英国ラーブEU離脱担当相「辞任」の不可解
英国の欧州連合(EU)からの離脱交渉に動きが見られた。
14日、メイ英首相はEUとメイ政権の間で合意した離脱協定の素案について、閣議了承を得たと発表。実業界や金融界の首脳は、メイ首相がEU離脱を巡り閣議了承を取り付けたことを歓迎しているが、この協定素案には与党保守党内で不満の声が強く、閣内でも交渉の前線に立ってきたラーブEU離脱担当相をはじめ、複数の閣僚が辞任を表明するという奇妙なことが起こっている。メイ首相の不信任投票を求める声もあがるなど、英議会がこの素案を巡ってさらに紛糾することを予想させるには十分なほどのドタバタぶりである。
メイ首相は不信任の動きに屈しない姿勢を示し、まさに政治生命を賭けて下院を説得し、あくまでこの素案を通す意向を示している。見通しとしては、12月のいずれかの時点で、英議会下院がこの素案を受け入れるかどうかの採決をすることが示されているようだが、それまで一筋縄ではいかない荒れた展開が予想される。
交渉相手側のトゥスクEU大統領は、英国のEUからの離脱について正式に最終合意するため11月25日にブリュッセルで欧州理事会を開くことを公言した。それまでに全てのEU加盟国が、今回の合意案の内容を分析することになるという。果たして、この欧州理事会までに、EU各国が態度を決められるのかどうか? また、英議会が紛糾するのを横目に見ながら、すんなりと正式署名まで漕ぎつけることができるのかどうか? これらを見通せているとは、とても言い難い。
「合意なき離脱」は英ポンドにとって最悪のシナリオ
繰り返しになるが、英国のEU離脱は2019年3月29日が期限となる。議会での議決も経なければならないことを考慮すれば、時間は全く残されていない。合意なき離脱というのは、英国にとっても、英国の通貨ポンドにとっても最悪のシナリオである。
こうした政治的な不透明感の強まりに対し、市場はネガティブな反応を示している。11月15日の外国為替市場では英ポンドが一時2%程度下落した。16日の東京時間でもポンドは対ドルで前日比1.7%安水準の1ポンド=1.27ドル台後半で取引されている。ポンドは対米ドルで今年の最安値圏にあり、この水準を下回るようだと、1ポンド=1.25ドルが視野に入る展開となるだろう。中期的には、2017年初めにつけた、1ポンド=1.20ドルという安値を試すような事態もありうる。英ポンドの動きは、要注意である。
長谷川 建一
Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO