2018年6月、改正医療法の施行によって、医療機関のWebサイトの掲載内容を含む「医療広告」に規制が入ることになりました。虚偽及び誇大広告によるトラブルが後を絶たなかったためです。本連載では、着実な集患を実現する「適切な医療広告」の作成術・発信術を探ります。今回は、「病院のブランディング」が集患以外に果たす重要な役割を説明します。

口コミや噂話も「病院のブランディング」の一種だが…

近年、ロゴマークやパンフレットを通して視覚的なブランディングに努める病院が増えています。患者が病院を選ぶ時代に、どれだけ病院に親しみやすさを感じてもらえるかを重視しているためでしょう。しかし、中には国民皆保険の日本の医療制度の下でこういったブランディングを行うことに否定的な立場の医療機関もあるようです。

 

今回は病院やクリニックが行うブランディングの持つ意味について少し考えてみたいと思います。

 

 

病院やクリニックのブランディングは、今に始まったものではありません。「○○病院の○○先生はとても腕がいい」「○○にかかった時は○○病院で診てもらうのが一番いい」など病院や医師に対する口コミや噂が昔からよくあるのはご存知でしょう。

 

もしかするとブランディングに否定的な病院や医師たちは、そういった噂話が間違った形で伝わることを危惧しているのかもしれません。とはいえ、そういった口コミや噂話に患者が影響されてしまうのもまた事実です。

 

実際、医師や病院、クリニックの中には書籍やWebサイト、講演会などの方法を用いて、積極的に情報を発信している方も多くいます。病気の啓蒙に努めることで誤った情報が広まることを防ぎ、患者との信頼関係を築き、維持していくことが必要となったためでしょう。

 

インターネットの発達により、患者の自発的な情報収集が容易になった現在では、医師や病院もブランディングを完全に無視するわけにはいかないのかもしれません。

病院として「何が・どこまでできるのか」をPR

では、医師や病院はブランディングにどのように向き合っていくのがよいのでしょうか?

 

重要なのは、患者が病院やクリニック、医師に何を求めているのか知ることが重要です。当然のことながら、患者が病院やクリニック、医師に一番に求めるのは病気の治療です。ただし、病気を治すという点で病院を差別化することはとても難しくもあります。どんな医療機関も病気を治すことに全力を尽くすのは変わらないからです。

 

しかし、その治療の過程にこそ、患者が次に求めるものが眠っています。治療の際に医師にできる限り真摯な対応を求める患者もいれば、できるだけ体に負担のかからない治療を求める患者もいます。かと思えば、多少高価でも最先端の医療による早期の治療を求める患者もいます。患者によって、求めるものは少しずつ異なってくるのです。

 

もし手術や長期に渡る治療で入院するなら、患者やその家族が病院の施設や設備を気にするのは当然です。

 

そこで、病院や医師が患者が求めるものに対して何をどこまで提供できるのか、きちんと答えていく必要があるのでしょう。そして、こういった情報を「見える化」したものが、それぞれの病院のブランディングにつながっていくのではないかと思います。

病院・クリニックのブランド化は病院関係者の利益にも

さて、ここまではあくまでも患者と病院という視点から、病院のブランディングについて考えてきました。

 

少し他の視点からも考えてみましょう。ここでよく考えてほしいのは、「病院は一体誰のために存在するのか」ということです。病気に悩む患者のために存在するのは当然のことですが、医師や看護師、医療事務などその病院に勤務する人々のために存在するのもまた事実です。

 

 

つまり、病院のブランディングはそこで勤務するスタッフのモチベーション向上や、就業希望者の獲得にもつながるということです。地域に根ざし、その地域の人々に愛されることで仕事の責任感が増す医療従事者もいれば、最先端の医療技術に魅力を感じる医療関係者もいるのです。適切な病院のブランディングができれば、患者だけでなく、そこで働く病院関係者のためにもなるのが大きなポイントです。

病院の情報が溢れる現代…ただ存在するだけではダメ

医師や病院の情報が溢れる今の時代、ただ泰然としてそこにあるという姿勢を貫くのは難しいことなのかもしれません。患者が何を求めているのかを理解し、患者のために何を提供できるのかを発信していくこと、それが病院のブランディングへとつながり、ひいては患者と病院との信頼関係にもつながる、そういう時代がやって来たのだと思います。

 

当然それは患者に対してだけではなく、その病院で働く医療従事者との関係にも同じことが言えるのかもしれません。

 

口コミや噂話に触れましたが、医師や病院によっては書籍やWebサイト、講演会などの方法を使って患者への周知に努めている方々も多くいます。そのやり方が病院のブランディングにどのようにつながっているのか、メリットやデメリットはないのかについてはまた別の記事でお伝えしたいと思います。

 

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