今週(10/27〜11/2)の国際マーケットレポートをお届けする。11月6日に投開票を控えた米中間選挙。「民主党勝利ならば株価は下がる」と息巻くトランプ大統領だが、実際のところは? 選挙戦の途中経過、選対とも見られる矢継ぎ早のトランプ流政策の影響などを踏まえつつ、選挙結果が市場に与える影響を予測していく。

米中間選挙…「与党共和党」が不利との見方も

米中間選挙は11月6日の投開票を控え、選挙戦最終盤である。

 

上院の定数は100議席だが、今回は3分の1の33が改選の対象で、ミシシッピ州とミネソタ州で補選が同時に行われるため、35議席を争うこととなる(残りの65は非改選)。このうち、共和党は非改選議席が42で改選議席は9議席しかない。民主党は非改選議席が23議席しかない一方で、改選議席は26議席という状況である。

 

一見、共和党にとっては9議席を取れば過半数を維持できるので容易にも見え、共和党が上院の過半数を死守するとの見込みも伝えられているが、改選対象となる多くの上院選挙区で接戦が見込まれており、予測は困難を極めている。

 

全435議席が改選を迎える下院では、与党共和党か野党民主党のどちらが過半数を取るかが焦点だが、下院では民主党がやや優勢といわれている。特に、与党共和党が長年「牙城」として見込んできた選挙区で、予想外の接戦を強いられているようだ。

 

 

こうした選挙区では、野党民主党が米国の分断をあおるトランプ大統領への反発を追い風に攻勢を強めているという要因のほかに、ヒスパニック(中南米系)やアジア系の人口が増え、トランプ政権への支持率が高い白人の人口割合が相対的に減るという構造的な変化が、選挙の流れを変えかねない要因である。

 

また、通常、下院では現職有利とされるが、共和党下院には、今回現職議員に多くの引退があったために、新人候補が多く、これも共和党不利に働いている模様である。

トランプ流の政策に「中道派の票」がどう動くか

トランプ大統領は、上下両院での与党共和党の過半数維持を目指して、精力的に選挙活動のための遊説に全米を飛び回っている。そして、中間選挙を視野に、トランプ流の政策を矢継ぎ早に打ち出してきた。

 

最高裁判事に保守派のカバナー氏を送り込むことに成功し、右派宗教団体や保守派の支持取り込みを図ったほか、保護貿易主義を強め、米国内の製造業の庇護者としての姿勢をアピールし雇用の確保を訴えている。

 

外交でも、ロシアとの中距離核弾頭削減条約を破棄してロシアとの癒着を真っ向から否定してみせ、巨額の貿易黒字を理由に中国と戦う強硬姿勢を勇ましく演出している。加えて、中米から大規模に難民がアメリカを目指していると伝わると、国境に米軍5200人を急派して入国を阻止するとアピールし、国境に接する州の保守派を取り込もうとしている。

 

民主党も、カバナー判事の最高裁入りという事態を許した失態を危機感に訴えを強め、トランプ大統領に対抗姿勢を強めて、中道票の取り込みを図っている。

 

ただ、トランプ大統領が米国の分断を煽るような政策を訴えれば訴えるほど、中道派を取り込みにくくしているし、民主党が危機感からリベラルな主張を訴えるほど中道派の迷いを誘うことも事実で、態度を明らかにしていない有権者がどれほど投票に行くのかによって選挙の結果が左右されるという2年前の大統領選挙のときと同様の状況である。

市場への影響 民主党勝利なら不透明感は否めないが…

市場に与える影響としては、民主党が下院を制すれば、トランプ大統領の政策の自由度が狭まる可能性が出てくるため、不透明感が増す可能性は否定できない。

 

実際、トランプ大統領は、自分が大統領になってからは、相当に株価は上昇したが、民主党が中間選挙で勢力を増せば、株価は下がると攻撃している。ただ、貿易摩擦を仕掛ける強気のトランプ大統領がこれまでほど保護主義的な政策を取れないとなれば、妥協の余地も生まれるのではないかとの期待もある。

 

足元では、中国中央テレビ局が、習近平中国主席の20カ国・地域(G20)首脳会合出席に際し、トランプ大統領と貿易などの問題について協議することに前向きだと伝えた。トランプ大統領が中国との通商合意に向け草案作成を指示したとの米報道もあり、一転して妥協への期待も高まっている。

 

米国企業業績にもひところの勢いがなく、米中貿易摩擦が影を落とし始めたとの懸念が強まっているだけに、米中両国の対立緩和は、望ましいシナリオだろう。中間選挙を控え、市場のモメンタムが改善に向かうのか、不透明感から懸念が強まるのか、分岐点の11月となるのではないだろうか。

 

 

長谷川 建一

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO

 

 

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    本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

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