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航空業界を救う!?「航空機リース」のメリットと今後の展望

前回は、航空機需要の増加に伴い脚光を浴びる「航空機リースビジネス」について取り上げました。今回は、航空機リースビジネスが航空業界にもたらすメリットと今後の展望を考察します。

エアラインにとって航空機の自社保有は「リスク」

③機材戦略の柔軟性

 

エアラインにとって路線ネットワークと航空機は最も重要な経営資源ですが、同時に経営リスクの塊でもあります。

 

路線ネットワークと航空機の両方に共通しているのは一度決定すると変更が難しいという点であり、例えばある新規路線の採算が想定よりも(はるかに)悪かったからといっても航空路線改廃は容易なことではありません。改善策としてコスト削減のためにより小さな航空機に変更するサイズダウンという施策がありますが、こちらも自社保有機では簡単に航空機を入れ替えることはできません。

 

これは一例ではありますが、エアラインにとって航空機を自社保有するということはさまざまなリスクを内包することにもなり得るため、オペレーティングリースによって機材の柔軟性を高めることも重要な視点となります。

 

また、これは別の視点として、特にLCC(ローコストキャリア)がオペレーティングリースを好む理由の一つですが、オペレーティングリースを活用しある一定の年数を経過した航空機はリースを延長せずにまた新規に新しいリース機で入れ替えることで運航機材の平均機齢を若く保ち、経年による整備費用の増加を抑制するような機材戦略をとることも可能となります。

 

④前払金が不要

 

航空機を取得するためには巨額の前払金が求められることが通常です。2014年4月にスカイマークがエアバスA380という総2階建ての巨大な航空機の購入に際して累計で200億円超の前払を行いながらも予定された前払金8億円が未払いとなり(200億円の前払いから考えるとたったの8億円で!)、最終的に経営破綻したことをまだ記憶されている方もいらっしゃると思います。

 

当時のスカイマークの当期純利益は50億円前後でしたので、身の丈を超えた設備投資であり破綻は免れなかったという意見はもっともではありますが、累計で200億円以上も払いながらも航空機を受領できない(=収入を上げることができない)という、航空業界特有ともいえる機材調達に係るリスクも無視できません。

 

スカイマークの経営判断の是非についてはいろいろと議論があるかと思いますが、オペレーティングリースには航空機の調達に際して前払金は不要であり、これはオペレーティングリースの大きな利点になっています。

 

⑤LCCの普及

 

近年急速に普及しているLCCですが、LCCの普及の裏でオペレーティングリースがその成長を支えています。

 

エアラインの収益性の目安は10機以上の運用と言われていますが、これまでの伝統的な経営方法ではこの機数に到達するまで長い年月が必要でした。例を挙げると、たったの1~2機からほそぼそと運営してボーイング社やエアバス社の信頼を得つつ、何年も何年も待ちながら少しずつ飛行機を増やしていくのが一般的かつほぼ唯一の成長戦略だったのです。そして、そのほとんどが定期的に発生する経済不況やリスクイベントにより経営危機に陥り撤退するか大手に合併されるかという流れになりました。

 

エアラインは経済環境の影響を強く受けるため、定期的に経済危機が発生する現代社会において航空機を10機揃えるまで生き延びることはかなり困難と言わざるを得ません。ところが、この状況を変えたのがオペレーティングリースです。LCCはオペレーティングリースを活用することで、たったの数年でペイラインの目安である10機まで到達することができるようになり、今や世界の1/4のシェアを占めるまでに市場を席捲しています(※1)。

 

※1 日本経済新聞「アジア太平洋航空センターによるとLCCの座席数ベースの世界シェアは2015年に25.5%に達した。2000年代半ばは15%程度にとどまっていたが、アジア新興国の中間所得層の拡大などを背景に世界でLCCの需要が急伸した。(2016年5月15日)」

オペリーなら、機敏で柔軟な機材計画を立てられる

⑥残存価値リスク

 

これまでは航空機の取得を中心に述べてきましたが、売却や退役に目を向けると、オペレーティングリースは将来の機体の価格変動リスクをリース会社にヘッジして、機敏で柔軟な機材計画を立てることができる手段であるとも評価できます。

