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FOMCで政策変更はなし… 「米経済指標」をどう読むか?

今週(11/3〜11/9)の国際マーケットレポートをお届けする。主だった米国経済指標は堅調な伸びを示しているが、順調に拡大を続けてきた企業業績は、利益見通しの段階で市場予想を下回る企業の割合が増えてきており、偏重の兆し。8日のFOMCでは予想通り政策の変更はなし。米国経済が成長し続けるかぎりFRBは利上げの継続をしていく必要があるが、市場も金利の上昇を懸念し続けるだろう。また、米中間選挙の結果を受け、貿易摩擦など政治的な側面からの市場の動きも予測していく。

主な米国経済指標は堅調だが、企業業績には変調も

まず、このところ発表された米国経済指標を確認しておきたい。

 

消費者信頼感指数(10月)は137.9で市場予想の中央値は135.9だった(前月速報値138.4は135.3に下方修正)。現況指数は172.8(前月は169.4)と2000年12月以来の高水準で、期待指数も114.6(前月112.5)と上昇して、これも18年ぶりの高水準である。「仕事が豊富にある」との回答から「就職が困難」との回答を差し引いた値は32.7ポイントで、これも2001年1月以来の差(つまり良い結果)と、雇用市場の良好さが際立つ結果だった

 

良好な雇用の伸びに支えられ、消費者の現状認識は非常にポジティブであるといえる。期待指数からも、景気がすぐに失速することはないと消費者が見ていることがうかがわれる。米国はこれからサンクスギビング、そしてクリスマスと、小売売上が一番大きくなる時期を迎えるが、信頼感指数の高さは、小売売上の伸びも予想させる。米国経済成長の力強い伸びが2019年の初めころまでは少なくとも続くだろう。

 

雇用統計(10月)では、非農業部門雇用者数(事業所調査、季節調整済み)は前月比25万人増で、市場予想を上回る増加となった。平均時給も前年同月比3.1%増で、2009年以来の大きな伸びを記録した。非農業部門雇用者数は三ヶ月平均で見ても215,000に達する。失業率(10月)も3.7%と、前月の記録的な低失業率は継続しており、雇用市場の力強さは、消費者信頼感指数とも符合している。

 

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米供給管理協会(ISM)が発表した非製造業総合景況指数(10月)は60.3と、記録的な高水準だった前月61.6からは低下したが、市場が懸念していたほどには落ち込まなかった。市場は、近いうちに米国経済が失速するという懸念をぬぐえないでいるが、米国経済の成長の足取りは、今年第4四半期に至っても、おぼつかなくなることはないだろう。

 

一方で、順調に拡大を続けてきた米国企業の業績には、一部で変調が見られる。S&P500株価指数の構成企業の利益は1-3月(第1四半期)と4-6月(第2四半期)には、約2割ほど増加してきていた。7-9月(第3四半期)も絶対水準としては、引き続き良好な決算となるだろうが、利益見通しの段階で、市場予想を下回る企業の割合が増えてきている。

 

また、相場を牽引してきたFANG銘柄にも、調整色が目立ってきた。10月25日に発表されたアマゾンの四半期決算で、業績が市場予想を下回ったことで、これまでの流れが変わるのではないかとの懸念が、一部で浮上している。

経済成長が続くシナリオでは、利上げの継続は必須

さて、8日に開催された米FRBの連邦公開市場委員会(FOMC)では、予想通り政策変更はなかった。利上げを実施した9月のFOMC以降の状況は以下の通り説明されている。

 

・労働市場は引き続き力強く、経済活動はよいペースで拡大している

 

・雇用の伸びはこの数カ月ならしてみると力強く、失業率は低下している

 

・家計支出は力強い伸びが続いている

 

企業設備投資の伸びは今年の早い時期に見られた急速なペースからは緩やかになった。インフレ率は2%付近にとどまっている。中長期的なインフレ期待には、変化ない。つまり、企業の設備投資にやや落ち着きが見られることだけは懸念であるものの、全般的には経済活動の持続的拡大が続くなか、インフレ率もコントロールできており、リスクはほぼ均衡していると見ているということである。

 

ただ、米国経済が、今のペースで拡大を続けるというシナリオを描いた場合には、FRBは利上げを継続していく必要がある。年内は12月に1回、そして来年に入っても2回の利上げを見込んでいることは、ドットチャートに示されている通りである。FRBは当然ながら、金利上昇が景気拡大を止めてしまうようなことは望んでいないし、あるあらゆる要因に目を配って、バランスを取った金融政策を目指しているが、市場は、金利の上昇が経済成長の足取りを阻んでしまうことを恐れるし、懸念し続けるだろう。

米中間選挙の結果…議決まで両党の歩み寄りが必要に

中間選挙の結果は、上院は共和党が多数を、下院は民主党が多数を占めることになった。議会が、共和党主導では動かなくなり、重要法案で上下両院の議決が分かれることもありうる状況である。つまり、両党の歩み寄りが必要となるわけで、これだけを考えると政策の実行までにより紆余曲折が予想される。議会の混乱をよそに、トランプ大統領が強硬姿勢を継続し、暴走するというシナリオも考えられないわけではない。政治的には不透明感は残るだろう。

 

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11月末に実現の可能性が浮上してきた米中首脳会談での劇的な合意による貿易摩擦解消シナリオも期待しないわけではないが、そう楽観的にリスクを取れるほど環境は改善していないのも事実であろう。株式は、方向感が出にくいのではないだろうか。一方で、米ドルの金利は上昇しやすい環境であり、要注意である。為替は、引き続き米ドルがジワリと買われていく展開を予想している。

 

 

長谷川 建一

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO

 

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO

京都大学卒、MBA(神戸大学)。 シティバンク日本及びニューヨーク本店にて資金証券部門の要職を歴任後、2000年にシティバンク日本のリテール部門で商品開発や市場営業部門のヘッドに就任。2002年にシティグループ・プライベートバンクのマーケティング部門ヘッドに就任。 2004年末、東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に移り、マーケティング責任者として活躍。2009年からはアジア・リテール戦略を担い、2010年は香港にてBTMUウエルスマネージメント事業の立ち上げに従事。 2013年よりNippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(ニッポン・ウェルス・リミテッド・リストリクティド・ライセンス・バンク/日本ウェルス)を創業し、COOに就任。2017年3月よりCIOを務める。

WEBサイト https://jp.www.nipponwealth.com/

著者紹介

連載香港発!グローバル資産防衛のためのマーケットウォッチ

本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

 

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