今週(10/23〜10/29)の国際マーケット展望をお届けする。米財務省による為替報告書や、GDPの伸び率鈍化の影響を受け、人民元・中国株とも先週末まで下落していたが、中国支援の支援表明を受け、週明けに反発した。内需主導の経済へ移行したい中国だが、来年に控える米国からの追加制裁の前に下方リスクをどれだけ減らしておけるかが注目される。

人民元・中国株は週明け上昇…中国政府の支援表明受け

人民元は10月18日、1ドル=6.9395元と、2017年1月以来の水準まで下落した。前日17日に米財務省が発表した「為替報告書」では、中国を為替操作国として認定することは回避したが、報告書では異例となる分量を割いて中国が持つ対米貿易黒字への懸念が記されていたことや、中国が為替介入をした場合にも何らの開示をしないことについて遺憾の意が表明されたことから、市場での人民元売りの圧力が強まった。

 

また、翌19日発表された中国の7-9月(第3四半期)国内総生産(GDP)は前年同期比6.5%増と、市場予想(6.6%増)を下回った。今年4-6月の6.7%成長からも伸びが鈍化し、2009年初め以来の低い伸びという結果である。米中貿易摩擦の長期化により、中国株式相場には下落圧力が強まっている。

 

一方で、中国政府は、市場の動揺を鎮静化しようと動きを見せており、先週末から中国政府高官が相次いで市場を支援する発言をしている。

 

劉鶴副首相が「中国の民間企業の発展を支援する」と述べたほか、国務院もウェブサイトで「20日に開催した政策当局者会合で、経済の健全な発展を促進する措置を前倒しにすることが検討された」ことをあえて掲載している。新華社通信も21日、習近平国家主席のコメントとして、「党中央委員会は民間企業の発展に引き続きコミットしており、これが一貫した政策だ」と民間企業への「揺るぎない」支援を表明したと報道した。

 

一連の中国政府の支援表明を受けて、週明けは人民元・中国株とも上昇に転じ、週明け22日の上海総合指数は、午前中だけで、前週末比3.1%高の2629.90と反発。習主席の支援表明に加え、中国当局も個人所得税の減税案を発表したことが株式の買戻しを誘った。人民元も、1米ドル=6.932近辺で取引され、値を戻している。

来年の制裁発動前に下方リスクをどこまで減らせるか?

だが、市場のセンチメントが本格的な回復に転じたとはいいがたいのではないか。これまでも中国政府は追加財政支出を公表、人民銀は緩和策に転じて市場支援をしてきたが、6月以降はそのなかで中国株安にも人民元安にも歯止めは掛けられなかった。当面、市場は、中国政府の政策の内容を見極める姿勢を取るだろう。

 

従来から指摘しているが、特に、人民元相場の節目とされる1ドル=7.0元は、心理的な節目にとどまらず、重要な防衛線である。人民元の国際化を実現したい中国政府は、人民元の過度の減価や、ましてや人民元安誘導という政策は取るとは考えにくい。実際に2016年の人民元急落の際ですら、防衛したラインが1ドル=7.0元なのだ。

 

長期的には「新常態経済」すなわち、内需主導の経済への移行という中国経済の課題に取り組むことで、中国が経済的にもより強国になるという道筋ははっきりしている。しかしながら、来年には、米国からの追加制裁(追加関税の税率が25%に引き上げられる)や、制裁発動前の駆け込み需要の下駄が無くなるというインパクトを考えれば、この局面で経済のダウンサイドリスクをどれだけ減らしておけるかということは重要だろう。

 

 

長谷川 建一

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO

 

 

本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

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