今週(9/3〜9/9)の国際マーケット展望をお届けする。新興国諸国への通貨圧力が続くなか、アルゼンチンはIMFヘ支援を要請した。トルコ・アルゼンチンの両国は20年前のアジア通貨危機を想起させるほどの危機的状況にある。アジアでは経常収支で赤字の目立つインドネシアルピアが下落しているが、新興国でも実体経済の強いベトナムなどへの影響は限定的であると考えられる。

今週(9/3〜9/9)の国際マーケット展望

 

・新興国通貨下落…米国経済の堅調さを背景に、継続安全運用で利回り確保したい投資家心理が働き、資金引き揚げが加速か?

 

・アルゼンチンペソ、トルコリラは激しく下落…アルゼンチンはIMFに支援要請。両国は20年前のアジア通貨危機を想起させる危機的状況に。

 

・アジア新興国の状況…対外収支の赤字が目立つインドネシアルピアが下落。一方で、ベトナムのような実体経済の強い新興国通貨への影響は、あっても限定的と見られる。

 

・今週のポイント…新興国=リスクと捉えるのは危険

新興国通貨下落の背景に、米リスクフリーレートの上昇

このところ、トルコリラやアルゼンチンペソなど、新興国諸国の通貨への下落圧力が目立っている。8月は、これらの通貨の下落がクローズアップされた月だったといえる。

 

米国経済の堅調さを背景とした利上げが継続する見込みであることと、米ドルでのリスクフリーレートが上昇していることで、リスクを取って新興国に投資するよりも、安全に運用するほうが利回りを確保しやすいことから、新興国から資金が引き揚げられるとの観測が背景にある。

アルゼンチン、トルコ…20年前のアジア通貨危機を想起

アルゼンチンやトルコは20年前のアジア通貨危機を思い出させるほどの状況である。通貨は、それぞれ1年前と比較して40〜50%程度も下落し、両政府は通貨防衛策を発表しているが、目立った効果をあげられていない。

 

アルゼンチン中央銀行は8月30日に、政策金利を年45%から60%に引き上げた。しかしアルゼンチンペソは一時1ドル=42ペソと過去最低水準に下落した。先週末までに1ドル=37ペソ程度まで値を戻したが不安定であることに変わりはない。アルゼンチンはIMF資金の支援を受けることを表明し、4日にはIMFのラガルド専務理事とドゥホブネ財務相が会談する予定まで発表された。

 

 

アジア新興国…ルピアが下落も影響は限定的か?

トルコやアルゼンチンほどの下落率ではないが、アジアでもインドネシアルピアが下落している。インドネシアの対外収支、特に経常収支の赤字が目立つことが理由と考えられる。ただ、アジアを発端とし、インドネシアルピアの対外信用力が弱かった20年前とは状況が異なると筆者は考えており、他のアジア通貨への影響は大きくはならないと予測する。

 

たとえば、ベトナムは、新興国市場においてもっとも質が高く、経済成長力もしっかりとした市場である。外貨準備高も大きく、経常黒字化までした国の通貨にまで、今回の影響が及ぶのは道理がない。仮に、米中貿易摩擦が長期化したとしても、実体経済の質の高い成長がショックを吸収するクッションの役割を果たすだろう。

 

また、もともと経済成長に占める輸出分野の貢献が限定的であること、加えて、マクロ経済的にも、社会的にも、政治的にも不安要素が少ないことは、ベトナム経済ひいては株式市場のダウンサイドリスクが限定的であることを示唆している。

新興国=リスクと捉えると危険

実体として問題を抱えた国の通貨が資金逃避懸念から売り圧力にさらされることと、そうではない国まで、新興国であることを理由に資金逃避懸念を持たれることは同じではない。

 

新興国と一口に語ることは、危険である。アジア市場は、短期的には投資センチメント悪化の影響を受け続け、市場の懸念が投資を慎重にさせるかもしれないが、堅調なファンダメンタルズ、長期的な経済の成長の足取り、企業収益および株価の調整により相対的に低下したバリュエーションを確認すれば、投資心理は早晩改善することになるだろう。

 

 

 

長谷川 建一

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO

 

 

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    本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

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