ECBもバランスシート拡大を終了

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報のディープ・インサイトを転載したものです。

 

資産購入プログラムの終了と再投資、インフレ率予想の下方修正など、今回のECB理事会の決定は概ね事前の市場予想通りでした。一方で、今後の金融政策を占う上で確認が必要な項目も残されています。 

ECB金融政策理事会:資産購入プログラムの年内終了を確認

欧州中央銀行(ECB)は2018年12月13日の理事会で、主要政策金利の据え置きと、景気の下支えを目的とした資産購入プログラム(APP)を終了しました(図表1参照)。ただ保有債券の償還資金の再投資については、利上げが実施された後も長く継続するとの方針を示しました。

 

[図表1]ユーロ圏と米国の中央銀行バランスシートの推移

週次、期間:2012年12月19日週~ 2018年12月12日週 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
週次、期間:2012年12月19日週~ 2018年12月12日週
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

ECBの経済予想も公表され、年後半に予想以上に景気が減速したことを受け、成長率予想を引き下げ、インフレ率予想も下方修正されました(図表2参照)。


[図表2]ECBの2019年経済成長率とインフレ率の予想

 予想発表時期:2018年9月(左)、2018年12月(右)、インフレ率はHICP 出所:ECBのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

予想発表時期:2018年9月(左)、2018年12月(右)、インフレ率はHICP
出所:ECBのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:APPプログラム、再投資期間、ECB経済予想

資産購入プログラムの終了と再投資、インフレ率予想の下方修正など、今回のECB理事会の決定は概ね事前の市場予想通りでした。一方で、今後の金融政策を占う上で確認が必要な項目も残されています。

 

えば、今回の理事会の主要テーマであるAPPは、終了といってもネットの購入が終了ということで、再投資に伴う購入は継続します。そこで、次なる関心は再投資の期間です。

 

ECBは再投資のフォワードガイダンスとして、主要政策金利の利上げ開始後も長期にわたり、良好な流動性環境と強力な金融緩和を維持するために必要な限り、APPで購入した証券の償還元本をすべて再投資し続ける、と述べています。フォワードガイダンスの解釈に配慮してか、やや長文となっています。

 

それでも明確でないのは再投資の期間です。当然、ECBの再投資期間は今後の市場動向に依存するため予測は困難ですが、参照として米連邦準備制度理事会(FRB)の量的金融緩和(QE3)のケースを見てみます。FRBのQE3の再投資は14年10月から17年10月まで3年程度となっています(図表1参照)。

 

米国のQE3が再投資を開始した時期のFRBのバランスシート規模は対GDP(国内総生産)比率で25%程度であったのに比べ、ユーロ圏は40%程度と、GDP対比で規模が大きいなど違いも見られます(もっとも日本の同比率100%超に比べれば差は小さい)。

 

今回の理事会のトーンはややハト派(金融緩和を選好)と見る背景の一つはECBの経済予想の下方修正です。市場の事前予想である程度の下方修正は想定されていましたが、ドラギ総裁はユーロ圏の景気について、足元の落ち込みは一時的との説明が多かっただけに、下方リスクへの懸念が見られます。記者会見で言及が多かった貿易戦争の影響などを反映したものと思われます。

 

 

最後に、13日の今日のヘッドラインでも指摘した的を絞った長期資金供給オペ(TLTROを想定)のアナウンスはありませんでした。ただ、複数の記者からのTLTROについて質問を受けています。ドラギ総裁は流動性供給手段であるTLTROは検討しなかったと回答しながらも、ECBは市場の流動性についてモニターしている点も強調しています。

 

一方で、利上げ時期のフォワードガイダンスは変更が無いなど、将来に向けたメッセージは少なかったと見ています。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ECBもバランスシート拡大を終了 』を参照)。

 

(2018年12月14日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト

 

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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