今週(8/4〜8/10)の国際マーケットレポートをお届けする。市場は、史上最高水準の企業業績など好調な経済状況を示しつつも、貿易摩擦、米国債利回り上昇の懸念もくすぶる。しかし、リスクオンに転換する兆候が現れていることにも注目だ。

今週(8/4〜8/10)の国際マーケットレポート

 

・米経済は続いて好調。市場は、S&P500種で史上最高値を一時更新、VIX指数も11を下回るなどリスクオンに転換する兆候が?

 

・アジアの株式市場…日経平均株価は、小幅な円高のなか上値の重い展開。上海総合指数は中国7月CPIが市場予想を上回り一時反発もあったが続かず。

 

・今週の注目ポイント…テスラの非上場化を示唆したイーロン・マスクCEOのツイートは、相場操縦の疑いも?

 

・来週の展望…ウォルマートなど小売大手の決算予定。Back to School商戦を控え、小売業の動向に注目が集まる。

引続き好調の米経済 S&P500種で史上最高値を更新

今週の米国株式市場は、米中貿易摩擦への懸念や米国債利回りの上昇が嫌気され、上値は重い一方、決算発表した米企業の業績は良好だったところが多く、下値は支えられ、往って来いの展開となった。

 

 

米国が160億ドルにのぼる中国からの輸入製品に25%の追加関税をかけると発表したことに対し、中国側は同規模の報復関税を適用するとの発表。米中貿易摩擦が激化することへの懸念が強まる。このため、キャタピラーやボーイングなど中国への輸出額の大きい企業への売り圧力が強まり、関連銘柄も売られ、これがNYダウへの重しとなった。

 

一方で、米企業の4-6月期決算では、市場予想を上振れした企業数が、2009年第3四半期以来の最多を更新。非常に好調な経済状態は、企業業績からもうかがえる。S&P500種は、7日には今年1月につけた史上最高値を一時更新、CBOEボラティリティー指数(VIX)も今年5月以降で初めて11を下回り、リスクオンに転換する兆候が出てきており、注目だ。

中国7月CPIは市場予想を上回るも、反発続かず

米国株式市場が揉み合うなか、アジアの株式市場も、手掛かり難でレンジ内での取引となり、日経平均株価は小幅な円高推移のなか、上値の重い展開だった。

 

上海総合指数は、中国7月CPI(消費者物価指数)が市場予想を上回ったことを受け、反発する局面もあったが続かなかった。上海総合指数は、貿易摩擦への中国政府の比較的冷静な対応から、落ち着いているといえるだろう。

イーロン・マスクのTwitterは相場操縦の疑いあり?

今週、米国株式市場の注目を集めたのは、テスラのイーロン・マスクCEOのツイートに始まったテスラに関連するニュースだった。マスク氏は、レバレッジド・バイアウト (LBO=買収先の資産を担保として借り入れた資金による買収)により、テスラを非上場化する意向のようだが、仮に、これが実現するとなれば過去最大規模のLBOとなる。

 

これに関しては、早速、SEC証券取引委員会のチェックも入った模様である。同社の非公開化について、イーロン・マスクCEOがどれほど真剣かについて投資家の間で臆測を呼んでいることや、その公表の手法など、相場操縦の疑義を持たれても、いたしかたない面もある。しばらく、調査動向も含め、注意を払っておく必要があるだろう。

週明けに、ウォルマートなど小売大手の決算発表

米主要企業の大半が予想を上回る業績を発表し、決算シーズンは好調なうちに終わろうとしている。来週、週明けはウォルマートなど小売大手の決算発表が予定されている。Back to School商戦を控えて、米国小売業の動向も注目が集まる。

 

投資家は米中間の貿易摩擦悪化を憂慮しながらも、大きくみれば、堅調な経済状態や史上最高水準にある企業業績といった好材料を消化していく段階にあると考えている。

 

 

長谷川 建一

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO

 

 

本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

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