日本の司法書士と信託会社を合わせたような業務を行う
売買契約が成立したら、代金の受け渡しと登記の手続きに入ります。アメリカではこれらの手続きを一括して、エスクロー会社に依頼します。
エスクロー会社とは、売主と買主が合意した売買契約にしたがって、代金の受け渡しと登記を第三者の立場で代行する会社です。日本でいうと、司法書士と信託会社を合わせたような業務を行います。
法律に基づく公的な制度ではなく、あくまで民間のサービスですが、アメリカではごく一般的に利用されている非常に信頼度の高いシステムです。
エスクロー会社は、売買契約書を預かって業務をスタートし、売主の権利証を調査したり、新しい権利証の作成を弁護士に依頼したりします。
登記のための書類には、イニシャルや署名だけで済むものもありますが、権利証や住宅ローンに関する書類などは公証人の前での署名が必要になります。公証人はノータリーパブリックといって、公証ライセンスを持っている人です。日本に居住している人の場合、在日アメリカ大使館や領事館で署名するか、または近くの公証役場で署名する必要があります。
最終的な支払い金額はエスクロー会社から送付される
買主として最終的に支払いが必要な金額は、エスクロー会社から「見積もり計算書」が送られてきます。
こうして、登記予定日の3日前までに登記書類と代金の残りなどがすべてエスクロー会社の手元に集められます。
エスクロー会社は登記の直前にもう一度、権限の最終確認をします。これを「ファイナル・ウォーク」といいます。
登記が完了すると、売主には売買代金が渡され、買主には物件の鍵と最終計算書(Final Closing Statement)が渡されます。
登記までの期間は、現金で購入する場合は売買契約が成立した日から1カ月から1カ月半ほどです。銀行ローンを利用する場合は、融資手続きに時間がかかるので、2カ月半から3カ月ほどかかります。
また、登記完了の印を押した権利書がエスクロー会社から送られてくるのは登記から数カ月後になりますが、鍵と最終計算書があれば問題ありません。
[図表]エスクロー制度の概要
「権利証保険」で不測のリスクをヘッジ
ハワイでは登記時に権利証保険に加入します。登記と同時に保険料を支払うと、物件を所有している間はずっと有効で、登記手続きの過程でのミスや、何らかの原因で権利に関する訴訟が起こった時にカバーされます。
エスクロー会社はほとんどミスなく手続きをしてくれますが、時には以前の所有者のローンの抵当権が抹消されていなかったというようなこともあります。加入は任意ですが、エスクロー会社は見積もりの中にこの権利証保険の保険料を必ず入れてきています。入らなくてもいいと思う時は、加入しない旨を伝えます。
ハワイでの不動産取引では、権利証そのものよりもこの権利証保険証書と最終計算書のほうが大切です。