金を出します。その資金で製品を造り、出資者に届けるというものです。

 

購入型は、手法はクラウドファンディングですが、実体としては、「予約購入」です。販売形態としては必ずしも新しいものではありませんが、共感の気持ち、応援的な気持ちが含まれているところが新しい点です。

 

「このお酒は、地球環境に配慮している」とか、「地元の支えになる」といったことに共感・共鳴した人たちが、そのお酒を予約購入しています。

 

このほか飲食店、レストランの開業資金の調達などにも使われています。「こんなお店を出したい」というコンセプトを打ち出して、それに共感した人たちが、食事券などを予約購入します。

 

世の中には、魅力的な飲食店はたくさんありますから、わざわざ開業前の飲食店の食事券を買う必要などないのですが、それでも食事券を買う人たちは、開業する人の何かに共感して応援したいという気持ちからだと思います。

 

音楽や映画を製作するために、資金を集め、できたCDや映画のチケットを出資者にお返しするというタイプもあります。CDやチケットの予約購入のような形です。

 

日本では、ミュージックセキュリティーズという会社がアーティストを支援するためのクラウドファンディング会社として最初に設立されています。音楽デビューしたい人がインターネットで資金を募集するときなどに利用されています。

 

「モーションギャラリー(MotionGallery)」というプラットフォーマーも、チケット等を購入して、音楽やアート、映画、ゲームなどのクリエイターを応援する仕組みです。

 

大企業の中には、新商品を開発するときに、購入型のクラウドファンディングを利用するところも出てきました。

 

東芝が中堅メーカーと組んでアルコール検知装置の予約販売に利用した例や、ソニー系の会社がスマホでドアをロックする装置を予約販売した例などが報道されています。

 

企業の場合は、クラウドファンディングを使うことで、その商品がどのくらい共感を得るか、どのくらい売れそうかというマーケティング・リサーチにも使えます。

 

東芝のアルコール検知器の場合は、目標金額150万円に対して、集まった金額は1500万円以上。ソニーのドアロック装置は、目標金額162万円に対して、約2750万円の資金を集めています。

 

予約購入者たちの反応は、企業にとってはマーケティングに有益なデータとなります。

 

購入型のプロジェクトは、募集額は数十万円から数百万円程度が多いようです。

 

各プロジェクトの金額を人数で割ってみますと、1人当たりの出資金額は、平均して1万〜2万円程度。財布から出せる程度のお金で、気に入った商品を予約購入する仕組みとして、購入型クラウドファンディングが使われています。

 

ちなみに、株式投資型のクラウドファンディングの場合は、募集金額は通常、数千万円規模で、1人当たりの出資額は平均25万円程度ですから、購入型のクラウドファンディングとは、1桁違うスケールです。

 

アメリカでも購入型のクラウドファンディングは盛んです。

 

有名なクラウドファンディング・プラットフォーマーの「kickstarter(キックスターター)」では、日本円にして2万円弱程度で購入できるスマートウォッチ(腕時計)で、20億円以上を集めているケースがあります。目標額は5000万円程度で、それをはるかに超える額です。

 

魅力的な商品を示すことによって、20億円という巨額の資金を調達できるわけですから、クラウドファンディングにはものすごい力があります。

 

ただ、このスマートウォッチの会社は別の会社に買収されました。20億円を集めた会社であっても、商品購入代金とは別の純粋な投資資金がないと経営は難しいようです。

 

 

佐藤 公信

株式会社パブリックトラスト代表取締役

 

本連載は、投資を促したり、特定のサービスへの勧誘を目的としたものではございません。また、投資にはリスクがあります。投資はリスクを十分に考慮し、読者の判断で行ってください。なお、執筆者、製作者、日本文芸社、幻冬舎グループは、本連載の情報によって生じた一切の損害の責任を負いません。

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佐藤 公信

日本文芸社

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