原則があれば例外があるのが世の常。実は、例外として消費税を少なく納税できる方法があります。第8回では、『小さな会社が本当に使える節税の本』(自由国民社)から一部抜粋し、消費税を少なく納税できる「簡易課税制度」について、税理士が解説します。

赤字でも消費税を納税するケースがある

消費税の納税額は、課税売上から課税仕入(課税売上割合を加味)を控除して算定します。そうすると、「赤字の場合は消費税を納税する必要はないのか?」と思うかもしれませんが、赤字でも納税するケースがあります。その原因となる代表格が「給与」です。

給与は消費税の非課税項目であるため、課税仕入とすることができません。したがって、給与を含めないで赤字であれば、払い過ぎた消費税を還付してもらえることにもなります。しかし、通常は給与を含めないでも赤字になるということはまずないので、納税するケースが多いでしょう。

給与の比率が高ければ簡易課税制度での申告が有利

原則があれば例外があるのが世の常で、例外として、消費税には「簡易課税制度」というものがあります。課税売上高−課税仕入高」がゼロ超の場合は納税、ゼロ未満の場合は還付される計算方式を「原則法」といいますが、簡易課税の場合、概算の仕入率を使って納付する消費税額を算定します。仕入率は業種によって異なり、具体的には次のとおりです。

第一種事業(卸売業)……………………90%
第二種事業(小売業)……………………80%
第三種事業(製造業等)…………………70%
第四種事業(その他の事業)……………60%
第五種事業(サービス業、保険業等)…50%
第六種事業(不動産業)…………………40%

たとえばサービス業を営んでいる場合、「課税売上高に係る消費税額×50%」が納税額となります。給与の比率が高いような場合は、原則よりも簡易課税で申告したほうが有利になるケースが多いでしょう。まずは、自社における課税仕入の割合を算出して、上記のみなし仕入率と照らし合わせてみて、簡易課税のほうが有利そうであれば、簡易課税制度を選択したほうがよいでしょう。

簡易課税を受けるためのふたつの条件とデメリット

ただし、簡易課税制度を受けるには、条件があります。

 

ひとつめは基準期間における課税売上高が5000万円以下であることです。ふたつめは、簡易課税の適用を受けようとする事業年度開始日の前日(=前事業年度の末日)までに、消費税簡易課税制度選択届出書を提出しなければならないことです。

 

また、簡易課税にはふたつのデメリットがあります。

 

ひとつめは、一度簡易課税を選択したら2年間は簡易課税を続けなければならないという制度です。つまり、今年は簡易、来年は原則とはできないことになります。

 

2つめは、必ず納税になるということです。売上高に対して仕入率を乗じて納税額を計算する仕組み上、還付を受けることはできません。設備投資をした場合などは多額の課税仕入が生じますが、簡易課税ではその分の課税仕入を控除することができないので、設備投資の予定がある時期については、簡易課税の適用を受けないほうがよいでしょう。

 

ちなみに、簡易課税をやめる場合は、やめようとする事業年度開始日の前日までに消費税簡易課税制度選択不適用届出書を提出する必要があります。

 

 

本連載は、2018年6月15日刊行の書籍『小さな会社が本当に使える節税の本』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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