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AI時代のM&A…人工知能による案件マッチングは成立するか?

前回は、M&Aの現場でも悩ましい「会社は誰のモノなのか?」という問題を取り上げました。今回は、AI(人工知能)がM&A業界にもたらす可能性について考察します。

まだまだアナログで泥臭いM&Aの世界だが…

「ロボアドバイザー」という存在をご存じでしょうか。最新のAI(人工知能)を駆使して投資助言を行うロボットです。某ベンチャー企業ではサービス開始から2年で、利用者13万人、預かり資産1,000億円を超え、実績においても高いパフォーマンスを出しています。

 

また、不動産業界においても「不動産テック」なるサービスが登場しました。ビックデータから不動産の時価を算定し、売却タイミング等をアドバイスします。またVR(バーチャル・リアリティ)を駆使して不動産の内覧や、AIによる契約手続き代行など、業務効率化にも寄与しています。

 

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「AIに仕事が奪われる」というようなネガティブな議論もありますが、さまざまな業界でAIが活用されはじめており、この流れは今後も加速すると思われます。

 

M&Aの世界は、まだまだアナログで泥臭い仕事が多い業界です。M&A業界にいる筆者の視点から、AIが業界にどういう恩恵と変革をもたらしてくれるか考察してみたいと思います。

 

◆M&A案件マッチング

 

もっともわかりやすく、相性がいい業務は、案件マッチングかもしれません。人材採用分野においては、すでにIBM Watsonがエンジニア等のマッチングをスタートしています。「事務手間」と「担当者の属人的なスキル」の課題解決にAIが貢献しているようです。

 

男女の出会いの場でもAIが活用されています。合コンで相性をAIが判断してくれる「人工知能コン」なるAIアプリも登場しています。成約率も通常の合コンより高く25%の実績とのことです。

 

M&A業界でも案件マッチングは、新規参入が相次いでいます。サービス提供企業は、IT、人材、会計など異業種からの進出が目立ちます。まだ黎明期であり、いくつかの課題が見受けられます。

 

◆M&Aマッチングサイトが抱える課題

 

一つは、売り手側である社長の精神的ハードルです。事業には多くの関係者、ステイクホルダーが存在し、M&Aはまだまだ秘密裏に進めることが前提とされています。そのため、前提となる会社情報を正確に入力することが難しく、どうしてもマッチング精度が下がってしまいます。

 

二つ目は、買い手である投資家の経験値・モラルです。筆者も複数のマッチングサイトに案件情報を提供したことがありますが、秘密保持に不安を感じる方や、そもそも投資家としての資質に欠けている方などが見受けられ案件を取り下げてしまいました。

 

三つ目は、アドバイザー側の問題です。案件情報を持っているアドバイザーは、買い手ネットワークも持っていることが多く、直で投資家に案内し成約させる傾向にあります。裏を返せば、必然的に、扱いにくい案件がマッチングサイトに掲載されやすい傾向になることは否定できません。

 

また、M&Aにおいてマッチングは単なる入口であり、成約に至るまでには、デューデリジェンス、契約内容のすり合わせ、価格交渉等の数多くのイベントが発生します。マッチングビジネスが発展するためには、関係者の協力と、成約に至るまでの実務連携が必須となります。

契約書の自動生成機能を提供するベンチャー企業も出現

◆デューデリジェンスとAIの相性

 

この分野もAI活用により効率化が期待できる分野です。与信分野では、すでに個人ローンを中心に自動スコアリングモデルが導入されています。中国の大手IT企業、アリババ集団の「芝麻(ゴマ)信用」や、みずほ銀行とソフトバンクが連携する「AIスコア・レンディング®」というサービス等です。

 

M&Aにおける財務デューデリジェンスは、過去の財務諸表の分析基本となるので、与信審査に似ておりAIの活用が期待されます。筆者も2000年前半に、2つの与信審査モデルのプロジェクトに参画しましたが、結果はいずれも散々たるものでした。詳細は割愛しますが、独立後に、中小企業の事業再生、M&Aのデューデリジェスを数多くこなすことにより、当時の失敗理由が別の角度から見えてきました。   

 

銀行、保証協会、ノンバンクには、膨大な失敗データーが蓄積されています。その経験値をビックデーターとして共有することにより、M&Aのデューデリジェンスにも活用できるに違いありません。

 

◆契約書の作成

 

M&Aには秘密保持契約書(NDA)から始まり、意向表明書、基本合意契約書、譲渡契約書、別途覚書等多くの契約書作成とチェックが必要になります。お互いの顧問弁護士にチェックしてもらうこともありますが、M&Aに慣れていないケースも多く、不毛なやりとりや質問が続いてしまうことがあります。

 

すでにAIを活用した「契約書自動生成機能」や「契約リスク判定サービス」等を提供するベンチャー企業が出てきています。修正案まで出してくれるというのですから驚きです。

 

◆AIが裁判の場に採用される時代

 

米国の一部の州では、裁判所の審理においてAIが活用されはじめているようです。当然ながら、機械が人間を裁くことへ関与する抵抗感は強くネガティブな意見が多数を占めます。一方で感情や場の雰囲気に流されにくいので、逆に公平性が保たれるという意見もあります。

 

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M&A現場にいる者としては、仮に裁判となった場合に、過去の判例から勝ち負けを判定してくれるサービスがあれば是非利用したいと思います。それにより、不毛な争いが減ることを期待します。

 

近い将来、「M&Aロボアドバイザー」が登場するかもしれません。ディープラーニング(深層学習)の技術が加速度的に発達し想像以上のスピードでAIも進化しています。ただし、M&Aは対象物が「会社」「事業」という評価しにくいものであり、取引判断に「感情」も絡んでくるため、実現にはもう少し時間がかかるはずです。

 

鉄腕アトムのように、人の心まで感じ取れるロボットであれば、優秀なM&Aアドバイザーになれるかもしれません。素直に話を聞き学習する姿勢があれば、筆者が持つ知識や失敗談を余すことなく伝え、パートナーとして迎えたいと思います。

 

齋藤 由紀夫
株式会社つながりバンク 代表取締役社長

株式会社つながりバンク 代表取締役社長 

オリックス株式会社1996年~2012年。16年在籍。 在職中に多くの新規Projectに参画し、東京都、銀行、カード会社などに出向。ベンチャー企業から上場企業まで投融資を実行。経営企画部時代(約8年在籍)に、出資先の株主間調整、合弁契約解消、事業撤退・売却、海外子会社統合、債権回収業務など前向きから後ろ向き案件の対応をこなす。2012年、株式会社つながりバンク設立。スモールM&A市場の普及・拡大をメイン事業とし現在に至る。自らも小規模の事業系投資を実践中。

著者紹介

連載新たな投資分野として注目集める「スモールM&A」の活用術

 

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