南ア通貨ランド、国内要因に落ち着き

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報のディープ・インサイトを転載したものです。

 

南アフリカランドは利上げの決定を受け対ドルで上昇しました。今日のヘッドライン2018年9月21日号で述べたように、南アランドには依然不安定要因が残るものの、下支え要因が増えつつあるという状況が継続しているように見られます。

南ア中銀:ほぼ2年ぶりに政策金利を引き上げ6.75%にするも、投票は分かれる

南アフリカ準備銀行(中央銀行)は2018年11月22日にほぼ2年ぶりに政策金利を引き上げました。引き上げ幅は0.25% で、政策金利は年6.75%となりました(図表1参照)。

 

[図表1]南ア政策金利とランド(対ドル)レートの 推移

日次、期間:2015年11月23日~ 2018年11月22日 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
日次、期間:2015年11月23日~ 2018年11月22日
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

市場では南アのインフレ懸念と低成長の状況から利上げと据え置きが概ね五分五分で予想されていました。声明によると理事会の票も3対3で割れています。しかし、最終的にクガニャゴ総裁の判断で利上げが実施されたと見られ、ぎりぎりの選択であったことがうかがえます。

どこに注目すべきか: 南ア中銀、利上げ、原油価格、格付け、財政

南アランドは利上げの決定を受け対ドルで上昇しました。今日のヘッドライン2018年9月21日号で述べたように、南アランドには依然不安定要因が残るものの、下支え要因が増えつつあるという状況が継続しているように見られます。

 

最近の南アランドの下支え要因は次の通りです。

 

1つ目は政策の安定感が高まったことです。例えば、金融政策では利上げが選択されました。4-6月期GDP(国内総生産)成長率は前期比年率でマイナス0.7%と軟調で、コア消費者物価指数(CPI)は前年比4.2%前後で推移しており、少なくとも政策金利の据え置きが期待される経済環境です。しかし、南ア中銀は中長期的なインフレ率上昇懸念を背景に、利上げを選択、通貨ランド高を演出しました。

 

また、南アでは主に欧州や日本の主要自動車メーカーが生産拠点を構えています。南ア政府は海外自動車メーカーに対し生産・輸出を支援するプログラムを提供しています。このプログラムは2020年が期限ですが、南ア政府は国内自動車メーカーの組合と検討を重ね、2035年までの延長を決定しました。南アへの投資継続が期待されます。

 

2つ目に運が良かった面も見られます。原油価格が9月頃から足元まで下落していることは南アにプラス材料となる可能性が考えられます。南アは世界有数の資源国ですが、原油に関しては輸入国だからです。

 

最後に、国債格付けも、格上げの期待はしにくいですが、格下げ懸念が強まった昨年と異なり、安定化が見られます。南アの格付けはムーディーズ・インベスターズ・サービスが投資適格としていますが、他の主要格付け会社は南アを非投資適格(BBB-を下回る)としています。ただ、最近の格付け会社のレビューコメントでも南ア政府の政策などを評価して、安定的な格付けの推移が見られます。

 

ただ、懸念要因も見られます。景気回復が鈍い中、財政改善ペースは後退しています。例えば、10月24日に公表した中期財政計画(MTBPS)では財政赤字対GDP比率予想は、2月に予算を策定した時点での見通しよりも財政赤字が拡大するとして見通しを悪化させています(図表2参照)。MTBPSの報告書を見ると、財政悪化の主な理由は景気鈍化による歳入の低下です。一方で、目立った歳出削減は盛り込まれず結果、財政赤字予想が拡大しています。格付け会社も注目している点だけに、今後も注意は必要です。

 

[図表2]南アの財政赤字対GDP(国内総生産)比率

時点:18/19年度予算(左)は18年2月、中期財政計画(右)は10月、逆目盛 出所:南ア財務省のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
時点:18/19年度予算(左)は18年2月、中期財政計画(右)は10月、逆目盛
出所:南ア財務省のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

南アに限らず、新興国に共通する主要マイナス材料は米国利上げと貿易戦争など対策が限られる外部要因ですが、国内要因については新興国内でも対応の違いが見られます。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『南ア通貨ランド、国内要因に落ち着き 』を参照)。

 

(2018年11月26日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は2.11兆円となっています(2018年6月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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