M&Aの少数株主対策…「スクィーズアウト」は最適解か?

前回は、M&Aビジネスで「オタク」が重宝される理由を取り上げました。今回は、スモールM&Aにおける少数株主対策について見ていきます。

歴史ある企業ほど、多くの「利害関係者」が存在

社長以外の第三者が少数株主としても存在するのは、中小オーナー企業でも、ごく一般的です。親族・友人・設立メンバー・エンジェル・提携先はもちろんのこと、まれに別れた奥さんや、意見が合わず離脱した元役員などといったケースもあります。

 

1990年の商法改正までは、株主(発起人)は7名必要であったこともあり、歴史ある企業ほど多くの利害関係者が存在します。当然のことながら、M&Aの際に既存株主の存在は気になるところです。実行するときは、最大株主であるオーナーが取りまとめを行うことが多いですが、これが思わぬ感情のもつれを引き起こし、M&Aがとん挫することさえあります。

 

◆株主の権利

 

そもそも、株主の権利とは何でしょうか。一例ですが、わずか3%の保有であっても会計帳簿閲覧請求権(会社法433条)、株主総会招集請求権(同297条)、役員解任の請求訴(同854条)などの権利を持っています。1株だけの株主でも「単独株主権」が認められており、株主代表訴訟提起(同847条)、新株発行差止請求(同210条)等も可能です。

 

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株主は少数でも対立すると、非常に面倒でストレスが溜まります。最終的には会社法に長けた弁護士や司法書士に任せますが、オーナーと少数株主の関係、距離感、想定される要求などをヒアリングしながら妥協ラインを探ります。

 

◆伝家の宝刀「スクィーズアウト」

 

株式会社の運営において、議決権は大きな効力を持ちます。一定比率を抑えておけば、少数株主を法律手続きに則り、追い出すことが認められています。これを「スクィーズアウト(Squeeze out)」と呼びます。言葉のニュアンス通り、絞って締め出します。

 

2015年施行の改正会社法で、議決権90%を持つ株主は、残りの10%保有株主に「通知書」を送るだけで、少数株主の株式を買い取れるようになりました。また、議決権の3分の2(66.7%)以上を持つ株主であれば、株主総会の「特別決議」にて、会社がすべての株式を強制的に買い上げる特殊な株式(全部取得条項付種類株式)を発行することが可能です。定款変更し、結果的に少数株主を排除することもできます。その他に「株式合併」や「株式交換」などの手法もあります。

「スクィーズアウト」の前に、話し合いや和解の機会を

スクィーズアウトは、法的な効力もあり確かに有効です。ただし、少数株主は過去に何かしら、オーナーである社長や、その会社に対して期待を持って出資してくれた「仲間」のはずです。疎遠になっていたり、過去に揉め事があった場合、いきなり一方的な内容で書面通知が来たらどう感じるでしょうか。

 

人間は「感情に行動が左右される動物」です。日本では「喜・怒・哀・楽」、古代中国ではこれに「愛・悪・欲」が加えられています。人間の感情が、一族や隣人との争いを引き起こし、時にそれが国家間の戦争にまで発展します。時代が変わっても、人間模様に変化はないように思えます。相手の気持ちを考え、伝え方、言い方ひとつで、トラブルを回避することも可能です。

 

「議決権」や法的権利を振りかざす前に、まずは一個人、一株主として尊重し、誠意ある対応をすべきです。感情がもつれてからの裁判は、お互いストレスを抱えることになり、経営やM&A実務にも何かしら悪影響を及ぼす可能性があります。

 

◆M&Aの現場は「心理学」「行動学」が重要

 

学問としてのM&Aは「経済学」や「コーポレートファイナンス」に分類されるかもしれません。ただし、現場で案件をまとめるためには「心理学」や「行動学」という人間の本質に迫る学問の領域ではないかと最近感じ始めています。取引するものは株式や事業であっても、最後は人間同士の「心」のキャッチボールなのです。

 

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齋藤 由紀夫

株式会社つながりバンク 代表取締役社長

株式会社つながりバンク 代表取締役社長 

オリックス株式会社1996年~2012年。16年在籍。 在職中に多くの新規Projectに参画し、東京都、銀行、カード会社などに出向。ベンチャー企業から上場企業まで投融資を実行。経営企画部時代(約8年在籍)に、出資先の株主間調整、合弁契約解消、事業撤退・売却、海外子会社統合、債権回収業務など前向きから後ろ向き案件の対応をこなす。2012年、株式会社つながりバンク設立。スモールM&A市場の普及・拡大をメイン事業とし現在に至る。自らも小規模の事業系投資を実践中。

著者紹介

連載新たな投資分野として注目集める「スモールM&A」の活用術

 

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