今週(10/30〜11/5)の国際マーケット展望をお届けする。10月29日、人民元は1ドル=6.9575元と2016年12月以来の水準まで下落。国家プロジェクトである一帯一路構想を実現するためにも、中国政府が1ドル=7元の水準を許容するとは予想しがたく、いよいよ「米国債売却」のシナリオが現実味をおびてきた。中国による米国債売却が実行された場合、10年米国債利回りは0.3%程度上昇するという推計もあり、株価への影響も懸念される。

中国政府が死守したい「1米ドル=7人民元」の水準

人民元は10月29日、米中貿易摩擦の影響拡大や中国経済停滞への懸念から、為替市場で下落圧力が強まり、一時1ドル=6.9575元と、2016年12月以来の水準まで下落した。

 

先週は、米財務省が、中国を為替操作国として認定しなかったことや、中国政府高官が景気支援のための政策発動をほのめかす発言をしたことをきっかけに持ち直していたが、再び中国経済への懸念は強まり、人民元に売り圧力がかかっている。

 

市場では、中国政府が、1米ドル=7人民元という水準を下回る人民元の下落を容認するかどうかが注目されている。繰り返しになるが、この水準は、2016年に中国が多額の為替介入を実施して守りきった水準だからである。

 

中国政府は、今年7月に北京で開催された「2018国際通貨フォーラム」でも、人民元の国際化は(一帯一路構想で開発対象となる)シルクロードに沿って前進する必要があり、人民元は諸国のアンカー通貨として、安定した通貨として選択されることを目指し、価値の安定化装置の役割を果たすとしている。

 

 

筆者は、引き続き、この水準を割れて人民元が下落することを中国政府が許容するとは予想していない。中国政府にとって、人民元の国際化は長年掲げてきた重要な政策目標であり、一帯一路構想も、中国をあげての国家プロジェクトとなっている。他国が人民元を保有するインセンティブを失わせる人民元の価値の下落を、中国政府が容認すれば、人民元保有に対するリスク認識が広がり、資本流失にもつながる怖れが出てくる。そうなると、多額の資本を必要とする一帯一路構想にも長期的なダメージを与えかねない。

米国債売却のシナリオで、利回りはどこまで上昇するか

そうなると、やはり懸念されるのは、人民元への下落圧力が強まるなか、1米ドル=7人民元という水準を防衛線として、中国政府が人民元の防衛手段に出ることではないだろうか。

 

2016年同様に、中国が保有する米国債の一部を売却して、米ドルを為替市場で売却して人民元を支えることが懸念される。ちなみに中国の外貨準備資産は3兆1,100億ドルにのぼる。このうち1兆1,800億ドルを米国債が占めると推定され、日本と並んで、米国債の保有高は大きい。

 

9月のFRBの利上げ後に一旦3.25%にまで上昇した米国債10年利回りだが、先週末は、3.06%と落ち着きを取り戻している。しかし、人民元防衛・米国債売却に中国政府が動いた場合、需給関係に直接影響する米国債市場・利回りには少なからぬ影響を与える。一部の試算では、中国が米国債保有を縮小した場合、10年米国債利回りは、30ベーシスポイント(0.3%)程度、上昇することになるという推計もある。

 

この場合、やや不安定な動きを見せている株価にも影響は必至となるだろう。トランプ大統領が仕掛けた貿易摩擦は、既に、追加関税による物価上昇懸念や企業業績懸念を増大させているが、長期金利も上昇となれば、思わぬしっぺ返しということにもなりかねない。

 

今週は、他にも、米国企業業績の発表も多く、米国経済の先行きを判断していく重要な節目になるかもしれない。不安定な株価の動きの続く株式相場の方向感を決定づけることになる可能性もある。

 

 

長谷川 建一

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO

 

 

本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

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