今週(10/9〜10/15)の国際マーケット展望をお届けする。米ゴールドマンサックスが中国株、アジア株に関して米中貿易摩擦の影響予想を織り込んだうえで、その下落率が「大きすぎる」との分析を発表した。先行き不透明感から悪化している市場心理だが、より全体を見据えたとき、いかに評価すべきであろうか。注目点を解説する。

中国株続落 貿易摩擦への市場反応は「過剰」か

今年に入って、MSCI新興国株指数へのA株採用などを好感して、流入超だった中国株への資金フローは、6月半ば以降に、貿易摩擦への懸念から流出超に流れが変わった。

 

上海深セン株価指数CSI300でみると、今年の高値は1月26日の4,389ポイントでその後は、世界的な株価調整の中でも、中国株は相対的には堅調だった。しかし、6月以降は米中貿易摩擦の影響を受け、より調整色が濃い展開が続き、9月まで続落。10月5日終値では3,438ポイントと、年内高値から20%下落した水準にある。これは、米国株式市場が活況で年内高値圏にあることと比べても、相当に弱い。

 

米中貿易摩擦は、落とし所がみえないなか、9月24日にはさらに大規模な2,000億ドル相当もの中国製品への米国の追加関税適用との段階に入っているが、それだけ、中国株式に対する市場心理が悪く、先行き不透明感からバーゲンハンターも出にくい状況というわけである。

 

そんななか、先週、米ゴールドマンサックスは、米中の貿易摩擦が「予想より悪い結果を前提とした経済的インパクトを踏まえても、中国株の下落が大きくなっているようにみえる」との分析を発表したとブルームバーグは報じている。米中貿易摩擦が過熱し、関税合戦の様相を呈した6月以降は、対米貿易の割合の高い中国銘柄が市場全般を15%下回ってアンダーパフォームしており、これに引っ張られる形で、中国株式全体が売り込まれすぎているという内容である。

中国経済は内需主導型へ?早まる成長モデルの転換時期

筆者は、これに加えて、中国経済の構造転換にも注目すべきと考えている。中国政府は、中国経済が内需主導型に転換していくことを、かねてより志向してきた。

 

輸出中心の成長モデルにはどこかで限界があることは自明のことである。それを、国内で育ってきた中間層が、積み上がった富や貯蓄を消費に回すことで、持続的な成長を遂げていくという成長モデルへと転換していくことを、急ピッチで進めていくことになろう。

 

 

もちろん、この転換は時間を必要とする。まだ、先ははっきりと見通せないが、米国への製品輸出だけが、中国経済のGDP成長を支えているわけではないということもよくみていく必要があるだろう。

アジア市場 中国の代替として「貿易需要」の恩恵は?

また、前述のゴールドマンサックスレポートによれば、アジア市場への米中対立の影響も織り込みすぎているとのことである。アジア株価全体でみると、MSCIアジア太平洋インデックスは、1月25日の高値186.6から10月5日は159.65と約10%の下落した水準にある。

 

米中貿易摩擦の影響による景気の下振れリスクを踏まえた動きのようだが、アジア全体でみれば、「中国を代替する米国の貿易需要がアジアの輸出を促す潜在的な恩恵を織り込み切れていない可能性がある」と指摘している。今年、アジア株式市場は、新興国からの資金流出という連想で、株価は芳しくないが、バリエーションから考えても、投資妙味のある水準に近づいているのではないかと考えている。

 

大きな課題は、このところの米ドル長期金利の上昇幅が大きいことだろう。米国経済の堅調ぶりを正当に評価すれば、これまでの市場の評価とは異なることを筆者は指摘してきたが、それが表面化した形となって先週末10年米国債利回りは3.24%へと上昇した。一方で、長期金利の上昇と金利上昇懸念は経済活動に影響を与える。

 

今週も引き続きこの点とイタリア財政、ブレグジット交渉に注意しておきたい。

 

 

長谷川 建一

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO

 

 

本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

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