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情報は、信頼できるメディアから得るだけで十分
今回は、「実践派エコノミスト」是川銀蔵さん(1897-1992)がよく言っていた「目を通すのは日本経済新聞だけや」を、私流に考えてみます。「最後の相場師」とも呼ばれ、80代まで現役投資家だった是川さんは、日本セメントや住友金属鉱山などへの株式投資に成功し、巨万の富を得たと言われています。スパークス創業後、新幹線熱海駅で最晩年の是川さんを偶然見かけた私は、思わず近づきご挨拶してしまったほどです。
彼がよく言っていたのが、「日経新聞だけで、世界と日本の経済情勢はわかる。ただ活字を通して、次にどういう現象が起こるかを考えなければならない」という話です。私もマスメディアという媒体を通して得る情報は、選別した信頼できるメディアを読むことだけで十分なインスピレーションを得られると思っています。
新聞から広がる数々のインスピレーション
こういった観点で新聞に接していると、最近の日経の記事からも、数々の変化と考えるヒントが私の目に飛び込んできました。
「世界的猛暑」で不作の小麦価格は、ここ数年の底値から約55%価格が上昇し、3年ぶりの高値圏にあります。レーズン価格の高騰が要因で、山崎製パンなどは7月に3年ぶりの値上げを発表したばかりですが、今度は小麦価格の上昇で、さらなる値上げを強いられるのではないでしょうか。
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パンだけではありません。うどんも小麦粉からできています。それでも、駅前の立ち食いそば屋さんのかけうどんの値段は300円、今のところ、値上げの気配はありません。安くておいしい店は、いつも消費者に人気です。
しかし、仮に原料価格の上昇に伴った価格転嫁ができず、そのしわ寄せが働いている人たちの賃金に影響を及ぼす悪循環が起きているのであれば、昨年度の宅配便の給与未払い問題などのように、飲食業界でも労働分配をめぐり同じような問題が露呈する可能性があるのではないでしょうか。ふと、そんなことを考えました。
また、「中国国有企業の経営効率は低下」しています。かつてバフェットさんが投資し利益を得た中国石油天然気(ペトロチャイナ)のROE(株主資本利益率)は2%を下回っているそうです。
私は21世紀に入ってから、世界の機関投資家の資産配分は、米国、中国を軸とするアジア、新興国台頭による需要増大を見込んだコモディティや不動産の3つに分散されてきたと思っています。
しかし、リーマンショック時から、果たしてこの資産配分で良いのかという疑問が、機関投資家の頭をもたげたまま、まだ正解が見つからない状況が続いています。ここに来て、中国国有企業の経営効率が低下してしまっているということは、中国に投資する合理性がなくなってきていることを意味するのかもしれません。
一方で、日本企業のROEは年々上昇し、2017年度には初めて10%台に乗せました。日本企業が保有する現預金も2017年度末で過去最高を更新し、バランスシートは極めて健全です。
より安全で堅実なリターンを求めて国境を越えて動く巨額マネーが、日本に向かい始める「裁定(正常化)プロセス」が、いよいよ本格化してもおかしくないのではないかと、日経の記事を読みながら改めて考えました。
このように、信頼できるメディアだけを題材に、世界と日本の経済情勢を展望しながら考えるヒントを見つけていくことができると思います。
1,000兆円の預貯金が動き出すとき
最後に、先日、メガバンクの若手行員らと懇談する機会をいただき、改めて、日本の預金金利の低さに驚きました。定期預金は2年預けても10年預けても0.010%、普通預金に至っては0.001%です。これでは100万円が2倍になるのに7万2000年という天文学的な時間がかかります。こんな預貯金に1,000兆円もが眠っていることは、やはり「異常」なことで、正常へと回帰するきっかけを探すヒントも、毎日、信頼できるメディアの情報を注意深く読んでいくことで見つかるような気がしました。
リアルな投資を行っていくためには、こうした日々の情報が非常に重要な意味を持ちます。スパークスでは、自らで得た一次情報や信頼できるメディア情報から経済の今後を予測し、投資の未来を創り出していきたいと考えています。
参考図書
相場師一代 著者:是川銀蔵 小学館文庫 1999年
相場師入門 -株のプロを目指せ― 著者:青野豊作 東洋経済新報社 2000年
(2018年9月14日)
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