今週(9/29〜10/5)の国際マーケットレポート。今週も米国経済の腰の強さが目立ち、10年米国債利回りは3.20%まで上昇。注目されているイタリア予算案は政府が赤字削減へ計画を修正するとの報道があり、株式市場には支持材料となった。為替は米ドルの好調が続き、ドル円で114円台乗せを実現。米国株式市場はS&P500種が今年1月につけた高値を更新する勢いをみせている。

10年米国債利回りは2011年以来の高い水準に上昇

今週の金融市場は、動きのある週となった。きっかけは、ADP全米雇用報告(9月)とISM非製造業総合指数(9月)が、いずれも良好な数字で、米国経済の腰が強いことを示したためである。

 

筆者は、米国経済の景気拡大局面が、市場が予想するよりも長引くシナリオに備えるべきと指摘してきたが、その流れが出てきた。10年米国債利回りは9月4日に3.18%へと急上昇、5日も3.20%と水準を切り上げた。これは2011年以来の高い水準である。

 

パウエル議長は今週も発言を繰り返した。米国経済の現状は「際立って良好な」拡大を続けていると評価し、この状況は「かなり長期間にわたり続く可能性がある」とコメントした。FRBは想定される中立金利を上回る水準にまで政策金利を引き上げる可能性があるとも付け加えた。先週の利上げ実施からのコメントは、いずれも経済の見通しに強気のものである。

 

 

市場では、これまで、FRBが想定している(FOMCのドットチャート参照、関連リンク『トランプからの独立宣言?利上げ実施で注目されるFRBの中立性』に詳細)ほど利上げが行われるか懐疑的だったが、好調な経済指標がFRBの断続的な利上げ継続姿勢を支持するものとの見方が強まったため、これも債券利回りには上昇圧力となった。

イタリア予算案 「計画修正」を市場が支持も残る不安

他には、今週の注目点として挙げていた、イタリア予算案に関して、イタリア政府がより早期に財政赤字を削減する計画に修正するとの報道が、EU内の混乱とイタリア財政に対する懸念を和らげる形となり、リスク選好意欲を高め、株式市場には支持材料となった。

 

ただ、これでEU(欧州連合)とイタリアの溝が埋まると考えるのは、やや時期尚早だろう。イタリア連立政権内には、財政出動により成長率向上や社会保障政策を展開しようとする勢力もおり、しかも、2019年の財政赤字はGDP比2.4%のままである。EUの求める財政赤字の削減への道筋は、そう容易いものではない。見極めには、もう少し時間と材料が必要ではないだろうか。

為替 ドル円は「114円台」乗せを実現

為替市場は、米債券市場の利回り上昇やリスク意欲の高まりを背景に、ドル選好が強まり、米ドルは上昇を続けた。ドル円は、先週目処として書いた114円台乗せを実現し、114円50銭の節目に到達している。ユーロドルでも、米ドルは上昇し、1ユーロ=1.15台を割り込んできた。

株式市場 S&P500種が最高値更新に迫る勢い

米国株式市場は、景気の足取りがしっかりしていることを好感したことや金利上昇により金融株が下支えされたことから一段と上昇。今年1月の高値を更新していないS&P500種も、最高値に迫るところまで上昇してきている(ダウとナスダック指数は既に史上最高値を更新)。

 

来週の金融市場も、やはり、米国経済の景気拡大期間が予想よりも長期化することを意識した展開が続くのではないだろうか。ブレグジット交渉の展開、イタリア債務見通しには、引き続き注意を払っておきたい。

 

 

長谷川 建一

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO

 

 

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    本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

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