建築基準法の「接道義務」を果たしていることが大前提
土地の接道状況や形状も資産性の評価を左右します。購入を検討するのであれば、整形地を検討しましょう。まず大前提ですが、建築基準法の接道義務を果たしている土地であることです。接道義務とは、幅4m以上の道路に2m以上、その土地の敷地が接している義務のことです。接道義務を果たしていない土地は資産性が大きく損なわれます。接道義務を果たしていない物件は、一度、取り壊したら二度と同じ条件で建築することができない再建築不可物件となります。再建築不可物件には基本的に融資が付かないので、流動性は悪くなります。
整形地とは正方形や長方形の土地のことで、土地の利用価値が高いので土地自体の資産性も高いといえます。一方、不整形地は、幅4m以上の道路に2m以上土地の敷地を接しなければいけないという接道義務を果たすために、まるで旗のように敷地を延長した土地形状である旗竿地が有名です。それ以外にもL字、三角形の土地、崖地や傾斜地など整形されていない土地のことをいいます。基本的に中古で不整形地の物件は望ましくないとされています。
例えば、築20年の木造アパートの場合、建物の評価はほぼゼロになってしまうため、土地自体の資産性が物件の資産性を表すことになります。ところが、土地の評価が低ければ、物件の評価も低くなります。もちろん、融資も付きませんし、売却するのも難しくなってしまいます。
しかしながら、アパートやマンションを不整形地に建てるというのはよくあることで、収益物件の場合、土地条件はよくないことが多いのです。
なぜならば、土地に建築されるアパートやマンションが面積が同じであれば、取れる収益は同じだからです。これは土地が整形地であろうが、不整形地であろうが関係がありません。土地は限りなく安いほうが儲かるからです。
土地の形状が悪く車は入れず、日当たりも悪い。東京都心でもそんな土地にアパートが建てられているのをよく見かけます。しかしながら、そういうアパートでも低収入層が住んでくれるかもしれない、そういう思いで建てられている物件も少なくありません。
一方、融資が付きにくい土地の筆頭は崖地や擁壁(ようへき)がある土地です。神奈川県の物件に多いのが崖地や擁壁です。崖地とは、宅地として使用できない斜面部分のことです。自然にできた地形のものもあれば、宅地の造成で切土や盛り土されてできたものもあります。
擁壁とは、宅地の土砂が崩壊することを防ぐために設けられた崖地などを、ブロックで補強した壁のことになります。2006年の建築基準法の改正で擁壁に関する基準が強化され、2006年以前の擁壁は既存不適格になっているともいわれています。擁壁がある土地は資産性が低いため十分検討が必要です。
ポイント1 道路が不動産の資産価値に影響を与える
不動産と道路の関係は切っても切れない関係にあります。なぜならば道路の種類や土地の接道状況によって、その不動産の価値が大きく左右されるからです。建築基準法では、幅4mの道路に2m以上、土地が接していない場合は再建築不可物件になるとされています。これを接道義務といいます。
こうした規制がある理由は、建物と道路のスムーズな出入りを行うことによって消防車などの緊急車両が通りやすいようにするため。建物の前面道路を規制することによって建物の防災体制を確保しているのです。ちなみに、この接道義務は、都市計画区域や準都市計画区域のみで生じる義務です。都市計画区域や準都市計画区域以外では、土地が道路に2m以上、接していなくても再建築不可にはなりませんが、賃貸経営向きの土地かどうかは難しいところです。なお、再建築不可物件とは、一度、取り壊したら、接道義務の要件が満たされない限り、その土地に新たに建物は建てられない物件を指します。
気をつけなければいけないのは、通称「42条2項道路」(建築基準法第42条2項より)、「みなし道路」といわれる、建築基準法が施行された時にすでにあった幅員が4m未満の道路のことです。現状では道路として認められていますが、古い街並みが残っているところに多い道路で、敷地のセットバックにより、将来的に4mの幅員を確保することが前提になっています。このような物件は価値が低いとされています。
ポイント2 不整形地にある道路には要注意
不整形地とは、文字通り整形されていない土地のことです。具体的には、正方形や長方形ではない旗竿地や三角形などの土地になります。不整形地の通路部分は道路に接している間口が2m以下になっていることが多いので、物件を調べる時には、きちんと接道義務が果たされているのか調べておく必要があるでしょう。
こんな事例があります。旗竿地にL字型の通路がある収益物件で、物件への入口の通路は2mの幅が確保されていて、4mの道路にきちんと接していました。一見すると問題のないような物件に見えますが、実は問題がありました。というのも、接道している道路の先が細くなっていて、接道している地面が2m未満になっている箇所があったのです。接道義務が果たされていない物件なので、もちろん、このような物件は価値が低くなります。
