13日に提出期限を迎えるイタリア修正予算案だが…
今週は、欧州でのイベントにも注意を払っておきたい。
先ず、来年の予算案を巡ってEU内で軋轢が生じているイタリアについてである。先月作成した予算案を、財政赤字が対GDP比で大きくなりすぎるとして、EUからの批判を浴びたイタリア政府は、13日に修正予算案をEUへ提出する期限を迎える。
イタリアは、難民の取り扱いにおいてサルビーニ副首相兼内相がマルタ当局を非難、マクロン仏大統領とも意見が衝突するなど態度を硬化させており、これまで従ってきたEUのルールを無視して予算修正に応じないなどのリスクを市場は懸念している。
ブレグジット交渉…まとまらない英国、迫る期限
加えて、ブレグジットの交渉も見通せない状況である。メイ英首相率いる英政府とEUが離脱交渉で最終段階に近づいているとの観測が流れるなか、保守党のEU離脱支持者と議会で同党を支える北アイルランドの民主統一党(DUP)は、11日、英政府案を拒否すると表明した。与党保守党は、議会で過半数を持たないばかりか、与党内をまとめきれていない状況で、内憂外患といった状況である。
また閣内でも、メイ首相の提案に反対して、ジョンソン運輸担当閣外相が辞任し、足並みが揃わないことを露呈した。リスボン条約に従えば英国のEU離脱は2019年3月29日が期限となる。議会での議決も経なければならないことを考慮すれば、時間は全く残されていない。
1ユーロ=1.08米ドルも視野に?
また、ユーロ圏は実体経済の状況にも暗雲が垂れ込んできている。先週6日に発表されたユーロ圏総合購買担当者指数(PMI・10月)改定値は53.1(速報値52.7)と、2016年9月以来の低水準となった。景気見通しに関しては、一段と低迷して、2014年末以降で最も大きく落ち込んできている。要因としては、貿易摩擦悪化や関税措置に伴い輸出が減少していることや、前述の通りイタリアの予算案への懸念やイギリスのEU離脱という政治的な不透明感が影響している。
政治的にも経済的にもEUに関わる懸念は、ユーロに重しとなってきている。ユーロ・米ドル相場は、1ユーロ=1.13米ドルまで下落、心理的な節目まで押し込まれてきた。この水準を下回ってくると、ユーロはより下値を試す可能性が高まるだろう。この場合は、1ユーロ=1.08米ドルをめどに下落幅を拡大する可能性が高まることに注意しておきたい。
長谷川 建一
Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO