今週(11/20〜11/26)の国際マーケット展望。トランプ米大統領は16日、中国との貿易摩擦に関して、何らかの合意を期待させる発言を行った。一方、APECでは習近平中国国家主席とペンス米副大統領が激しく衝突。混乱は引き続き、首脳会談まで続くであろうことが予想される。先週出た米国経済指標を見ると、足もとの堅調ぶりに変わりはないが、英国のEU離脱に関する政治的状況には要注意である。

米中貿易摩擦…トランプの融和的発言、APECでの衝突

トランプ大統領は先週16日、中国が通商協議項目について回答リストを米国に送付してきたことに触れ、2670億ドル(約30兆1100億円)相当の中国製品に追加関税を課す準備は継続するが、中国は合意を望んでおり、準備の必要はないかもしれないと語ったことが報道された。このため、市場では、今月末にアルゼンチンで開催される予定の20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせて行う米中首脳会談で、何らかの合意がまとまることへの期待が高まった。

 

一方で、楽観は許されないことを感じさせるものとしては、先週開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議で、米国と中国が通商政策を巡って非難合戦を繰り広げたことである。APEC閉幕時に、首脳宣言を採択できない異例の結果となった。

 

演説で米国の一国主義に反対を表明した習近平中国国家主席に対し、ペンス米副大統領は、中国が不公正貿易に対応しないことや「一帯一路」構想を通じた新興国への経済的な支配強化を批判した。 ペンス副大統領は、従来から中国への批判的な立場を強めているが、かつての米ソ冷戦に米中関係を擬えるなど、対立姿勢を鮮明にしている。ペンス副大統領は、貿易摩擦についても、米国は貿易戦争の終結を急いでおらず、中国がやり方を改めるまで方針を変えるつもりはないと言明した。

米経済は引き続き堅調だが、英の政治状況に注意

さて、先週の米国経済指標を確認しておくと、米国経済の堅調ぶりを引き続き示唆する内容だった。米商務省が発表した10月の小売売上高は、前月比で0.8%増加と、市場予想の0.5%増を大幅に上回る結果だった。9月は0.1%減(速報値0.1%増)に、8月も同じく0.1%減(同0.1%増)に、それぞれ下方修正された。

 

 

基調的な消費需要の強さを測るのに用いられるコア売上高は、10月に前月比0.3%増加と事前の予想に及ばず、9月も0.3%増(速報値0.5%増)に下方修正された。やや、ばらつきはあるものの、今回の統計からは、米経済のメインドライバーである個人消費が10-12月(第4四半期)も増加を続ける可能性を示唆していると考えられる。

 

米連邦準備制度理事会(FRB)が発表した10月の鉱工業生産指数(10月)は、製造業で前月比0.3%増加と、市場予想の0.2%増を上回った。前月は速報値であった0.2%上昇から、0.3%増加へと上方修正された。5カ月連続での増加で、第4四半期も堅調に推移することが示唆される内容だった。足もとで、米国経済の堅調ぶりに変調はないと言えるだろう。

 

米中首脳会談までは、期待が膨らんでは萎むことが繰り返されるだろう。米中が通商協議を行っていることは、期待の持てる事実であるが、米中首脳会議次第という状況に変わりはなさそうだ。今週は、ファンダメンタルズに大きな変化がないなか、相場の方向感を見出せない展開が続くだろう。今週は欧州理事会の開催も視野に、気掛かりなのは、予断を許さない英国の政治状況(関連記事『英ポンド/米ドルが今年安値圏まで下落 EU離脱交渉の混乱受け』参照)であろう。

 

 

長谷川 建一

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO

 

 

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    本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

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