前回は、賃貸不動産を活用した節税対策の成功事例を紹介しました。今回は、賃貸不動産を個人と法人で共有することで、なぜ相続税を減額できるのかを見ていきます。

賃貸不動産を個人と法人で共有して「頭金問題」を回避

今回も、基本的にはチームで対応する相続税対策です。もしかしたら「すべてお任せできるなら、わざわざ知る必要がない」と思われる方もいるかもしれません。しかし、最終的にやるかやらないかを決断していただくのはみなさんです。

 

賃貸不動産を所有して相続税を節税したいと思っていても、人によっては頭金がない場合もあります。たとえば、土地を多く持っている地主の方などで現金をあまり持っていないという方がたまに見受けられます。

 

また、もしものときに備えて、なるべく現預金を残しておきたいという方もいます。この感覚を持たれている方は多く、私もその気持ちは理解できます。

 

そこで、この頭金の問題を回避する1つの方法として、賃貸不動産を個人と法人とで共有し、法人で社債を発行することを考えます。

本来の目的は、賃貸不動産の所有による相続税の減額

まずは同族法人を設立します。被相続人の財産にしないため、出資者は相続人の誰かにします。代表取締役および取締役も相続人から選出します。賃貸不動産を購入しますが、この物件の選び方は連載第3回で紹介した5つのポイントを踏まえて選定します。

 

今回は現金がないもしくは使わないことを想定しているので、個人は銀行から借入をして、法人は社債を発行して資金を手当てします。社債を購入してくれる投資家は第三者から募ります。

 

手配した現金を使って不動産を購入しますが、実はこの方法はこのときの担保設定に特徴があります。個人名義の土地と建物には銀行からの借入のために担保を設定しますが、法人名義の土地にも個人借入分の担保を設定するのです。

 

その代わり、個人は家賃の中から法人に担保設定料を支払います。法人は、個人から得た担保設定料と家賃を原資として投資家に社債利息を支払います。これでお金の流れは丸く収まります。

 

個人だけで賃貸不動産を所有するときと異なるのは、担保設定料を負担することです。法人に担保設定料を支払うために資産の形成は期待できませんが、それは本来の目的ではありません。

 

本来の目的は、賃貸不動産を所有することによる相続税の減額です。このシステムをうまく循環させていれば、相続が発生したときに、銀行からの借入と賃貸不動産の相続税評価額との乖離が節税になるということになります。

 

たとえば、6億円の賃貸不動産を個人が4億円負担し、法人が2億円負担して購入していれば、個人の借入は4億円です。賃貸不動産の評価額はそれだけで半額程度、つまり3億円ほどに下がることが期待できます。個人の持ち分は3分の2ですから、2億円の評価額になりました。つまり、2億円の評価額から4億円の借入を差し引いた結果、マイナスの財産として2億円が計上されます。これが他のプラスの財産と相殺されるので、相続税の節税につながるのです。

本連載は、2013年11月27日刊行の書籍『大増税時代に大損しない相続税対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

大増税時代に大損しない 相続税対策

大増税時代に大損しない 相続税対策

北村 英寿

幻冬舎メディアコンサルティング

相続税対策を成功させるためには、実行に移してからの最終的な「出口戦略」まで考える必要があります。 「出口戦略」とは、相続税対策のために購入した賃貸不動産の最終的な顛末を考えることです。 相続発生後は、基本的にそ…

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