ハワイ不動産には「解約手付」の制度がない
ハワイの不動産売買契約書は、不動産協会が作成したひな型を利用するのが一般的で、「Purchase Contract」とか「DROA」と呼んだりします。
全部で14ページあり、追加条項を加えると20ページ前後になることもあります。双方が合意した購入価格、支払い方法(キャッシュかローンを使うか)、支払い時期、登記日、家具や備品の扱い、その他物件点検期間や書類の検討期間などを記載します。
重要なのは、契約解除についての条項です。日本とは異なるので、よく理解しておきましょう。
先ほども述べましたが、ハワイでの不動産購入では、デポジットは非常にわずかです。日本では物件価格の1割程度で数百万円になることもありますが、ハワイでは50万ドルほどの中古コンドミニアムでも2000〜5000ドルです。
しかし、ハワイでは日本のような「解約手付」がありません。
日本では法律上、相手側が契約の履行に着手する前なら、買主は手付金を放棄、売主は手付金の倍額を払えば、契約を白紙解除できることになっています。
ハワイにはこうした制度はなく、契約がいったん成立すれば、自分の都合で勝手に解約することはできません。どうしても解約するとなれば、違約金などが発生します。
事前に「解約できるタイミング」を把握しておく
ただし、ハワイの不動産購入では、前述のように、登記までの間に契約解除できる機会がいくつも設けられています。それぞれ契約などで期限が設定され、その期日内にキャンセルの意思表示をすればキャンセルできます。
1.ホームインスペクション(建物検査)の結果が分かった時点
まず、建物検査(インスペクション)の結果が分かった時点での解約です。
購入前にオープンハウスを見たりしますが、見学時間はほんの30分ほどということも多く、実際の物件の状態は不明です。
そこで、契約書に建物検査をして承認すれば購入するという項目があり、もし調査結
果に納得しなければ解約できます。
建物検査は通常、専門家に依頼します。自分でしてもいいのですが、専門的な知識と経験がないとしっかりしたチェックは難しいでしょう。一戸建ての場合、境界を確かめ、屋根に上り、床下に入り、すべてのスイッチを確認したりするので、半日くらいかかったりします。
建物検査の費用は、コンドミニアムの場合は300ドルから、一戸建ては小さい家なら450ドルから、標準的な大きさだと500ドルからが目安で、それほど高いわけではありません。
最近は、建物検査について「現状有姿(AS IS)(アズ イズ)」条項を入れるケースがよくあります。不具合が見つかっても売主は補修費用を負担せず、現状のまま買主に引き渡すというものです。補修する場合は買主がその費用を負担しなければなりません。それが不満であれば、キャンセルはできます。
2.売主からの事実内容開示書を受け取った時点
次は、売主の情報開示があった時点での解約です。
ハワイ州の法律では、売買契約がまとまってから10日以内に売主は買主に「事実内容開示書」を提出しなければなりません。これは4ページにわたり、物件の瑕疵、修理が必要な箇所、過去に起こった事件、周辺の状況など、売主として知っていることをすべて記入しなければなりません。
いろいろ参考になることもありますが、逆に売主が物件に住んだことがない場合などは、物件の詳細を知らないのでほとんど役に立たないこともあります。
3.物件のドキュメント(関係資料)を受け取った時点
次に、物件の関係資料を受け取った時点での解約です。
契約書には購入した物件の関係資料一式を売主から受け取り、それを検討して承認すれば購入するという項目があります。
コンドミニアムの場合、建築図書、管理組合の運営規定や年次総会の議事録、理事会の議事録、共益費の報告書などがあります。管理費の滞納に関する訴訟、土地が借地の場合は借地料の交渉、建物の欠陥を巡る開発業者との訴訟などが明らかになるケースもあり、購入をやめるかどうか検討すればいいのです。