2018年6月、改正医療法の施行によって、医療機関のWebサイトの掲載内容を含む「医療広告」に規制が入ることになりました。虚偽及び誇大広告によるトラブルが後を絶たなかったためです。本連載では、着実な集患を実現する「適切な医療広告」の作成術・発信術を探ります。今回は、勝ち残るクリニックのWebマーケティング戦略を紹介します。

待っているだけでは患者は来ない!

「思うように新規患者数が伸びない」「患者数が年々減っている」・・・。近年の病院経営でよく話題になっている理事長、院長または事務長共通の悩みです。

 

インターネットが発展し、スマートフォンやタブレット端末からその情報に容易に触れられるようになった今、自分に合った病院を見つけるために、患者がWebでの検索を中心に情報収集を行うことが主流となっています。情報収集する中で、検索上位に上がってくる病院・クリニックは多くの人が見ているだけに信頼性もあるだろうという心理も働き、患者のWebサイトへの流入が一極集中する傾向があります。

 

従来の駅看板広告やチラシ、雑誌広告などは、ネットの情報に比べて他の病院との比較検討が難しいため、集患のための宣伝としては段々と通用しなくなっているのが現状のようです。

医師に突きつけられる厳しい現実とは?

しかし、そんな外部環境をよそに大学の医学部人気は今も沸騰中で、とある調査では、2017年の医学部志望者数は14万人を超え、10年前より4割近く増えているといいます。大学の定員数に対する志望倍率はおよそ15倍もあり、狭き門となっています。

 

昨今話題になった東京医科大における、文科省による裏口入学や女性受験者の減点問題などの問題が多発する背景も、医学部人気が後押しをしているかのようです。

 

しかし、高収入に加え、地位や名誉を保証された未来の医師になるために日夜頑張っている志望者の夢を壊すようですが、医師を取り巻く現実は厳しいものとなっています。

 

 

厚生労働省の発表によると、2018年の医師国家試験の合格者は、1万10人の受験者に対して9,024人で、90.1%という高い合格率になっています。受験者数の差はあれど、合格率が20%程度の司法試験、10%程度の公認会計士試験と比べると、安定的に医師の数は増加していることがわかります。

 

医師の増加はすなわちライバルの増加を意味し、病院を開業してみたものの、その競争で医師をはじめとする現場は疲弊し、医療サービスの劣化を招き、その結果Web上の口コミもネガティブ情報が広がるどころか、患者が集まらず青息吐息、華やかな世界に見えても、それが医師の現実なのです。

 

競争があれば、当然勝ち組と負け組に分かれます。ただ手をこまねいているだけでは先が見えず、Webサイトを活用した集患に努める医師も増えています。

 

しかし、改正医療法により医療広告のガイドラインが厳しくなったことで、思うようにWebサイトで宣伝ができず、いよいよ手詰まりな状態に・・・。

 

そんな医師たちが一縷の望みをかけて取り組み始めたのが、Webマーケティングなのです。

「Webマーケティングへの投資」が集患につながる

このような理由から、医師や病院・クリニックは、既存患者だけでなく、将来の見込み患者に対して病院・クリニックの認知度、信頼度を上げるため、Webへの取り組みを積極的に行うことが現在のトレンドとなっています。

 

いわゆる「Webマーケティング」と呼ばれる手法です。

 

従来の宣伝方法とは異なり、時や場所を選ばず展開でき、病院・クリニックのある地域だけでなく、より広い地域の患者にアピールできることが強みとなっています。

 

また、患者を主体にしたWebへのテコ入れを行えば行うほど、患者からの信頼を獲得できる他、検索順位を上げることができるため、Webマーケティングに注力することがさらなる集患につながると期待している医師たちが激増しています。

医師やスタッフのブログを作っても、患者は無関心!?

集患のためには患者の信頼を得ることが近道・・・そう考える病院は多いようで、医師や病院スタッフのブログを積極的に公開しているケースをよく目にします。

 

しかし、実際にブログを見てみると、医療の内容とは程遠い内容ばかり。医師やスタッフのバースデーパーティや飲み会の様子など、何のためのブログなのか意味をはき違えている情報が少なくありません。

 

患者にとって病院は治療の場です。医師やスタッフの仲むつまじい様子を見せられても、自分にプラスになる情報は何もありません。

 

それよりも具体的な治療の情報や、医師として最先端の知識を得るためにどんな学会に参加し、何を得ているのかを教えてほしいという気持ちが強いのです。スタッフに対して教育研修をした情報もいいでしょう。

 

患者は安心して自分の身を任せられるのかを判断するためにWebで情報収集しています。良かれと思って公開したブログが全く集患につながらず、本末転倒となってしまう場合もあるようです。

「傲慢な態度」が見えるWebサイトは絶対にNG!

