バイオマスの重要性が高まるドイツ、一方で日本は…
国際エネルギー機関(IEA)が毎年公表する国別統計は、各国のエネルギーバランスが統一された形で表示されているから、日独を比較するには好都合である。各国におけるバイオマスのエネルギー利用が各国のエネルギー経済で、どのような位置を占めているのか。
それを明らかにするために以下の図表1を準備した。ここに示された2種類の統計系列は、生物燃料・廃棄物が総一次エネルギー供給(TPES)および最終エネルギー消費(FEC)にどれほどの比率を占めるかを見たもので、この中には、木質系や農産系、廃棄物系などのすべてのバイオマスが含まれる。
[図表1]ドイツの固形バイオマスFIT報償額の推移
日独の差は一目瞭然だろう。特に注目されるのは、一次エネルギーで測ったTPES比がドイツで2000~2015年の間に2.3%から9.7%に伸びたことである。
本連載の第1回で見たとおり、木質燃料の消費量は大幅に増えている。しかし、TPES比がこれほど激増したのは、農産系残滓を使ったメタン発酵のような新顔のバイオマスが次々と登場したからである。
また、最終消費に占める比率、FEC比においても2.0%から6.5%になった。ドイツのエネルギー経済におけるバイオマスの重要性は明らかに高まっている。
日本の木質エネルギー利用の構造は、依然変化なし
ところが、日本では、長い間バイオエネルギーの主な供給源は建設廃材などによる発電と、紙パルプ工場での黒液・木屑のエネルギー化に限られていた。
そのため、TPES比はかなり以前から1%前後のままであった。それが2010年頃からバイオマス発電の増加を反映して上昇に転じ、2015年になってやっと2.7%にまで辿り着いたのである。
だが、FEC比で見ると、終始1%前後の水準にとどまっていて、明確な上昇傾向は見られない。その一因は、バイオマス発電の熱効率の低さにある。
一次エネルギーの計測は、発電した電気の量ではなく、使われた燃料が内包するエネルギー量でなされている。廃熱利用を伴わないバイオマス発電の熱効率は、せいぜい25~30%くらいだから、正味の発電量が問題になるFEC比ではランクがぐんと落ちてしまうのだ。
歩留まりがよいのは、やはり熱供給や熱電併給(コージェネレーション、CHP)であって、80~90%くらいの効率が期待できる。利用できる木質バイオマスの量が限られているのであれば、発電だけの大型プラントではなく、小型の熱供給や熱電併給プラントに向けたほうがエネルギー経済への寄与はずっと大きくなる。
以下の図表2は、IEAの再生可能エネルギーのバランス表から、木質中心の固形生物燃料・廃棄物だけを抜き出して日独を比較したものである。日本の場合は、廃熱利用のない発電プラントへの傾斜が著しく、最終消費においても紙パルプ工場などの産業が圧倒する。一昔前の構造は依然として変わっていない。
[図表2]固形生物燃料・廃棄物のエネルギーバランス 日本とドイツ、2015 年
単位:ペタジュール(PJ)
ところが、ドイツを見ると、変換プロセスでは発電プラントのウェートは小さく、CHPプラントと熱供給プラントが卓越する。また、最終消費では、住宅が61%を占め、商業・公共サービスも14%で、産業は25%に過ぎない。おそらく、これが木質バイオマスの特性を上手に活かした使い方であろう。
ただし、日本の木質エネルギー利用が発電と産業に偏った構造になっているのは、日本のエネルギー統計の不備にも起因している。
きちんと捕捉されているのは、比較的出力規模の大きいバイオマス発電所や、林産工場の大型熱供給プラントに限られているからだ。住宅や事務所に入っている小型のストーブやボイラは、ほぼ完全に抜け落ちている。
抜け落ちた部分のエネルギー量は比較的小さいにしても、偏った構造を一層強調しているのは間違いない。