中国の主要経済指標が先週までに概ね公表されました。固定資産投資など一部に明るい兆しも見られますが、全般に回復ペースの鈍化が見られました。米中貿易戦争の90日間の一時休戦の効果は多少期待できるにしても、休戦後の展開が不透明であるため景気への悪影響も想定されます。当局の政策対応への期待が高まっています。
中国主要経済指標:11月の工業生産や小売売上高が伸び悩みで当局の対応が焦点
中国国家統計局が2018年12月14日に発表した11月の工業生産は前年同月比5.4%増と、市場予想(5.9%)、前月(5.9%)を下回りました。小売売上高は同8.1%増と、市場予想(8.8%増)、先月(8.6%増)を下回りました。
一方、1-11月の都市部固定資産投資は前年同期比5.9%増で、市場予想(5.8%)、前月(5.7%)を上回りました。
どこに注目すべきか:小売り売上高、米中貿易戦争、不動産投資
中国の主要経済指標が先週までに概ね公表されました。固定資産投資など一部に明るい兆しも見られますが、全般に回復ペースの鈍化が見られました。米中貿易戦争の90日間の一時休戦の効果は多少期待できるにしても、休戦後の展開が不透明であるため景気への悪影響も想定されます。当局の政策対応への期待が高まっています。
まず、中国の11月小売売上高は2003年5月以来、15年半ぶりの低水準でした。背景の一つは自動車販売と見られ、中国汽車工業協会の販売データでは11月も大幅に減少しています(図表1参照)。中国では例年、大型連休である国慶節前後(9~10月)から年末にかけて自動車販売が増加する時期となる傾向があるだけに影響が懸念されます。また、通信用品やオフィス用品の売上も軟調となりました。
[図表1]中国小売売上高と自動車販売の推移
一方で、食品や日常用品、電気製品など、一部には堅調なセクターも見られます。
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中国当局も個人消費の下支え策として10月から個人所得税の課税控除額の引き上げによる減税を実施しました。ただ景気下支えには不十分なことから10月20日に追加減税を発表、19年1月から実施の運びです。当局の対応と減税の効果に注目しています。
工業生産も市場予想を下回りました。販売が不振な自動車は製造も鈍くなっています。ただ鉄鋼生産などは前年比の伸びは堅調です。昨年の冬は大気汚染への懸念から生産調整が行われたため数字がかさ上げされた可能性も考えられるため注意も必要です。なお、かさ上げという点では輸出関連の生産にも注意が必要です。米中貿易戦争による追加関税を前に駆け込み的な輸出が実態以上に生産を支えていた可能性があります。しかし貿易データを見ると駆け込み輸出は今後後退が想定されるからです。
最後に、固定資産投資については市場予想を上回りました。固定資産投資を押し下げていたインフラ投資は年初来ベースで安定化が見られます(図表2参照)。不動産投資などは横ばいでの推移となっています。
[図表2]中国固定資産投資と主なセクターの推移
ただ、11月の中国主要70都市の新築住宅価格指数は、70都市のうち63都市で前月に比べて上昇しました。上昇した都市の数は10月と比べて2都市減少と、回復ペースに減速の兆しも見られます。住宅市場でも、規制緩和など当局の対応が求められています。
このような中、19日から中国では経済政策の指針が示される中央経済工作会議が予定されています。中国は金融、財政など多岐にわたる政策対応が求められており、同会議の打ち出す方針に注目しています。
当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『中国主要統計に見え隠れする問題点 』を参照)。
(2018年12月17日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト
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