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M&Aで成功している投資家が「時間」を大切にする理由

前回は、M&Aの現場によくある事例を「ビジネス法則」に当てはめながら検証しました。今回は、M&Aで成功している投資家が「時間」を大切にする理由を見ていきます。

「成約期間」と「関係者数」は反比例する

前回の記事(関連リンク参照)で、著名なビジネス法則にM&Aの成功法則を当てはめて考察してみたところ、筆者自身にも多くの気づきがありました。今回は、M&Aの現場において最大の課題である「時間」について成功法則を導き出したいと思います。

 

◆「盆暮れ正月」と「年度末」にM&Aは加速する

 

前回、M&Aの進捗は常に遅延するということを「ホフスタッターの法則」から説明しましたが、逆に早まる時期があります。それは、お盆前、正月前、決算期が集中する3月です。小規模の場合は、関係者がその気になれば一気にスピードは加速します。

 

筆者も、今年2018年は7月下旬から8月上旬にかけて、3件ほど実行できました。成約までの期間はそれぞれ、半年、三ヵ月、一ヵ月です。時期が集中した要因として「夏休み前に決めてすっきりしたい」という心理的作用が働いたのは間違いありません。人間誰しも、気になることはクリアにして休暇を過ごしたいものです。この心理効果を活用してクロージング時期を決めるのもひとつの手法かもしれません。

 

◆M&Aの「成約期間」と「関係者数」は反比例する

 

M&Aの関係者は、①株主、②社長、③役員、④担当者、➄アドバイザー、⑥情報仲介者の6つに分類されます。この関係者たちが、売り手・買い手それぞれに存在します。多いときには、それぞれ10名以上となるケースも珍しくありません。

 

ミーティング、面談の調整をしても遅々として進まないケースがあります。また、案件の規模が大きくなると複数人の「⑥情報仲介者」が存在するため、ポジションや報酬配分で揉めることがあり、案件が流れてしまうこともあります。

 

スモールM&Aの場合は、①②、③④がそれぞれ同一人物で各1名、さらに➄⑥も同一人物で1名、合計3名で案件を進めるケースもあります。当然ながら、スピードも結論も早く、成約確度も高まってきます。まず案件を進める前に、関係者が何名いるのかを確認してから、優先順位を決めることも必要かもしれません。

成功する投資家は、関係者の「時間」を奪わない

◆「縁」と「運」を引き寄せる投資家の時間感覚

 

スモールM&Aにおいては、ほぼ即決で次々とM&Aを決める投資家もいます。もちろん、すべての案件に手を出すわけではありません。断るときほど早く、理由を明確に伝え、自分や関係者の「時間」を奪うことに配慮しているのです。このような方には、多くの情報が集まってきます。それが「縁」の数を増やし、結果的によい案件へと導かれ、人と出会い「運」をたぐり寄せるのだと感じます。

 

過去に筆者が経験した案件では、情報が入ってから契約・実行まで1週間というケースがありました。ここまでの短期間での実行となったのは、買い手がすでにその業界を熟知していて、リスク、そしてその許容度を瞬時に判断できる能力を持っていたことが大きな要因でしたが、今でも強烈な印象が残っています。

 

◆トップ面談のタイミング

 

M&Aの流れとしては、秘密保持契約書(NDA、CA)の締結後、決算データ等が記載された資料(IM)の提出、質疑応答を経て、「意向表明書(LOI)」が買い手から売り手に提出されます。LOIは、法的拘束力はないものの、譲渡金額、譲渡希望日、その他条件などが記載されています。

 

一般的に、この前後のタイミングでトップ面談が設定されます。ここまで、場合によっては数ヵ月かかることもあります。ところが、このトップ面談で破談になるケースも少なくありません。スモールM&Aの場合は、お互いに創業者で個性的な方が多いのが特徴です。相性については正直、面談しなければ分かりません。仮に、アドバイザーがその場をうまく取り繕ったとしても、相性が合わないM&Aは破談になるか、後々問題が起きることが多いと実感しています。

 

そのような経験から、筆者の場合は可能な限り、早い段階でトップ面談をセットします。買い手の本気度を感じたときには、NDAを待たずして引き会わせることもあります。多くの情報から偏見を抱く前に、相性判断を行ってしまったほうがよいのです。

 

◆M&A熟練者は、聴き上手

 

M&Aの成功者には、押し出しが強い、雄弁といったイメージがあるかもしれませんが、ベテラン投資家には寡黙で聴き上手な方が多い印象です。

 

先日幸いにも、著名なM&A投資家と売り手であるオーナーとの面談に立ち会うことができました。その投資家は、まず自らのプライベートな話をして、相手の緊張を和らげたあと、相手が心を開いたと思われるタイミングでスムーズに聞き役に回って、必要な情報をすべて得るといった、まさに名人芸のようなやりとりを行いました。マスコミやネットで拝見するイメージとは、まるで正反対の穏やかで紳士的な態度にも驚きました。

 

M&Aのデューデリジェンスの重要な要素に「嘘を見抜く」ということがあります。データだけでは分かりえない情報は、相手の目を見て、言葉を聴いて判断するしかないのです。そして、聴き上手な投資家は意思決定までの時間が早いのが特徴です。投資の軸、スタンスが決まっているからです。

 

仕事柄、ビジネスで成功している方々に会う機会は多いほうですが、その方々が大事にしていることはやはり「時間」です。M&Aでは、効率化しながら本質を見抜くための「工夫」や「独自ルール」が求められます。スローペースで案件を進めているときに、70代のベテラン投資家から諭された言葉が今でも耳に残っています。

 

「本件は真剣に検討します。ただ、少し急いで欲しい。申し訳ないが、君と私の時間価値は、圧倒的に違う。もし長生きをしても、心と体がベストな時期はそう長くはない」

 

その言葉を聞いて我に返り、最優先で案件対応したのは言うまでもありません。

 

齋藤 由紀夫
株式会社つながりバンク 代表取締役社長

株式会社つながりバンク 代表取締役社長 

オリックス株式会社1996年~2012年。16年在籍。 在職中に多くの新規Projectに参画し、東京都、銀行、カード会社などに出向。ベンチャー企業から上場企業まで投融資を実行。経営企画部時代(約8年在籍)に、出資先の株主間調整、合弁契約解消、事業撤退・売却、海外子会社統合、債権回収業務など前向きから後ろ向き案件の対応をこなす。2012年、株式会社つながりバンク設立。スモールM&A市場の普及・拡大をメイン事業とし現在に至る。自らも小規模の事業系投資を実践中。

著者紹介

連載新たな投資分野として注目集める「スモールM&A」の活用術

 

 

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