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中小企業の多角化戦略としての「M&A」活用をどう考えるか?

前回は、合弁方式のM&Aについて、中小企業が活用する際の留意点を解説しました。今回は、中小企業の多角化戦略としての「M&A」活用について見ていきます。

4つの多角化理論から中小企業のM&Aを分析すると・・・

「商売と屏風は広げすぎると倒れる」とは、ビジネスの世界にいる方なら一度は聞いたことがあるかもしれません。多角化戦略は、重要な成長戦略のひとつですが、時にマイナスイメージで捉えられることがあります。多角化はゼロから立ち上げる新規事業が多く、失敗事例が多かったのも事実です。

 

とはいえ、周りの中小企業社長を見渡しても、多くの事業を同時並行的に展開している方が増えています。中小企業にとっては成長戦略というよりも、生き残るための戦略と捉えている方も多いのが事実です。

 

著名な経営学者であるアンゾフが、多角化理論を4つに分類しています。もう半世紀前の発表ですが完成度が高くロジカルです。「水平型」「垂直型」「集中型」「集成型」の4つに分類しており、その考え方を拝借しながら、中小企業M&Aバージョンとして分析していきたいと思います。

 

[図表]スモールM&Aにおける「4つの多角化理論」

出典:つながりバンク セミナー資料より
出典:つながりバンク セミナー資料より

 

①ヨコ型隣地拡大(水平型)

 

まずは勘所がある、同じ事業分野でのM&Aです。商品ラインナップの強化、規模の拡大などを狙う戦略です。蕎麦屋が天ぷら屋を、システム開発会社が技術者派遣業を展開するようなイメージです。比較的リスクが少ない分野ですが、1+1が2以上になるとは限らず、期待する投資リターンが得られないこともあります。

 

以前、筆者が取り扱ったケースを紹介します。アミューズメント施設に強い「内装業者」が、冠婚葬祭に強い同業者をグループに迎え入れました。同業者ではありますが、提供できるデザインや設計の幅が広がっただけでなく、異なる層の顧客、技術者を獲得することができました。横展開でサービスと規模を拡大できた良い事例です。

 

②タテ型隣地拡大(垂直型) 

 

グループ内で製造(川上)から販売(川下)までをカバーしようとする戦略です。中間コストが下がる可能性はありますが、固定費、初期投資がかさみがちで、財務体力が弱い中小企業では慎重に進めるべき戦略です。また、革新的なサービスなどが出てきた場合に、ドライに切り替えることが難しいといった課題もあります。

 

地方の印刷会社の事例を紹介します。業界的に厳しい業界ではありますが、垂直型の多角化をM&Aで実現している優良企業があります。まずは、チラシなどの印刷物を大量に必要とする不動産系の広告代理店(川下)や、デザイン企画会社(川上)などを傘下に入れ、拡大基調にあります。また、この事例は同業の印刷会社M&Aからスタートした「水平型」でしたので「垂直型」へ展開し、堅実かつ積極的にM&Aを活用しているのが伺えます。

成功事例が多く見られる「飛び地・非連続型」だが・・・

③強み活用型(集約的多角化)

 

「集約的」と言われてもピンと来ないかもしれません。「同心円的多角化」とも訳されているようですが更に分かりにくいです。簡単に言えば、今持っている「コアな強み」、例えば「技術力・インフラ・販売力」などが活かせる分野に進出することです。電鉄会社が、建設・不動産・小売事業に乗り出すことや、発酵メーカーが、酵母を活用した化粧品開発に乗り出すようなイメージです。いわゆるシナジーが効きやすい分野で、M&Aにおいても関係者が納得しやすい事例が多いのが特徴です。大手企業向けですが、この戦略を推し進めると、バリューチェーン戦略やサプライチェーン・マネージメントという概念に近づいていきます。

 

現在、多くの買いニーズを頂いていますが、この分野は紹介する側としても、とてもイメージがしやすく安心感があります。まずは自社の強みを分析し、新規事業、多角化、M&A戦略を考えると、周辺でシナジー効果を狙える分野が見えてくるはずです。

 

④飛び地・非連続型(集成型多角化)

 

「集成型」という耳慣れない言葉で訳されていますが、既存ビジネスとは少し距離のある分野で多角化に挑戦することです。M&Aの世界では、飛び地型、非連続型とも言われます。当然ながら、リスクが高く失敗事例も数多くあり、多角化がマイナス面で語られる時はたいていこの分野です。一方、経営における市場リスク分散と成長性を実現できる可能性が高い分野です。

 

不思議なことに、中小企業のM&Aにおいては、意外と成功事例が多く見受けられます。記帳代行会社が健康食品事業を、IT会社が教育事業を、介護サービス会社が観光事業を、経営コンサルティング会社のプライベートジムを、銀行員がオフィス用具販売をM&Aするなど、多くの事例を思い出すことができます。成功事例が多いのは、すでに仕組みができている事業を譲受できたこと、小規模なので経営者自ら乗り出しリカバリーがしやすかったことが要因とみています。

 

◆多角化を実現するための選択肢

 

2年ほど前に、新規事業立上げのプロの方と筆者で、セミナーを同時開催するお話しを頂きました。すでにシリーズ化しており、4~5回ほど開催していますが、いつも多くの方に来場頂いています。新規事業を立ち上げる際の、ひとつの選択肢としてM&Aが活用されつつあるのを肌で感じます。

 

また、M&Aの本質が時間とノウハウを買うことであると定義すると、フランチャイズへの加盟という選択肢もあります。フランチャイズ本部は、少なくとも1,000以上あり、まだ世に知られていないような優れたモデルも多数存在します。自ら調べてみると、色々なヒントを得ることができるかもしれません。

 

前回の記事で「合弁会社」を取り上げましたが、他社のノウハウ、インフラを活用し多角化を実現するという意味で、提携先をみつけ合弁会社設立を提案するということも選択肢に入れておくと多角化の幅が広がると思います。

 

「商売は、屏風と違って広げ方次第!」と言われるような時代が来ることを期待しています。

株式会社つながりバンク 代表取締役社長 

オリックス株式会社1996年~2012年。16年在籍。 在職中に多くの新規Projectに参画し、東京都、銀行、カード会社などに出向。ベンチャー企業から上場企業まで投融資を実行。経営企画部時代(約8年在籍)に、出資先の株主間調整、合弁契約解消、事業撤退・売却、海外子会社統合、債権回収業務など前向きから後ろ向き案件の対応をこなす。2012年、株式会社つながりバンク設立。スモールM&A市場の普及・拡大をメイン事業とし現在に至る。自らも小規模の事業系投資を実践中。

著者紹介

連載新たな投資分野として注目集める「スモールM&A」の活用術

 

 

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