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イソップ寓話には、ビジネスや人生のヒントが満載
イソップ寓話(ギリシア)は、紀元前6世紀頃にまとめられ、18世紀から19世紀という近代に編纂されました。グリム童話(ドイツ)やアンデルセン童話(デンマーク)と比較しても、驚くほど歴史のある物語集です。2000年以上も世界中で支持され、読み継がれているのは、人間の根源的な部分に響くものがあるからに違いありません。実際に筆者が読み返してみても、ビジネスや人生のヒントになる話が満載です。
M&Aは、究極的には「お金と心のやりとり」であり、人間の本質が最も出やすい取引だといえます。以下に、イソップ寓話から、M&Aや投資を成功させるためのヒントを見出したいと思います。
◆『欲ばりな犬』~「欲」もコントロールが必要~
お腹を空かせた野良犬が肉を盗んで逃げました。逃げる途中で、渡った川のなかに同じく肉をくわえた犬を見つけ、その肉も奪おうと吠えて脅しましたところ、くわえていた肉は川に落ち、流れていってしまいました。当然ながら、もう一方の肉をくわえた犬は、川に映った自分の姿だったのです。
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M&Aの現場では、このような「欲」が如実に現れます。当然ながら、売り手は高く、買い手は安く・・・と、自分に有利な条件で取引したいと考えるでしょう。しかし、この「欲」をコントロールできず、感情を表に出してしまうと、目の前から相手が消えてしまうことがあります。この犬のように欲張り、相手を脅して意中のものを手に入れようと思ったとたん、よい話も流れてしまうことがあるのです。
◆『ライオンとねずみ』~先入観を捨てる~
ある日、ライオンに捕まったねずみがいました。しかしねずみは、ライオンに命乞いをして見逃してもらうことができました。後日、ライオンが猟師に捕まったところ、そのねずみがライオンを捕らえていた縄を噛み切り、助けてくれたのです。
『鶴の恩返し』と一部通じるとことがありますが、視点を変えれば、誰にでも存在意義があり、それぞれが能力を持っているということでしょう。
M&Aの資産査定(デューデリジェンス)では、対象企業のよい特徴や差別化要因などを、客観的な視点で探します。提供するサービスや商品があり、それに対価を払うお客さんがいれば、どんな企業でも必ず存在意義があります。儲かるかどうかはマネジメントする側の能力であり、特徴や差別化要因とは関係がありません。
企業評価の際、小さくて目立たない事業部や埋もれていた技術に光があたり、取引が成立することは、M&Aの世界では珍しくありません。先入観で判断する前に、視点を変えて評価してみることが必要です。
◆『塩を運ぶロバ』~M&Aではごまかしは利かない~
重い塩を背負って川を渡っていたロバは、足をすべらせて転んでしまいました。ところが、塩は川の水で溶けて、運んでいた荷物が軽くなりました。後日、綿を山のように背負っていたロバは、荷物を軽くしようとわざと川で転びますが、綿がたくさんの水を吸い、何倍も重くなってしまいました。
長くビジネスをやっていると、労せず成果がでるラッキーな取引が発生することがあります。これは、筆者のようなM&Aアドバイザーにもあてはまります。そこで別の案件でも手を抜いて、同様の成果を得ようとすると、痛い目にあってしまうのです。
筆者が関与した案件(事業譲渡)で、提出された書類に虚偽があることが発覚しました。本人はミスだと弁解していましたが、意図的であったことは書類からも明らかでした。その企業は現在も業績が低迷し、支援者も見つからず苦労しているようです。筆者のもとへ再度サポート依頼がありましたが、丁重にお断りしました。
◆『けちんぼう』~金も使わなければ石と同じ~
たいへんな金持ちだけれど、けちんぼうな男がいました。男はお金を少しでも減らしたくないと、財産のすべてを金塊に換え、土のなかに埋めました。ところが、その金塊は盗まれてしまいました。泣いている男から理由を聞いた村人たちは言いました。「なあんだ。それなら同じ場所に石でも埋めておきなさい。金を埋めるだけで使わないなら、金でも石でも同じことですよ」と。
筆者の先入観もあるかもしれませんが、歴史が長く、必要以上に内部留保が厚い会社ほど、M&Aの買い手となった場合には意思決定ができずによい案件を逃す傾向が見られるように思います。手元キャッシュが潤沢なら、リスク許容度は高いはずなのですが、実際はそのような判断をしないようです。
◆『農夫とその子供たち』~単なる資産譲渡は子のためならず~
年老いた農夫には、働かない3人の子供がいました。農夫は亡くなる間際に、「畑には宝物が隠してあるから、掘り起こしてみよ」と子供たちに言い残しました。子供たちは畑の隅々まで深く掘り返したが、何も見つかりませんでした。しかし翌年の収穫は、畑がよく耕されたことから今までにない大豊作に恵まれました。
市場が縮小、競争が激化している経済環境下においては、会社の器だけを残しても維持することが難しくなってきています。後継者の子息が、ビジネス面において創業者よりも優れているとは限りません。そうであれば、後継者には先代以上の努力が必要です。
親族内承継の場合、資産を残すことよりも、経営哲学やお金の稼ぎ方などのノウハウを伝えるほうが大切かもしれません。
◆『北風と太陽』~相手の心に寄り添うことが大切~
イソップの代表的な寓話です。北風と太陽が、どちらが先に旅人の服を脱がせることができるか競いました。北風は力任せに冷たい風を吹きつけ、旅人はさらに服を着込んでしまいます。しかし太陽は、旅人に温かい日差しを注ぎ、服を自分から脱がせることに成功するのです。
北風と太陽を買い手に置き換え、場面をクロージング前の最終局面とすると、この話はとても意味深くなります。ここまで時間をかけたのだからと、北風のように手荒い交渉によって強引にクロージングに持ち込もうとする買い手は少なくありません。しかし、無理やりクロージングをしようとすれば、相手が交渉のテーブルから降りることもあり得ますし、後々のトラブルも発生しやすくもなります。相手側が自ら決めることが大切なのです。そのためには、太陽のような温かさで寄り添うことも必要です。
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◆『すっぱい葡萄』~諦めるときは潔く~
お腹を空かせたキツネが、おいしそうな葡萄を見つけました。食べようとして懸命に跳び上がっても、葡萄は高い所にあって届きません。キツネは怒りと悔しさから「どうせこんな葡萄は酸っぱくてまずいだろう。誰が食べてやるものか」と負け惜しみの言葉を吐き捨てました。
M&Aの現場でも、取引価格や条件が合わずに買い手が見送らざるを得ないケースがあります。その際に、単純に諦めてもらえればよいのですが、対象企業のウィークポイントや些細なネガティブ情報を取り上げ、価格交渉をしてくるケースがあります。そのような場合は、「ノーディール」ということで交渉の打ち切りを提案します。一時が万事で、今後の交渉も難儀することが予想されるからです。
M&Aの事例がイソップ寓話と重なる理由
イソップ寓話は『アリとキリギリス』のように、残酷で冷たい話が多いことに気がつきます。寓話が生み出された当時は、生きるか死ぬかの過酷な環境で、人間の本質や根源をテーマにすることが自然だったのでしょう。M&Aも人間ドラマの連続です。人間の本質をついたイソップ寓話がM&Aの事例と重なるのは当然のことかもしれません。
筆者もアドバイザーとして、投資する側として、まだまだ学ぶことは多くあります。400話以上もあるイソップ寓話を、折に触れて読み進めることで、さらに多くの教訓を得たいと考えています。
齋藤 由紀夫
株式会社つながりバンク 代表取締役社長
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