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現状に危機感か?士業従事者の「M&A業界」参入が増える理由

前回は、イソップ寓話から「M&A」を成功に導くヒントを取り上げました。今回は、士業従事者の参入が「M&A業界」に与える影響について見ていきます。

税理士、公認会計士…20万人を超える登録者数

この数年間、M&Aの現場やセミナー等で、数百名の士業の方々と接してきました。協会データなどからそれぞれの登録者数を調べてみたところ、下記のような結果が出ました。

 

税理士(7.7万人)、公認会計士(3.0万人)、司法書士(2.2万人)、行政書士(4.7万人)、弁護士(3.9万人)、中小企業診断士(2.6万人)

 

当然重複もありますが、これら6つの士業だけで20万人を超えています。

 

中小企業のM&A市場が拡大するにつれ、士業の方々がそれぞれの立場からM&A業界に関与しつつあります。一般には「受動的な」M&A手続きなどが多いでしょうが、一歩踏み込んだ「能動的な」情報提供者、経営者に寄り添った相談役としてM&A業務全般に踏み込んでくる士業の方も増えてきました。

 

では、実際どのような士業の方が頼りになるか、筆者の経験から解説していきます。

 

◆税理士・会計士~士業トップの相談先~

 

下記図表1は、東京商工リサーチ社による事業承継・M&Aについて企業が相談した対象の調査結果です。予想通りですが、会社の決算内容を知り、接触頻度も高い顧問税理士・会計士がトップです。これは、ほかのアンケート結果でも同様の結果です。

 

[図表1]事業承継・M&Aについて企業が相談した対象の調査結果

出典:中小企業庁委託「企業経営の継続に関するアンケート調査」(2016年11月、(株)東京商工リサーチ)
出典:中小企業庁委託「企業経営の継続に関するアンケート調査」(2016年11月、(株)東京商工リサーチ)

 

ただし、税理士の多くは「親族内承継」がメインで、親族外である「M&A」を積極的に取り組んでいる方はまだ少数派です。専門外業務なのであまり踏み込まないのか、顧問先が減ることを危惧するのか、理由はさまざまだと推測します。

 

一方、事業承継問題が深刻化するなかで、業界内でもこれまでとは違った動きが出てきています。各地の税理士会をとりまとめる「日本税理士会連合会」は、買い手をみつける「担い手探しナビ」というマッチングサービスを開始しています。

 

また、税理士が加盟する「東京税理士協同組合」は、M&A仲介事業大手の株式会社ストライクと、M&Aの仲介・付随業務のサービスにて提携をしています。

 

筆者のセミナーを受講した税理士でも、外部承継をアドバイスの選択肢として取り入れ、積極的に活動している方が増えてきました。外部承継はタイミングが重要なので、そのような税理士さんが増えているのは好ましい傾向です。

 

◆司法書士~専門業務で活躍~

 

司法書士といえば、おそらく不動産登記などをイメージする方が多いと思いますが、会社法務に強い方々がM&A業界に参入しはじめています。筆者と業務連携している先生も、会社分割や合弁スキーム等に長けている方々です。

 

登記などの手続き業務は、今後AIの進化により仕事が減るといわれており、問題意識の高い先生方が、M&A実務を新たな武器として活躍しはじめています。スモールM&Aは、株式譲渡に加え、特定の事業を対象とした「事業譲渡」が多く、専門的な知識が必要になってきます。このような業務受託だけではなく、M&Aコンサルタントとして情報発信する先生も増加しつつあります。

 

◆行政書士~町の法律家、よろず相談~

 

官庁への許認可申請から、遺言書作成まで幅広い代行業務を行う方々です。建設業、介護、宗教法人など、それぞれ得意とする分野を持つ先生は、業界情報が集まりやすくM&Aコンサルタントに向いています。

 

本来の業務ではないですが、資金調達や経営のよろず相談を受ける先生も多く、そのような方は事業承継にまで踏み込んでいます。テレビドラマにもなりましたが、行政書士事務所を舞台とした「カバチタレ!」という漫画をご存じでしょうか。まさに町の法律屋さんで、どんな相談でも受けつけます。あのような事務所だと、事業承継や廃業相談なども受けやすく、案件情報が集まってくるのは間違いありません。

 

◆弁護士~赤字会社のM&Aで今後期待大~

 

M&Aを得意とする弁護士は、やはり大手企業(特に買い手)を主戦場としていますが、小規模のM&A分野においても、積極的に対応する先生が増えてきました。法的処理を伴う赤字会社の事業承継などは、やはり代理行為や詐害行為などの問題が発生するため、弁護士さんに優位性があります。再生案件においても、外部にスポンサーを見つけることがセットになるケースは多く、M&Aの業務に近づいていきます。

 

さらに、低価格で気軽に相談を受ける若手の先生も増えています。雑談や経営者の悩みを聞くうちに、事業承継の相談を受けるという状況が起きはじめているようです。筆者も弁護士さんから紹介を受けるケースが増えてきました。

 

◆中小企業診断士~スモールM&Aのオールラウンダー~

 

ほかの士業のように、法律で定められた独占業務はありませんが、財務から法務まで一通りカバーできる方が多く、一人で複数の役割をこなさなくてはならないスモールM&Aアドバイザーには非常に向いています。

 

また、一般企業で企画や営業などの社会人経験を積んだ方が多く、ビジネスデューデリや知的資産評価等の分野に優れた方が多い印象を受けます。

現状への危機感から、参入を決意する人々も

さまざまな士業の方と接して感じるのは、従来の専門業務だけでは報酬が減ってくるだろうという危機感を持っていることです。そのような背景もあり、案件紹介はもとより、一歩踏み込んでM&Aアドバイザーとして活躍する先生もこの1、2年で急激に増えてきました。

 

M&Aにおいては、士業の垣根が取り払われ、顧客の立場で情報やサービスを提供できる方が求められています。スモールM&Aの案件は、まだまだ玉石混交です。M&Aの「知識」と「案件情報」を持つ士業が増えることで、市場が整備され、健全な発展を遂げていくと考えられます。士業は「サムライ業」といわれていますが、M&Aを得意としたサムライが、今後増えていくことを期待します。

 

 

齋藤 由紀夫
株式会社つながりバンク 代表取締役社長

 

株式会社つながりバンク 代表取締役社長 

オリックス株式会社1996年~2012年。16年在籍。 在職中に多くの新規Projectに参画し、東京都、銀行、カード会社などに出向。ベンチャー企業から上場企業まで投融資を実行。経営企画部時代(約8年在籍)に、出資先の株主間調整、合弁契約解消、事業撤退・売却、海外子会社統合、債権回収業務など前向きから後ろ向き案件の対応をこなす。2012年、株式会社つながりバンク設立。スモールM&A市場の普及・拡大をメイン事業とし現在に至る。自らも小規模の事業系投資を実践中。

著者紹介

連載新たな投資分野として注目集める「スモールM&A」の活用術

 

 

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