スモールM&Aは「大廃業時代」の救世主になるか?

前回は、スモールM&Aにおける少数株主対策を取り上げました。今回は、スモールM&Aの今後について考察していきます。

後継者未定の企業は「127万社」にも及ぶ

2020年に行われる東京オリンピックは、56年ぶりの開催となります。前回開催時、つまり1964年における日本人の平均年齢は、なんと20代後半でした。絶え間なく続く経済成長への活力がみなぎる時代であったことがイメージできます。

 

そして、現在の日本人平均年齢は40代半ばとなりました。ちなみに、世界平均は30歳前後です。対象範囲を「社長」に限定すると、さらに高齢化は止まらず、平均で60歳、ボリュームゾーンでは65歳前後といわれています。平均寿命は延びていますが、社長という激務を第一線でこなせる時期はそう長くはありません。

 

◆「127万社」の衝撃

 

M&A業界では「127万社」というキーワードがよく話題にされます。その理由は、2017年秋ごろに経済産業省から発表された、あるデータの影響によります。要約すると、以下のような内容です。

 

●今後10年でリタイア時期を迎える経営者は約245万人
●うち約半数の127万社(日本企業全体の約3割)が後継者未定
●このまま放置すれば約650万人の雇用、約22兆円のGDPが消失の可能性

 

これを機に「大廃業時代」というキーワードがメディアで取りあげられ、その解決策として、外部承継であるM&Aが注目されています。期待値は高いものの、現実問題としてM&Aは事業承継問題の「魔法の杖」となるのでしょうか。

 

◆会社の「終活」も今後は必要に

 

M&Aは、お互いが慎重に相手を見定める儀式です。別のいい方をすれば、需要と供給の均衡点で取引が成立するという市場原理に基づいたドライな側面もあります。当然ながら「127万社」のすべてが、希望の相手を得られるとは限りません。相手が見つからず「廃業」を選択せざる得ない企業が相当数あるのも現実です。

 

近年、人が人生の最期を迎えるにあたって、さまざまな準備や総括をする「終活」を行う方が増えているようです。「法人」においても同じことがいえ、「廃業」は経営者としての資質・美学が問われるところです。利害関係者に迷惑をかけずに廃業することは難しく、いい換えれば「迷惑をかける順番」を選ぶ作業ともいえます。

 

ただし、人の終活との大きな違いが1点あります。それは、人でいう身体の一部、つまり会社の特定の部門を切り離し、新しい嫁ぎ先を見つけられることです。廃業手続き中に、思わぬ強みに気づいてM&Aにつながることは珍しくありません。

事業承継としてのM&Aを「より身近な存在」へ

◆「赤の他人」「よそ者」が会社を救う時代

 

事業を誰かにつなぐため必要な人材は、大きく分類すると、①親族、②従業員、③外部の第三者となります。筆者は、③の第三者承継をメインとしていますが、親族や従業員への内部承継を否定しているわけではありません。可能であるならば、内部承継が理想です。ただし、それぞれが多くの課題を抱え、簡単に進まない現実があります。

 

また、伝統的な業界においては、親族や従業員では新たな施策など打ち出しにくいものです。業界外の「よそ者」が会社を救うこともあります。たとえば、地域活性化のため、自治体がPRをして企業誘致や移住を促進していますが、事業承継問題解決・業界活性化のためには、特定業界が一致団結して、よそ者を呼び込むような仕組みが必要かもしれません。

 

◆地域金融機関への期待

 

個人的には、スモールM&Aの普及において地域金融機関、特に第二地銀(40行)信用金庫(261庫)には大きな期待を寄せています。転勤が特定エリアで限定されている地元金融機関には、経営者の風評、ネガティブ情報、取引先とのつながり、強み弱みといったデータが蓄積されています。筆者が駆け出しの金融マンであった頃、信金OBの方にさまざまな情報提供をいただき、何度も助けられたことが今でも思い出されます。

 

近年、地銀・信金にも事業承継、M&Aをサポートする部門ができつつあります。現在は、外部の専門会社へ顧客を紹介することがメインのようですが、もう一歩踏み込んで、主体的にこの問題解決に取り組めるはずですし、そのポテンシャルは十分にありますので、今こそ踏み込んでいくべき時期です。

 

◆M&Aのコモディティ化で定着へ

 

M&Aは、上場企業や大手企業の主戦場でありましたが、実際はとても身近なものであることに国や企業、個人が近年気づきはじめました。おそらく、この先10年でM&Aがより広まり、言葉も概念も変わってくるかもしれません。不動産のように、売り手と買い手をマッチングする事業者や、士業やコンサルタントでM&Aの実務をこなせる方も急増していますので、さらに身近になることでしょう。

 

そして忘れがちですが、M&Aはリスクを取って経営を引き継ぐ優秀な買い手が存在しないことには成立しません。買いたいと希望する方はとても多いですが、実際に経験値があり、その資格がある方の層はそれほど厚くないと感じています。M&Aに限らず、投資に見込み違いや失敗はつきものです。その経験値を活かし、経験を共有化することができれば、本格的にスモールM&Aは活性化すると思います。

 

M&Aという言葉から、ハゲタカや乗っ取りなどという負のイメージを持つ方も少なくありません。筆者の身内でさえも、仕事内容を正しく理解していないと感じることがあります。

 

しかし、中小企業オーナーがメインプレーヤーのスモールM&Aという市場では、実際はとても友好的に取引が行われています。そのイメージを少しでも払拭できればという想いで、42回のフルマラソンのような連載をお引き受けさせていただきました。スモールM&A活用術は今回で最終回となります。ご愛読いただきありがとうございました。

 

 

齋藤 由紀夫

株式会社つながりバンク 代表取締役社長

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株式会社つながりバンク 代表取締役社長 

オリックス株式会社1996年~2012年。16年在籍。 在職中に多くの新規Projectに参画し、東京都、銀行、カード会社などに出向。ベンチャー企業から上場企業まで投融資を実行。経営企画部時代(約8年在籍)に、出資先の株主間調整、合弁契約解消、事業撤退・売却、海外子会社統合、債権回収業務など前向きから後ろ向き案件の対応をこなす。2012年、株式会社つながりバンク設立。スモールM&A市場の普及・拡大をメイン事業とし現在に至る。自らも小規模の事業系投資を実践中。

著者紹介

連載新たな投資分野として注目集める「スモールM&A」の活用術

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