医師と患者は、病気を治す側と治される側、目線の違いはどうしても生まれます。例え役に立つ病気の解説とはいえ、「上から目線」では気持ちのいいものではありません。

 

病気を治療してやっている、そんな医師の傲慢な気持ちが垣間見えれば、患者は一気に遠ざかります。その病院に行ったところで大上段に構えられ、コミュニケーションが十分に取れず、聞きたいことも聞けず、消化不良で終わることが見て取れるからです。

 

患者にも感情があります。病気という状況にあるからこそ、普段よりも感情的になっている部分もあります。

 

「お医者様」という姿勢が透けて見えるWebサイトは、やはり集患につながりにくいのです。

「患者が必要とする情報」を適切に伝えているか?

一方、多くの患者をWebサイトに集め、確実に集患につなげている病院もあります。

 

共通するのは、患者のニーズを考え、求める情報を提供しているWebサイトです。眼科医であれば、目の悩みや目の病気に対する対処法、歯科医であれば歯に関する情報、そして費用に関する十分な解説。当たり前のことのように思えますが、これらの情報を患者にもわかりやすく丁寧に説明しているサイトばかりかといえば、必ずしもそうと限りません。

 

ニッチな分野も狙い目のようです。「患者が少ないから後回し」ではなく、「ライバルが少ない今こそチャンスだ」と考えられる医師がWebサイトをうまく使って、勝ち抜いています。多くの診療科目を看板に掲げるより、自身の強みに特化した病院・クリニックを展開しているところは集患に困っていないとよく聞きます。

 

 

医師と患者の関係は、病気を「治す側」と「治される側」であると同時に、今後はWebサイトを「見つけられる側」と「見つける側」になっていくのです。医療広告に対して厳しい規制が課せられたこともあり、適切な情報発信ができない病院・クリニックは自然と淘汰されていくでしょう。

Webマーケティング成功の「3つのポイント」とは?

しかし、Webマーケティングに取り組んだからといって、すべての病院・クリニックがその恩恵を受けられるというわけではありません。

 

集患のためのWebマーケティングには、その成否を分けるポイントがあります。

 

まず、医療広告規制をよく理解しているか、という点です。2018年6月に施行された改正医療法により、医療機関のWebサイト上の掲載内容が「広告」とみなされ、規制されることになりました。虚偽広告、比較優良広告、誇大広告、患者などの主観に基づく体験談などが禁止されています。そのため、その線引きをきちんと理解しているかどうかで、Webサイトの内容が大きく変わってくることとなります。

 

次に、Webマーケティングの特性を理解しているか、という点です。Webマーケティングでは、ユーザー動向を様々な数字から知ることができるため、Webサイトのコンテンツがユーザーを満足させているのかどうかを把握することができます。その分析を元に、未来の患者であるユーザーが本当に知りたい情報を揃えられているのかどうかが、Webサイトの成否を分けます。

 

三番目に、ユーザーの求める情報を理解しているのか、という点です。ユーザーがWebサイトで情報収集を行うのは、自分の知りたい情報を知るためです。たとえ治療に効果のある医療機器だとしても、そのスペックを誇るだけでは、その必要性がユーザーには伝わりません。伝えたい情報をユーザーに届ける工夫をしなければ、どんな情報も効果がないのです。

 

マーケティングの基本は、顧客の心理を掴むこと。病院・クリニックの集患も同じです。患者の心理をよく理解し、それを掴む努力をしなければ、Webマーケティングも意味を成さないのです。

Web上で患者のニーズを理解し、いち早く応える

集患するためには、Webサイトの活用が必要不可欠となっており、今後その傾向はさらに強まるものと見られます。前述したとおり、もはや待っているだけでは患者は来ないのです。患者自らアクションを取り、病院・クリニックを選んでいるということを認識する必要があるでしょう。

 

同時にそれは、Webを通じて患者に見つけてもらえない病院が今後淘汰されていくという意味でもあります。

 

Webでの検索が主流となるならば、検索結果に広告として表示されるリスティング広告の効果にも期待したいところですが、患者がWeb検索の経験を積むことで、広告としての認識が広まり、表示されるWebサイトへの警戒心が高まっています。今後は今まで以上に効果を上げることが難しくなっていくでしょう。

 

これから求められるのは、Web上での病院・クリニックのブランディングです。病院の伝えたい情報とその情報を知りたい患者をマッチングさせることで、病院あるいは理事長、院長が、患者にどのような恩恵、つまり治療を提供できるのかを、正確にわかりやすく伝えることが最重要課題となります。

 

患者のニーズを理解し、そのニーズに真っ先に応える病院・クリニックこそが、この集患戦国時代を生き抜くことができるのです。

 

 

 

佐藤大記

幻冬舎ウェブマ

 

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