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賃貸住宅経営の成否を左右…「土地の将来性」をどう考えるか?

前回は、収益物件の黒字化計画において「賃貸管理会社」をどう選ぶかについて取り上げました。今回は、賃貸住宅経営において重要な「土地の将来性」の考え方について見ていきます。

20年先、30年先を見据えた立地選びが大切

最後に挙げる市場調査のポイントは、20年先、30年先といった長い目で見た立地選びです。

 

いくら将来性がないからといっても、先祖代々受け継いだ土地を捨ててそこを離れるわけにはいかないという地主さんもいるでしょうが、それでは資産価値は目減りする一方で、20年先、30年先には結局手放さざるを得なくなる可能性もあります。それでも、何とか多少の切り売りで乗り切れればいいのですが、賃貸住宅経営のために多額の借金をしていると、切り売りだけでは追いつかず、すべて手放すしかなくなるといった事態もあり得ないわけではありません。

 

そうならないために、現在の賃貸住宅のあるエリアの将来性を見極め、場合によっては将来性のあるエリアに思い切って買い替えることも勇気ある決断かもしれません。

 

そもそも先祖代々受け継いできた土地といっても、それはいつからなのでしょうか。先祖が初めてそこに住み着く前は別の場所にいたはずです。それが50年前なのか、100年前なのか、あるいは200年前なのかといった違いはあるとしても、いずれの時代かの先祖がそれまでの場所から移り住んできたことは間違いありません。

 

そう考えれば、資産の組み替えを行えば、今度はあなたがその初めて住み着いた先祖になるわけです。先祖代々の土地を手放した先祖というより、新たな場所で新たな歴史をつくり出した先祖ということになるはずです。

 

その資産の組み替えは、同じ都道府県内のあまり人気のないエリアから、活気のある大都市部への移転かもしれませんし、別の都道府県への移動かもしれません。また、極端な場合には、北海道から思い切って東京圏へといった組み替えがあってもいいのではないでしょうか。

 

最近は地価の下落に歯止めがかかり、ようやく全国平均では横ばいに近づいてきたといっても、大都市部は上昇し、地方圏では依然として低下している図式は変わりません。おそらく、この大都市部と地方、そして大都市部でも中心部と郊外部の二極化は今後ますます激しくなることはあっても、緩和されることはないでしょう。

世帯数の変化がエリアの将来性を考えるヒントに

わが国では間もなく世帯数の減少が始まります。

 

全国的には図表にあるように、2010年の世帯数5184万世帯が、2035年には4956万世帯に減少します。しかし、ブロック別に見ると事情はかなり異なります。東京圏では、2010年の1356万世帯が2035年には1587万世帯にむしろ増えるのです。実はその間2015年から2030年までは1600万世帯以上の高い水準を続け、2035年から減少が始まるのですが、それでも2010年に比べると世帯数は多くなるわけです。

 

世帯数が多くなるということは、それだけ賃貸住宅へのニーズの増加につながります。全国のなかでも、東京圏は賃貸住宅経営という点では最も有望な市場であるのは間違いありません。ですから、極端にいえば北海道や九州の土地や賃貸住宅などを売却して東京圏で買い替えるというのは、ブロックごとの将来性を考慮すれば現実的にあり得る判断でしょう。

 

特に、世帯数の減少が著しいのが四国。2010年の160万世帯が2035年には137万世帯に、15%近くも減るのです。北海道も2010年の242万世帯が、2035年には210万世帯に、13%ほどの減少です。

 

北海道でも札幌市の中心部など有望なエリアはありますが、思い切って東京圏にという判断もあるでしょう。地価には数倍、数十倍の差がありますから、買い替えで取得できる土地は狭くなり、賃貸住宅の戸数も減るでしょうが、買い替えから10年後、20年後の賃料収入、資産価値を考えるとあながち間違いではなかったということになるのではないでしょうか。

 

ただ、その際にはブロックごとの賃貸住宅へのニーズの違いに十分配慮しておく必要があります。

 

図表には、世帯数のほか家族類型別の世帯割合もまとめておきました。このデータでは、家族類型が「単独世帯」「夫婦のみ」「夫婦と子」「一人親と子」「その他」の5パターンに分類されています。「その他」というのは、夫婦・親子以外に祖父母などがいるパターンで、いわゆる昔ながらの大家族になります。この「その他」は2010年段階では東北が20.7%、北関東が16.0%、中部が15.7%などと10%以上のブロックが多くなっています。ただ、東京圏や近畿ブロックで7.3%、8.7%とたいへん低い水準です。

 

そして2035年には東京圏では4.8%に、近畿ブロックでは5.4%とさらに低下します。代わって「単独世帯」が東京圏では40.2%など、極めて高い水準になります。「単独世帯」と「夫婦のみ」で6割を超え、家族数2人以下の世帯が過半数を上回るわけです。反対に家族数3人以上のファミリー世帯は少数派に陥ります。

 

これはブロック間の移動だけではなく、ブロック内の移動においても考慮しておくべき点です。第五のポイントである立地選びでは、それまでの場所への呪縛から自らを解放し、新たに有望な場所を見つけ、その場所にふさわしい賃貸住宅を考えることが重要になってきます(下記図表参照・地域ブロック別一般世帯の家族類型別世帯割合の推移)。

 

出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)」2014年4月推計
出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)」2014年4月推計

 

不動産の市況の動きやエリアの動向などは、ある程度は情報収集して予測することができますが、実際に未来がどうなるかは、誰にも分かりません。ですから、経営者であるならば、いまと向き合い新たな価値を絶えず創造していくことが欠かせないと思います。モノがあふれ、与えられる環境にある現在、住まいも与えられるものから選ぶことが多く「こんな生活がしてみたい」と考える人は多くありません。

 

ですから、提案型のライフスタイルを実現できるような、普通とは違う間取り・設計・デザインの物件を建ててみる。それは一部の人にしか受け入れられないものかもしれませんが、価値を共有してもらえる人にとっては、とびきり魅力的な物件になるでしょう。身も蓋もない言い方になってしまいますが、結局はやってみなければ分からないのです。

 

ただし、やらなければ結果が出ないことは間違いありません。それは私が賃貸経営を経験してきて感じていることです。

 

 

 

川口 豊人

株式会社コンシェル川口 代表取締役

1979年千葉県生まれ。専門学校卒業後、税理士事務所に入所。25歳のときに祖父から郊外の赤字アパートの管理を引き継ぎ、黒字化に成功。
通常の税理士事務所では相続税額の計算や節税についてのアドバイスはできても、不動産の管理運営業務や不動産投資に近いアドバイス、相続税を軽減していく作業ができていない現状を鑑み、株式会社コンシェル川口を立ち上げる。地権者などを中心に不動産の管理運営面と税務面をワンストップで解決するサービスを提供している。
2015年4月からは、事業構想大学院大学にて、価値の創造をテーマに研究中。

著者紹介

連載マンション経営の黒字化計画・・・赤字の原因を突き止める「市場調査」のススメ

 

マンションオーナーの赤字脱却術

マンションオーナーの赤字脱却術

川口 豊人

幻冬舎メディアコンサルティング

相続対策や資産運用目的でアパートやマンションを購入する人が増えましたが、不動産取得後の運用に苦しむオーナーは少なくありません。 賃貸物件は供給過多であり、借り手は減り続けています。実際に東京都内でも空室率は12%…

 

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