前回は、ハワイ不動産の契約解除のルールについて取り上げました。今回は、売買契約書に記載するさらに詳細な条項の例を見ていきます。

シロアリの検査結果、ローン条項・・・

前回の続きです。

 

4.シロアリ検査の結果が分かった時点

一戸建ての場合は、シロアリ検査の結果が分かった時点で解約できます。

 

ハワイは一年中温暖でシロアリが生息しやすい環境です。そこで、売主が売主の費用でシロアリ検査の会社にシロアリ検査を依頼し、その会社から「ターマイト・クリアランス」というシロアリがいない証明書をもらって買主に提出します。もし、シロアリがいる場合はそれを退治することになります。

 

コンドミニアムではさほど気にする必要はありませんが、古い物件にはキャビネットドアなどにシロアリがいることがあります。

 

なお、この条項の対象はあくまで現状、シロアリがいるかどうかであり、過去のシロアリの被害を修理することは別です。ただし、シロアリの被害が建物の存在をゆるがすほど重大な欠陥であることが分かった場合、売主は買主に知らせる義務があり、買主はそれを了承できない場合はキャンセルできます。

 

5.ローンを組めなかった場合(ローンを利用する予定で契約した場合)

もうひとつはローン条項です。契約書では「売買契約を結んだらX日後までに銀行にローンの申込書を提出し、X日以内に銀行から仮の借り入れ証明をもらいます。そして、X月X日までに借り入れ証明をもらいます」という項目を入れます。日数等は全て、オファーを入れる時に任意で決めます。もし、借り入れ証明を得ることができなかったら、解約できるとするのです。

 

これは日本での不動産購入でも同じです。

あらゆる可能性を書き出し、対処を取り決めるアメリカ

以上の他にも、アメリカでは売買契約書にありとあらゆる可能性を書き出して、その場合どうするかを取り決めておきます。通常、売主には責任がなく、買主は自分で調査をして納得してから購入するというスタンスです。 

 

例えば、1996年にできた法律で、1978年以前に建てられた建物を売買する際、売主は鉛含有のペンキについての情報を買主に知らせなければなりません。また、売主は買主に鉛含有のペンキについての規定のパンフレットのコピーを渡し、10日間の調査期間を与えなければなりません。その間に買主は購入しようとする物件の鉛含有のペンキについて調査する権利があります。調査した結果、気に入らなければキャンセルできます。

 

ただ、鉛含有のペンキについての情報といっても、売主のほとんどは知識がなく、実際には「鉛含有のペンキについては何も知りません」「鉛含有のペンキについての情報は持っていません」という欄にサインすればよいことになっています。

 

ミーガン法(性犯罪者情報公開法)に関する条項もあります。ハワイでは1997年7月に施行された法律で、性犯罪者としての前歴がある人は過去と現在、住んでいるストリートの名前、郵便番号や仕事先を登録しなくてはなりません。この性犯罪者についての情報を得たい人は検事局や裁判所に行って調べることができること、この性犯罪者の登録は完ぺきなものではない場合もあることを、書面で買主に知らせることが義務付けられています。 

 

アスベストについては、不動産売買契約書の中に「アスベストについての危険を承知しています」という項目があります。ハワイでは1978年以前に建築された建物の天井にアスベストを使用しているケースがあります。多いのは「ポップコーンタイプ」と呼ばれる天井です。

 

一戸建ての場合、杭と測量の項目もあります。これは、登記前に売主が測量会社に依頼し、隣家との境界を確認するために敷地の四隅に杭を打ちます。その位置が正しいかどうか疑問な時は、買主として別の測量会社に依頼することもでき、もし違っていれば買主が依頼した測量会社の費用も売主負担になります。

 

ハワイでは、日本のように隣接地の所有者から印鑑をもらって境界を確定するということはあまりありませんでしたが、最近は測量技術が進歩し、境界を巡る問題が増えています。現在の精密な測量ではほぼ必ず誤差が発見されるので、1997年6月以降は商業地やアパートの敷地の場合は7.62cm、住宅地は15.2cmなど一定の誤差は容認するようになりました。

 

 また、売買物件が隣の敷地を越境している場合、「エンクローチメント・アグリーメント」といって、隣の所有者から書面で境界線侵入同意のサインをもらいます。

 

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冨吉 範明, タカ 河野

幻冬舎メディアコンサルティング

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