今週(8/13〜8/19)の国際マーケット展望をお届けする。トルコリラ急落を受け、政府の対策による回復の可能性はあるのか、市場の見立てに注目。また、下落の連鎖が市場に与える影響についても解説する。

今週(8/13〜8/19)の国際マーケット展望

 

・トルコリラ急落のきっかけは、先週10日に米トランプ大統領が発信したツイート。トルコからの輸入関税引き上げを承認したという内容。

 

・トルコは外為準備高が少なく、トルコ中銀が為替介入することは不可能であることに加え、現状のエルドアン政権においては、物価上昇に対する金融引き締め策も困難…との厳しい見立てを市場はしており、トルコリラは、下値が見えない状況。

 

・今週の注目ポイント…トルコにエクスポージャーを多く持つ銀行株の下落と、そこから派生する市場の連鎖反応には注意が必要。

未だ下値の見えないトルコリラ…市場は現政権に嫌気

先週10日、トランプ大統領がトルコからの輸入関税についてアルミニウムを20%、鉄鋼を50%に引き上げることを承認したとツイートし、これをきっかけに外為市場では、トルコリラが、1米ドル=6.44リラと1日で約16%値を下げた。

 

先のトルコ大統領選で再選され、事実上の独裁的な力を得たエルドアン大統領が、金融政策にも関与する姿勢を見せていることで、トルコ中銀が大幅な利上げに踏み切ることや、物価上昇への対処として金融引き締め策を採ることは、不可能と目される。トルコの外貨準備高が少なく、トルコ中銀が為替介入することは不可能と市場に見透かされている点も、リラの下値を見えにくくしている。

 

 

エルドアン・トルコ大統領は、10日にトルコリラ防衛を国民に訴える演説をし、アルバイラク財務相も中央銀行の独立性や財政規律の強化を盛り込んだ新経済政策を発表した。しかし付け焼き刃感は否めず、市場の評価はいまひとつで、トルコリラの防衛策としては、効果は限定的だろう。急成長する新興国のなかでも優等生と目されたトルコだが、エルドアン政権が長期独裁化するなか、投資家の信認は失墜してしまった。

トルコにエクスポージャーを持つ銀行株の下落が連鎖

トルコリラの急落が、世界に波及することが懸念される。英フィナンシャル・タイムズの記事は、ECBが、トルコにエクスポージャーを大きく持つ欧州の銀行の業績を懸念していると伝えた。欧州には、不良債権比率の高さを懸念される民間銀行が一部にあり、トルコ情勢の悪化が信用不安の引き金になりはしないか、との見方もくすぶる。

 

そのため、10日の欧州株式市場では、トルコへのエクスポージャーの大きい銀行株を中心に下落。同様に米国株式市場でも、欧州市場での銀行株の下落が連鎖する形で、銀行株が売られた。

米中貿易摩擦ほどのインパクトはない?

米主要企業の業績は歴史的高水準にあり、米国経済のファンダメンタルズは良好だが、市場はいまひとつ楽観論に与(くみ)することができないでいる。

 

今回の件を受けても、米国経済の経済の腰は予想以上にしっかりしている、という筆者の意見に変わりはない。ただ、グローバル化が進むなかで、市場の連鎖反応は、常に想定しておかねばならない。トルコ情勢は、米中貿易摩擦ほどの大規模なインパクトはないと考えるが、新興国売りの連想が働き、メキシコや南アフリカにも同様に売り圧力が掛かっている。市場の先行き不透明感を強める“かく乱要因”としては、注意を払っておく必要があるだろう。

 

 

長谷川 建一

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO

 

 

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    本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。


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