今回は、日本国内で「中国株式」を売買する具体的な方法を見ていきます。※本連載は、亜州IR株式会社が編集・発行した書籍『中国株四半期速報 2018年夏号』の中から一部を抜粋し、中国株の基礎知識とハンセン指数採用銘柄に選ばれた企業情報を15社ご紹介します。

中国株を取り扱う証券会社で専用の取引口座を開設

中国株マーケットを概観していただいた次は、取引をどう行うのか具体的な売買方法を見てみましょう。以下、日本株との共通点、相違点を意識しながら順を追ってお話します。

 

<立会時間>

まず取引時間をご説明します。日本を含む海外の投資家が自由に投資できる対象は、香港株、上海B株、深センB株の3種(3市場)。香港と本土はともに、日本と1時間の時差があるため、立会時間もそれぞれ東京市場と異なります(図表1参照)。ただ、それほど大きな差はなく、日本株とほぼ同タイムで取引を行うことができます。このことは、日本の夜間に市場が開く欧米マーケットと大きく異なる点。外国株でありながら、日本株と同じ感覚でトレーディングが可能というメリットです。

 

[図表1]

 

ここで、中国株マーケット特有の制度である開場前のプレ・オープニング・セッション(寄り前取引)をご説明します。寄り前の一定時間に板寄せに準じた方式で執行される同取引は、一本値で仮の寄り値を決める制度です(実際に約定される)。これを経た後に通常の立ち会いが始まり、ザラ場方式の売買へと移行します。現地時間9:20~9:30までは、取引所がプレオープニング時間帯の注文の付け合わせ等を行うため、売買注文は受け付けません。

 

もう一つ、大引けの板寄せを行う「クロージングオークション・セッション(CAS)」が2016年7月25日にスタートしました。終値を確定させるため、ザラ場終了後の10分間で行われ、終了時刻は現地時間の午後4時10分(日本時間の午後5時10分)に設定されました。プレ・オープニング・セッションと同様、一本値で決められます。

 

[図表2]

 

[図表3]マーケットカレンダー

 

<口座開設>

日本国内で売買を行うためには、中国株を扱う日本の証券会社に専用の取引口座を開設しなければなりません。日本の証券会社は、どこでも中国株を扱っているわけではなく、各社ごとに取扱市場や取扱銘柄に違いもあります。また、利用可能な情報の種類や手数料の体系、注文の方式(店舗かネットかの違いなど)も各社によって様々――。したがって、投資家各人の目的にあわせた証券会社選びを行う必要があります。もちろん、複数の証券会社に口座を開いておくという投資家も少なからず存在します。

 

以下、香港株のみを扱う証券会社と香港株・本土株を扱う証券会社をいくつかピックアップしたうえで、各社で注文の方式がどうように違うかを例示してみました。

 

*掲載のない証券会社の一部も、中国株を取り次いでいる場合があるのでご注意ください。また、下記の条件も変更が生じている可能性があるので要確認です。

 

[図表4]

*各社ヒアリングにより作成。取扱市場は変更になる可能性があります。
*各社ヒアリングにより作成。取扱市場は変更になる可能性があります。

 

<買付代金の入金と外貨転換>

口座の開設後、実際に投資を始めるにあたっては事前の入金が必要です。あらかじめ、買付相当額の日本円を準備しておくこととなります。もっとも、上海B株は米ドル、深センB株と香港株は香港ドルで決済されますので、その日本円は証券会社を通じて外貨に転換(両替)されます。

 

ここで注意しなければならないのは、外貨への転換が入出金時のみで済むのか、あるいは売買の都度、行わなければならないのか――という点です。前者を外貨決済(送金時に外貨に転換した後は、その金額の範囲内で外貨のまま売買を繰り返すことが可能。送金時以外、為替手数料が発生しない)、後者を円貨決済(売買ごとに円に両替する必要がある。売買の都度、為替手数料が発生する)と呼びます。

 

ところで、中国株に投資している期間は、実質的に外貨を保有し続けている状態にほかなりません。その間に円高(外貨安)が進めば、当然ながら為替差損が発生することになります。購入した株式の価格(外貨建て)が変わらない場合でも、外貨安が進行した分だけ資産価値が目減りするからです。逆に中国株を買付けた後に円安に振れれば、為替差益が生じることは言うまでもありません。

 

[図表5]

中国株式の取引にかかる税金とは?