 

航空機の売却時や退役時が景気後退期であった場合、航空機の中古市場も低迷しますので、その時に簿価の高い航空機を保有していると売却や退役において売却損が出てしまいます。

 

一方で、オペレーティングリースなら、景気後退期にもリース終了時期がくれば返還することができますし、リース延長で機材を使い続けることも可能です。

 

⑦調達コストの効率化

 

上記でも触れましたが、航空機は非常に高額なため購入に際しては借り入れを行うことが一般的です。しかしながら、資金調達コストが高いエアラインも少なくなく、高い金利負担を強いられることもあります。

 

オペレーティングリースはリースを通じてリース会社の高い信用力を間接的に活用することが可能となるのです。リースよりも銀行借り入れによる調達の方が経済的な印象をお持ちの方は少なくないと思いますが、ことエアラインと航空機の関係においては、リースのほうが経済的に有利となるケースは珍しいことではありません。

 

これは取りも直さず、時にはエアラインの信用よりも航空機の信用のほうが高く評価される、と解釈することもできるでしょう。銀行はエアラインの信用にもとづき利息を設定し貸付を行いますが、オペレーティングリース機の調達は先に述べたとおりリース会社の信用もしくは航空機そのものに対する信用によって設定されることに起因します。

投資家による航空機投資は、エアラインにも極めて有益

以上、前回と今回の記事によってエアラインがオペレーティングリースを活用する理由を7つにまとめましたが、投資家が航空機に投資するということはエアラインにとっても極めて有益なことであり、オペレーティングリースによりエアラインは効果的に資産を現金化したり、バランスシートから残存価値リスクを移転したり、柔軟に航空機を取得.入れ替えすることができるのです。

 

今後の連載で詳細は触れますが、現在2万3000機ある航空機は今後20年で2倍以上になると見られており、オペレーティングリースが占める割合も現在の40%を超えて増えていく可能性は高いと予測されています。したがって、航空業界においてオペレーティングリースが果たしてきた役割は大きなものであると説明してきましたが、将来における期待はより大きなものになっていくことでしょう。

 

航空業界においてオペレーティングリースは中核を占める要素の一つであり、今後の成長性や期待されている役割を考えると、航空機は将来にわたってより魅力的なオルタナティブ資産として広がっていくポテンシャルを持ったアセットであるといえます。

マーキュリアインベストメント 

PwCコンサルティング、IBM ビジネスコンサルティングサービス、KPMG FASにて戦略コンサルティング・M&Aサービスに従事した後、2008年に全日空に入社。2013年には、ANAホールディングスとバニラエアの財務と経営企画を兼務。経営計画の策定や、為替・燃油ヘッジ方針/航空機の選定戦略に携わる。2015年よりマーキュリアインベストメントに参画。

株式会社マーキュリアインベストメント:http://www.mercuria.jp/

著者紹介

旭アビエーション 

伊藤忠商事に1989年に入社。宇宙航空機部を経て、航空機オペレーショングリース子会社である米国伊藤忠エアリーズにてジェネラルマネージャーに就任。2002年に三菱商事に入社し、米国での航空機リース会社立ち上げに従事。ジェネラルマネージャーとして発展を主導、2社で合計約180機の航空機のリースおよび売却の経験を持つ。2017年に旭アビエーションを設立、グローバルに航空機リースマネジメント、仲介、テクニカル/コマーシャル・コンサルティングサービスを提供している。

著者紹介

連載無敵のグローバル資産 「航空機投資」完全ガイド

 

無敵のグローバル資産 「航空機投資」完全ガイド

無敵のグローバル資産 「航空機投資」完全ガイド

航空機投資研究会、澁田 優一、野崎 哲也

幻冬舎メディアコンサルティング

航空機市場が世界経済とともに成長を続ける理由や航空機投資はエアライン企業への株式投資と何が違うのか、他の現物投資と比べた場合の圧倒的なメリット、どの機体を選んで投資すべきなのかなどをわかりやすく解説。

 

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