前回は、中古航空機の資産価値が高い理由を解説しました。今回は、航空機投資特有のメリットを見ていきます。

不動産等と比較しても安定している、航空機のリース料

航空機投資のリターンはシンプルで、エアラインから支払われるリース料と航空機の売却時に得られるキャッシュフローの2つが主たる収入源です。前回までは後者に関わる特徴として航空機価格の安定性について説明を行いましたが、今回からはもう一つの収入源であるリース料についてご紹介したいと思います。

 

航空機のリース料の評価に際して、月額リース料を機体価格で割った数字(リースレートファクターと呼び、%で表します)を参照することが多くありますが、航空機の月額リース料は若年期を参考に、大まかにいうと機体価格の0.6%~1%程度が目安となります(※1)。したがって1年間のリース料は機体価格に対して8%~12%程度が目安です。なお、一般的にリース料は、リース期間中は一定額に固定され交渉なく変動することはありません。ただし、市場の規模は小さいものの、LIBOR金利に連動する変動リース料を採用しているケースもあります。

 

※1 あくまで目安。世界的な航空機投資への関心の高まりに伴い、この割合は減少傾向で機齢が若い航空機では1%を切ることが多い。また機種別に見るとワイドボディの方がナローボディよりも高めの傾向を示す。

 

前節(関連記事『実質大手2社の寡占状態?「航空機」の価格が安定している理由』参照)では航空機の価格安定性について触れましたが、リース料と航空機価格は密接に関連しており、安定した中古機価格の要素にある数々の特徴や利点(需給環境や技術の成熟度など)は同時にリース料という形で堅調なキャッシュフローを生み出す要素にもなっています。航空機投資におけるリース料は不動産投資でいえば賃料やテナント料にあたりますが、不動産をはじめとするほかのオルタナティブ資産と比較しても、航空機のリース料は安定していることが特徴であり、安定した中古機価格とリース料はアセットクラスとしての航空機の魅力を支える柱になっています。

 

航空機の中古機価格を支える数々の特徴は、航空機のリース料にもポジティブな影響を与えますが、さらに加えて航空機リース特有の利点がいくつか存在しています。以下、その利点についてご紹介をします。

米ドルで売買・収入を受け取れることも大きな強みに

航空機投資におけるリース料は、不動産投資における賃料やテナント料にあたると書きましたが、航空機のリース料は不動産投資の賃料・テナント料に対して複数の利点(アドバンテージ)を持っています。なによりもまず特筆すべきなのは、航空機のリース料は不動産投資のように空室率を心配する必要がないということです。

 

航空機リースの貸先は通常エアライン1社であり、さらにリース料の金額もリース契約期間中(6年から10年程度の長期契約)は基本的には契約で定められた金額が支払われます。したがって、リース契約期間中の収入は安定的かつ計画的に入ってくることが期待できるのです。これは航空機を購入するときの銀行融資においても有利に働き、収入の安定性が高いということは銀行からより多くのローンを受けることを可能とし、投資効率を高めることにも大きく寄与しています。

 

不動産投資における心配事は大小様々あると思いますが、やはり空室の増加と賃料の下落は最も関心の高い最重要事項です。どんなによい立地でよい建物だとしても入居率を100%で見積もった計画を作ることは現実的ではありませんが、航空機リースであれば契約期間中の空室や賃料下落のリスクは不動産と比較しても限定的であると評価できます。もちろん、借り手(レッシー)であるエアラインの破綻等による契約期間途中でのリース解約やリース料の減額といったリスクは存在してはいますので油断は禁物です。

 

もう一つの利点として挙げたいものは、航空機投資のリース料は米ドル建てで支払われるということです。こちらについても例外はありますが、基本的には世界的に米ドルで支払われるのが一般的です。多くの日本人投資家が外国通貨での投資を「為替リスクがある」と言って忌避する傾向にありますが、こと海外資産への投資に関しては米ドルで売買でき、米ドルで収入を受け取れるということは大きな強みになります。先程、航空機リースの特徴として空室率のリスクが低いことを挙げましたが、それだけでは例えば、一社で一棟すべて借りている不動産や、発電所を始めとするインフラ投資も同じく空室の概念がなく収入は安定しているといえます。

 

しかしながら、これら不動産やインフラ投資に共通して言えることは、その「安定している収入」はローカル通貨で支払われるということです。現在、インドや東南アジアなどの地域で不動産・インフラ開発が活発に行われていますが、そこから生まれる収益はどうしてもローカル通貨、つまり多くの場合がソフトカレンシーでのリターンとなってしまいます。航空機は同じオルタナティブ資産として分類されますが、土地に根ざさない航空機ならではの特徴は不動産やインフラ施設とは一線を画するグローバル資産として分類されるべきものです。

 

世界中のどの国に登録され、どの国の空を飛んでいても、機体は米ドルで売買されリース料は米ドルで受け取れるという利点はほかのオルタナティブ資産にはない強力な利点です。

 

航空業界では米ドルが共通通貨として使用されていますが、その理由としては米ドルが基軸通貨として過去より使われてきたこと以外に主要な航空機メーカー(OEM)が米国企業であったことや、エアラインにとって最大の費用の一つである燃料の支払いが米ドルであることも背景として存在しています。

 

さらに、航空業界では航空券の運賃計算にNUC(Neutral Unit Construction)という世界共通の特殊な単位(擬似的な通貨のようなもの)が採用されており(※2)、これにより複数の国を経由する複雑な乗り継ぎの旅程でも出発国の現地通貨ですべての国の航空券を発券することが可能となっているのです。

 

※2 例えば、成田発(円)、香港経由(香港ドル)、南アフリカ着(ランド)の往復航空券を日本の旅行代理店で購入できるのもこの仕組が導入されているからである。現在はeチケットが全盛のために見かけることが少なくなったが、数年前までは区間ごとに印刷された冊子状の航空券を覚えている方も多いだろう。

航空券は世界中で換金可能な金券のような性質を持ち、普通航空券であれば各旅程の航空券はどこでも払い戻しが可能であり、東京で円で購入した航空券をニューヨークでドルで払い戻すことも可能である。仕組みとしては払い戻しを受けたエアライン(今回だと米国)が立て替え払いを行い、後日購入代金を受け取っているエアライン(今回だと日本)に請求をかけるのだが、世界規模でこのような仕組みを作り上げているのは航空業界しかなく、金融システム的な面においてもグローバルな仕組みが構築されている。

 

これが現在は1NUCが1米ドルで設定されていることもあり、世界中のエアラインは米ドルを主要通貨としてさまざまな決済に使用しています。eチケットにも航空料金計算(Fare Calculation)欄があり、そこにNUCという記号を見ることができると思いますので、機会がありましたらぜひ注意して見てみてください。

 

 

澁田 優一

マーキュリアインベストメント

 

野崎 哲也

旭アビエーション

 

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航空機投資研究会、澁田 優一、野崎 哲也

幻冬舎メディアコンサルティング

航空機市場が世界経済とともに成長を続ける理由や航空機投資はエアライン企業への株式投資と何が違うのか、他の現物投資と比べた場合の圧倒的なメリット、どの機体を選んで投資すべきなのかなどをわかりやすく解説。

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