今回は、税金を払った方が得なケースとともに、小さな会社にとって有益となる経費について見ていきます。※本連載は、冨田健太郎税理士と葛西安寿税理士の共著、『小さな会社が本当に使える節税の本』(自由国民社)から一部を抜粋し、資本金1億円以下、従業員数50人以下の小さな会社を経営する社長のための、合理的でリスクの少ない節税法を紹介します。

無駄な経費の計上は資金繰りを悪くする

やってはいけない節税策の典型が、「経費の垂れ流し」となってしまうものです。節税は会社の資金繰りをよくするために行うものですが、無駄な経費を使えばそれだけ資金繰りも悪くなります。であれば、税金を払ったほうが得だったというケースも多く見られます。

 

取り戻されない「本当の節税策」以外で節税になるものはありません。税金を支払うのは無駄なことに感じるかもしれません。しかし、無駄な経費を使うことは税金を支払うよりも、もっともっと無駄なことです。必要のない経費を計上して利益を圧縮しても、会社にとって何らよいことはないということを認識しておいてください。

 

無駄な経費を払うくらいなら給料を上げよ

税金を支払うのは無駄なことに感じるかもしれません。しかし、無駄な経費を使うことは税金を支払うよりも、もっともっと無駄なことです。必要のない経費を計上して利益を圧縮しても、会社にとって何らよいことはないということを認識しておいてください。

 

無駄な経費を使うのであれば、従業員の給料や賞与に反映したほうがよほど効果的です。給与を増やすことで従業員のモチベーションや会社への忠誠心がアップし、結果として会社の業績がよくなっていくことは十分に考えられます。給料を上げると将来的に不安だというのであれば、福利厚生を充実させるのもよいでしょう。無駄に経費を使うくらいであれば、従業員に還元するのが会社のためによい選択肢となるでしょう。

経費を計上しないほうが会社に利益が残る

会社を大きくするにはどうすればよいのでしょうか。答えは簡単で、利益を積み上げていけばよいのです。利益が増えることで投資も増えて、結果としてリターンが大きくなり、会社の規模は大きくなっていきます。

 

利益が増えるということは、当然、税金も増えることになります。多額の税金を払ってしまったら会社が大きくなるのは無理だと思われる方もいるかもしれません。しかし、それは誤りで、税金を払わないと会社は大きくなりません。

 

税金は利益に対して課税され、かつ利益の金額を超えるほど課されることはありません。法人税の実効税率は最大で35%程度ですので、いい換えると65%の利益は残すことができるのです。これを履き違えて、税金を減らすために費用を増やした場合はどうなるのでしょうか。シミュレートしてみましょう。

 

下の図を参照してください。

 

ご覧の通り、会社に残る利益に1300万円もの差が生じます。たしかに、税金は700万円ほど少なくなっていますが、そもそもの利益が少なくなってしまいます。

 

無駄な損金を増やすよりも投資を早めることが節税に

税金は、単純に「経費×税率」分しか差し引かれません。これが必要な経費であれば問題ないのですが、そうでないのであれば、「支出する意味がなかった」ことになります。

 

会社を大きくするためには、投資→回収→投資を繰り返していく必要があります。そして、回収分の利益に対しては税金が課せられます。

 

可能な税金対策としては、投資を早めることです。早く投資をすることで回収も早くなるので、結果として会社は大きくなります。必要な投資を、必要な時期にしていくようにしましょう。 

 

 

冨田 健太郎

税理士


葛西 安寿

税理士

 

本連載は、2018年6月15日刊行の書籍『小さな会社が本当に使える節税の本』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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