簡単には手放せない、生活基盤となる土地を守る特例
<ココに注意!>
1:事業や居住のために使っていた土地を相続する場合は、減税の特例があり、2015年度より条件が緩和された。
2:居住用は330m2、事業用は400m2まで、評価額を減額できる。
3:居住用地の特例と事業用地の特例は併用できる。
被相続人が事業や居住のために使っていた土地は、相続人にとって生活基盤財産であり、納税のために簡単に手放すことができない事情があります。そこで、相続した土地のうち、居住用は330m2まで、事業用は400m2までに対し、一定の割合で土地の評価額を減額できる制度があります。この特例を「小規模宅地等の特例」といいます。
この特例の対象区分は、「特定事業用宅地等」「特定居住用宅地等」「特定同族会社事業用宅地等」および「貸付事業用宅地等」のいずれかに該当する宅地等となっています。
①80%の減額適用
特定事業用宅地に該当する場合は、親の事業を子が引き継ぐこと等が要件となり、居住用の土地は相続後も継続して相続人が居住することなどが要件となります。
②50%の減額適用
貸付事業用の土地は200m2までが限度で、相続後も継続して貸付事業を行うことが要件となります。
居住用の特例と事業用の特例の「併用」が可能に
80%の減額を受けることができる居住用の土地330m2と事業用の土地400㎡については、従来であれば、合わせて400m2までとされていました。
しかし、2015年1月1日より、条件が緩和され、併用して減額を受けることができるようになりました。よって合わせて730m2まで80%減額できるため、同居して家業を継ぐ相続人のメリットが大きくなったといえます。
「小規模宅地等の特例」を活かせば大幅な節税に
遺産分割によって節税する方法の1つに、この「小規模宅地等の特例」をうまく利用することが挙げられます。
居住や事業を継続する人が相続することで適用でき、減額が大きくなるので、相続税を減らすことにもつながります。
居住や事業を継続する人が複数いる場合は、誰から優先して特例を適用させるかを検討する必要もあります。たとえば、父の死に伴って母と子が相続する場合、母には配偶者の税額軽減を適用し、子から優先して小規模宅地等の特例を適用させます。そして、母が死亡したときの二次相続では、再び特定居住用宅地等として減額を受け、トータルでの節税を実現します。
なお、居住用の土地と事業用の土地が別にあり、路線価が違う場合は、どちらに適用したほうが節税額が大きくなるかを比較してから選択するようにします。
<キーワード>
小規模宅地(しょうきぼたくち)
被相続人の事業または居住の用に供されていた宅地等のうち、一定の面積までを指す。居住用は330m2、事業用は400m2まで、貸付用は200m2まで、一定の割合で減額できる「小規模宅地等の特例」を使うことで、納税額を減らすことができる。
曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士