<売買時の手数料や売却益(譲渡益)の税金>

中国株を売買する場合、現地諸経費や現地委託手数料が必要となるほか、これを取り次ぐ日本の証券会社に支払う国内手数料が発生する場合があります。国内手数料の設定は各証券会社によってまちまち――。約定代金に対し一律のパーセントを設定している業者や約定金額のレンジごとに設定している業者、また、約定金額の大小にかかわらず一定額を徴収する業者もあります。手数料が一定額の場合、小額の約定では手数料が割高になりますが、金額が大きくなれば割安になることが利点です。

 

現地でかかる諸経費には、取引所手数料やCCASS(香港の中央保管決済システム)決済料、印紙税、取引所税などがあります。現地の委託手数料とは、言うまでもなく会員権を保有する現地証券会社に支払う手数料のことです。

 

*証券会社の一部では、ウェブサイト上で売買計算機のサービスを提供しているところもあります。株価と株数を入力すると、手数料や損益分岐点が表示されるほか、どの程度の手数料が発生するのか事前に把握することができます。

 

売却益に関する税金は平成15年1月から日本株取引と同様に外国株取引でも申告分離課税方式に一本化されました。香港では、株式取引のキャピタルゲイン(売却益)、配当金ともに非課税ですが、日本国内居住者の場合は、海外株式の取引としても日本の税制が適用され国内株と同様の税金がかかります。

 

申告分離課税・・・売却益(円ベース)には、原則として国内株式と同じく20%の税金がかかります(所得税15%、住民税5%)。また、東日本大震災の復興特別所得税が平成49年12月31日までの間、所得税額に対して2.1%加算されるため、合計税率は20.315%となります。

 

[図表6]

 

<発注の形態>

中国株の注文は日本株と同様、対面(店舗、電話)やオンライン(インターネット)などいくつかの方法で取り次がれます。それは、証券会社ごとに決められています。対面専門、ネット専門のブローカーもあれば、両方が可能なところもあります。

 

対面取引の場合は営業担当者を通じて注文することになるので、売買のアドバイスを受けることが可能です。パソコンをご利用にならない場合は、こちらを選択された方が便利がよいかもしれません。

 

[図表7]

 

一方、インターネット環境が整っている投資家は、オンライントレードを選ばれる場合が多いようです。営業担当者からのアドバイスが受けられない半面、注文執行のスピードが早い点が大きなメリットだからです。また、注文手数料を若干安めに設定している例が多いのも特徴といえます。

 

なお、最近はネット専用証券のウェブサイトも大きく改善してきました。市況ニュースをリアルタイムで流したり、個別の企業情報を提供したりする業者が見受けられます。

 

<配当金>

買い付けた企業が配当を実施する場合は、われわれ外国投資家もこれを受け取ることができます。無償増資のケースも同様。ただ、日本株と異なり決算日が権利確定日に一致しないので注意が必要です。

 

香港上場銘柄の場合、決算発表時に権利・配当などの内容、配当スケジュールを明らかにします。権利付最終日(同落ち日)は会社ごとに違い、また同じ会社でも毎年同日というわけではありません。

 

配当のスケジュールは、証券取引所のウェブサイト上(各企業の公告欄)で公示されますが、日本の証券会社からも情報を入手することが可能です。なお、配当金は証券会社を通じて受け取ることができます。

 

[図表8]配当スケジュール(一例)

 

<有償増資は権利取りに制限>

保有銘柄が有償増資を行う場合、国内の居住者は、日本の金融商品取引法により外国株式の有償増資に対して払い込みをすることができないため、権利期日前までに同権利を売却することになります。ただし、同権利の売却で約定がつかない場合もあり、売却期間内に現金化することができないケースがあります。

 

*口座をお持ちの証券会社に直接お問合せください。

中国株四半期速報 2018年夏号

中国株四半期速報 2018年夏号

亜州IR株式会社編集

亜州IR株式会社

合計460社もの中国株の情報を収録し、最新の業績内容もカバーしています。出資動向を図示的にまとめた「資本構成図」などにより、銘柄を研究する上でより理解が深まる一冊です。

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