決算直前の大きな買い物「経費の前倒し」に節税効果はあるか

前回、小さな会社において、無駄な損金はデメリットでしかないというお話をしました。第2回では、より具体的に、決算前に行う資産購入の注意点と「期ズレ」のメリット、デメリットについて、『小さな会社が本当に使える節税の本』(自由国民社)から一部抜粋し、ご紹介します。

期末月の購入品による節税効果はないに等しい?

「決算の駆け込み需要」という言葉があります。考え方としては「経費の前倒し」と同じなのですが、モノの場合はまとまった金額になるので、インパクトも大きくなります。飲み会であれば1回で数万円しか経費になりませんが、モノの場合は百万円単位で経費になる場合もあるでしょう。そういう意味では、理にかなっている手法といえます。

 

ただし、不要なものを購入しても何の意味もありません。ただ単に経費を垂れ流しているのと、何ら変わりありません。であれば、買わないほうが余程いいでしょう。

 

よく見られるケースにパソコンの購入がありますが、パソコンは大抵1台か2台は所有しているでしょうし、今すぐ使えなくなるようなことも少ないでしょう。それであれば、無理して当期に購入せず必要な時期に購入したほうがよいでしょう。いずれにせよ、購入した年度で経費にできますし、期ズレのため税額にも影響は与えません。

 

資産を購入する際にも注意しなければならない点があります。購入価格が10万円以上の場合、基本的には一括で経費にすることができません。減価償却といわれる方法により数年間かけて経費にしていくことになります。

 

そして、減価償却は月割で計上するので、期末日の属する月に購入したような場合は1年分ではなく1カ月分しか経費にできません。たとえば4年で経費にするパソコン24万円を期末に購入した場合、その年度の経費にできる金額は、「24万円÷4年÷12カ月」となり、わずか5000円しか経費にできないことになります。無理してパソコンを購入して5000円しか経費にできないのであれば、効果はないに等しくなってしまうので注意してください。

 

一方、購入価格が30万円未満であれば一括で経費にできることもあるので、表を参照してください。

無駄な経費の前倒しが資金繰りを悪化させることも

未来の経費を先取りして当期の経費にすると、翌期以降その経費を計上できないため、結果としてその期間の納税額が変わらないことを「期ズレ」と言います。期ズレは手軽に当期の納税額を減らすことができる手法ですが、期ズレはいつかは取り戻されます。一時に多額の経費を計上できるのはとても魅力的ですが、最終的に税金は1円も減っていません。

 

とはいえ、期ズレにはメリットもあります。ここで期ズレのメリット・デメリットを確認していきましょう。



期ズレのメリット

 

①当期の税金を減らすことができる

 

②保険を使えば多額の経費を計上できる

 

③2カ月後に支払う法人税を圧縮できる

 

期ズレのデメリット

 

①最終的には1円の税金も減らすことができない

 

②税務調査時に印象が悪くなる可能性もある

 

③資金繰りが悪くなる



期ズレは、「目先の税金を減らせる」という点が精神衛生上よいと思います。必要な経費や資産の購入であれば先取りしてしまってもよいでしょう。ただし、先取りしてもよいかどうかは入念に検証してください。

 

また、保険については、出口戦略がある、毎年の利益にバラツキがあるような会社の場合はその効果を最大限に活かすことができますが、そうでない場合はただ保険料を支払うだけになってしまいます。自社の状況と保険商品の内容をよく勘案してから加入するようにしてください。



期ズレを取っても取らなくても、最終的に支払う税金は同じです。無理に期ズレを取りにいくのはおすすめできません。また、払った金額以上に税金が少なくなることはないので、結果として資金繰りは悪化します。資金繰りをよくするための節税のはずが、かえって資金繰りを悪化させていたのでは本末転倒です。

 

 

冨田 健太郎

税理士


葛西 安寿

税理士

 

税理士

複数の上場企業の経理部、大手専門学校の講師、会計事務所および個人事業を経験して独立開業。開業後は、オーナー企業や個人事業者の税務・会計、コンサルティング、講座講師等をしながら、 WEBでの情報提供にも注力している。自身が運営するサイト「勘定科目大百科」は月間20万PV以上、また、 大手税理士検索サイト税理士ドットコムの税理士ランキングで1位も獲得している(平成29年8月18日現在)。東京税理士会上野支部税務支援対策部委員。

著者紹介

税理士

青森、宮城、東京の3つの税理士事務所および税理士法人に12年にわたり勤務。零細企業から上場企業までの法人税申告を行うとともに、医療法人の申告や相続税等の資産税業務まで幅広く業務をこなす。独立後は、いち早くクラウド会計を取り入れ業務を拡大するとともにもうひとつの柱として相続税業務に注力している。その他、医療法人の監事、既存税理士のいる会社とのセカンドオピニオン契約、保険外交員向けセミナー、執筆等、多岐にわたり活動している。

著者紹介

連載小さな会社・中小企業で使える「とっておきの」節税策

本連載は、2018年6月15日刊行の書籍『小さな会社が本当に使える節税の本』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

 

 

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