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至れり尽くせりの宅配サービス…値上げは当然
2017年、宅配便会社が約30年振りに次々に値上げを発表しました。このときの驚きは、今も忘れることができません。値上げのきっかけは、業界大手のヤマトホールディングスで賃金未払い問題が起きているという報道でした。
国土交通省の統計によれば、宅配便の個数は、バブルの頃に比べて、3倍以上増加しています。反して、従業員の労働環境は厳しくなる一方であり、労働の対価である賃金さえもないがしろにされてきたということになります。
日本に住んでいるのであれば、宅配便サービスを利用したことがないという人は極めて稀でしょう。不在時でも無料の再配達サービスがあること、その再配達時間まで細かく指定できること、常温だけでなく保冷状態で宅配してくれることなどサービスは至れり尽くせりです。
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さらには、街で見かけると配達員さんが挨拶をしてくれることもあります。こうしたサービスを廉価で受けることができるのは、おそらく日本だけでしょう。
利用者は、いつの間にかこれが当たり前だと思っていましたが、実はそれが「異常」であったということで、いま価格の見直しが行われるプロセスに入ったと私は考えています。
日本は「チョコレートの価格」も安すぎる
20年近いデフレを経験した日本には、このような「異常」がまだまだ沢山見られます。これもずっと申し上げていることですが、日本ではチョコレートの価格も非常に安くなっています。
ここ数年、スパークスを訪れるお客様や知人に、ゴディバと森永製菓のチョコレートのブラインドテストをしてもらいました。ほぼ同じ形をしたチョコなので、包装紙をとると見わけがつきません。
そして、「どちらがおいしいか」と聞くと、大体、半分がゴディバ、半分が森永と答えます。実は、この2つの商品のグラムあたりの価格を比べると、ゴディバの方が約8倍高いのです。
これまで学んできたバフェットさんやマンガーさん流にいえば、「ゴディバにブランド力がある」という話になるのかもしれません。菓子業界も、品質と価格のギャップが大きすぎるという認識を共有しており、新しい価値、例えば、機能性を訴求する商品などを市場に投入し、値上げに取り組もうとしています。
財布の紐が固い消費者を相手に、新しい価値を提供することを価格に転嫁しながら、実質的な値上げを図っています。
賃上げによる日本型資本主義で「異常」を脱するべし
日本経済が長期的に膠着状態に陥っているのは、日本の賃金がなかなか上がらないこともひとつの要因です。アベノミクスの恩恵を受けた企業の業績は好調で、企業が過去最高の現預金や内部留保を持つなかで、日本の労働分配率は米英独仏といった先進国に比べて低いままでした。一般国民の賃金上昇なくして持続的な成長はないと数年前から申し上げてきたのは、こうした理由からです。
幸い明るい兆しも出てきています。日銀が毎月発表しているサービス価格指数の推移をみると、冒頭申し上げた宅配便などの運輸業がけん引する形で指数が上昇基調にあります。今年夏・冬のボーナスも上昇基調にあり、平均年収も3%ほど増加すると予想されています。
この確率は消費者物価指数(いわゆる物価)の上昇を上回るようになってきています。最低賃金を引き上げる自治体も相次いでいて、企業から一般国民への富の分配気運も高まってきました。
政府も実質賃金の上昇を促すような減税を今こそ実施するべきではないかと思います。企業がさらなる賃上げを考えるような税制面でのインセンティブ政策を打ち出せば、さらにこの流れが加速するのではないでしょうか。
スパークスのコーポレートミッション「世界を豊かに、健康に、そして幸せにする」の実現のために、私たちも投資会社として、長いデフレという「異常」からの脱却に向けて、少しでも貢献したいと考えています。
(2018年9月7日)
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