また、接道している部分はきちんと条件を満たしていても、途中で幅員が狭くなったりするケースでも接道義務を果たしていないとされます。現地調査で、きちんと接道義務を果たしているかどうかをメジャーで調べるというのは当然ですが、見た目だけでは判断することが難しいところもあるので、重要事項説明書に書かれている敷地と道路の関係の項目はきちんとチェックしましょう。
ポイント3 位置指定道路にも注意が必要
分譲地のような広大な土地を分割して造った物件の道路も要注意です。このような土地は、既存の道路だけでは建築基準法の接道義務を満たすことは難しいとされています。そこで、行政庁に指定してもらう道路のことを位置指定道路といいます。通常は、行政庁に指定した通りに道路が造られています。しかし、1965年以前に造られた位置指定道路の場合、申請内容と実際に造られた道路が異なっていたり、建て替えなどで道路の境界が異なっていたりするケースがあります。このようなケースでは、物件の資産価値が落ちることがあるので注意が必要です。
ポイント4 登記簿を閲覧しておこう
物件の問題は販売図面を見ただけでは見えてきません。専門家に依頼するのも一つの手ですが、法務局に訪れて登記簿を見るというのも問題を回避する方法の一つでしょう。
登記簿は誰でも閲覧することができます。ただし、登記簿を閲覧するためには、土地の配置番号である地番と建物の配置番号である家屋番号が必要になります。住所だけでは調べたい物件を検索することができないのです。
地番を調べるためには、予め所有者に聞くのが手っ取り早いのですが、購入検討段階では、中々難しいものです。グーグルマップなどで購入しようとする物件の配置を覚えて、公図と呼ばれる地番が振られた地図を見て、地番を検索しましょう。公図を調査すれば、土地の形状もわかりますし、道路と土地がどのような状態で接しているのか、接道義務が果たされているのかを調べることができます。
「都市の域内総生産」では、東京は世界トップの経済圏
土地の価格は社会情勢や経済情勢によって左右されることが多いので、そうした影響が少ないエリアで購入を考えたいものです。社会情勢や経済情勢で急激に土地の価格が下がったりしないのが、東京経済圏となります。
アメリカのシンクタンクであるブルッキングス研究所が2015年に世界の都市の域内総生産GRP(Gross Regional Product)の順位を発表しました。GDPや人口推計は2008年に国連が算出しているものを使用し分析したところ、世界で最もGRPが高い都市が東京であるという結果になりました。
国連データによる推計で、東京に次いでGRPが大きかったのはニューヨーク。次にロサンゼルス、シカゴ、ロンドン、パリと続きます。 ところが、東京経済圏は、2008年だけではなく、2025年の推計でも1位になっています。世界的にも見ても東京は今後も経済成長が予測されるエリアと言えるでしょう。なお、国連のデータをもとにした人口推計でも東京経済圏は、微増すると推計されています。
これには理由があります。今後、人口減少がこのままのスピードで進行すると、行政サービスの質、利便性、就職などを考えると地方と東京経済圏の格差はさらに広がっていくと考えられ、結果として地方から東京経済圏に移動してくる人が増えてくると推定できるからです。
例えば、2015年の国勢調査を見ると、ほとんど全ての道府県から2010年から2015年で人口が減少しています。
増えているのは、東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県・愛知県・滋賀県・福岡県・沖縄県だけです。埼玉県・千葉県・神奈川県については、それぞれ人口は7万人増えているのですが、人口増加率は1%程度といわれています。他の県も同じような増加率で、沖縄県だけが2・9%で突出しています。
政令指定都市や県庁所在地での人口増加率を見ても微増です。例えば、福岡市は5・1%、川崎市や仙台市が3・5%、さいたま市が3・4%、札幌市は2%、名古屋市は1・4%です。ところが、東京都は2010年から2015年の5年間で約35万人増えています。23区だけでも32・7万人増加しているのです。
こうした傾向は2000年以降に強くなっているといわれています。東京集中が加速しているのです。
東京経済圏に移動してきた人たちが賃貸に住むかどうかは別として、少なくとも人口は増えます。これは逆にいえば、今まで地方に住んでいた人たちがいなくなるということになるのですから、地域経済が縮小していくことになります。地域経済が縮小することになれば、入居需要や家賃収入に影響があるのは火を見るよりも明らかです。こうして物件価格にも大きな影響が出てくるでしょう。
日本全体のGDPを見ると中国に追い越されてしまっていますが、GRPという尺度で見ると、東京は世界でもトップの経済圏なのです。 もちろん、経済成長があれば入居需要も旺盛ですから、土地の価格も下がりにくいと予測することができます。
長渕 淳
株式会社ファミリーエージェント 取締役社長